〈スポンサーリンク〉
シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか その7回
「先生に任せます」の本当の意味を考えていますか?
「先生に任せます。」
リハビリの方針を説明したとき。
退院先を相談したとき。
装具や杖について話したとき。
患者さんから、こう言われることがあります。

この言葉を聞くと、
「信頼していただけているんだ。」
そう思うこともあるでしょう。
もちろん、それは間違いではありません。
でも、本当にそれだけでしょうか。
「任せます」は、一つの意味ではない
同じ「任せます」という言葉でも、その背景は人それぞれです。
ある人は、
「先生を信頼しています。」
という意味かもしれません。
でも、別の人は、
「自分ではもう判断できません。」
かもしれません。
あるいは、
「本当は違う希望があるけれど、言えません。」
ということもあります。
一つの言葉に、一つの意味とは限らないのです。

決められない患者さん
病気やけがをすると、
人は多くのものを失います。
自由に歩くこと。
好きな時間に食事をすること。
仕事。
役割。
そして、
「自分で決めること。」
入院生活では、
起きる時間も、
食事の時間も、
検査の日程も、
多くのことが決まっています。
そんな生活が続くと、
「自分で決める」という力まで小さくなってしまうことがあります。
だから、
「先生に任せます。」
という言葉が出てくるのです。
「どうしたいですか?」
以前、退院について話し合っていた患者さんがいました。
私が、
「ご自宅と施設では、どちらをご希望ですか?」
と聞くと、
「先生に任せます。」
という返事でした。
そこで、
少し質問を変えてみました。
「もし何でも自由に選べるとしたら、本当はどんな生活を送りたいですか?」
患者さんは少し黙ったあと、
「家に帰って、孫とご飯を食べたい。」
そう話してくださいました。
現実には課題がありました。
それでも、その願いを知ったことで、
私たちは「どうすれば近づけるか」を考えられるようになりました。
もし「任せます」という言葉だけで終わっていたら、
その願いに気づくことはなかったでしょう。

セラピストならどう関わるか
「先生に任せます。」
そう言われたとき、
私はすぐに結論を出さないようにしています。
まずは、
「そう言っていただいてありがとうございます。」
と受け止めます。
その上で、
「○○さんご自身は、どうなったら一番うれしいですか?」
「理想を一つだけ挙げるとしたら、何でしょう?」
そんな質問をしてみます。
患者さんは、答えに迷うかもしれません。
でも、その時間こそが大切です。
リハビリは、患者さんの人生を支えるものです。
だからこそ、私たちは患者さん自身の思いを置き去りにしてはいけないのだと思います。
おわりに
「先生に任せます。」
その言葉は、信頼かもしれません。
遠慮かもしれません。
諦めかもしれません。
あるいは、
「本当は自分の希望を聞いてほしい。」
という、小さなサインなのかもしれません。

私たちは、患者さんの代わりに人生を決めることはできません。
でも、その人が自分らしい選択をできるように支えることはできます。
患者さんの言葉は、ゴールではありません。
その人の人生を理解するための入り口です。
そして、その入り口の先には、その人だけの物語があります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
〈スポンサーリンク〉