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シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか その17回
「家ではできるんです」の本当の意味を考えていますか?
「病院ではできませんけど、家ではできるんです。」
リハビリをしていると、患者さんからよく聞く言葉です。
病院では立ち上がれない。
歩くのも不安そう。
それなのに、
「家では一人でできます。」
と話されることがあります。
この言葉を聞くと、
「本当にできるのでしょうか。」
「危険だから無理ではないですか。」
そんなふうに思ってしまうことはありませんか。
もちろん、安全性を確認することは大切です。
でも、一度立ち止まって考えてみてください。
患者さんは、本当にできることを大きく言っているのでしょうか。


「家ではできる」という言葉の中には、さまざまな理由がある
例えば、
「家の家具の位置が分かっている。」
「手すりの位置を身体が覚えている。」
「いつものベッドだから立ちやすい。」
「時間を気にせずゆっくり動ける。」
「誰にも見られていないから焦らない。」
「家にいると安心する。」
患者さんは、その理由を一つひとつ説明することはあまりありません。
それらをまとめて、
「家ではできるんです。」
という一言で表現していることがあります。



「できる」は、環境によって変わる
私たちは、つい能力だけを見てしまいがちです。
「立てる。」
「歩ける。」
「階段がで上れる。」

しかし、実際には、
人の能力は環境によって大きく変わります。
病院は、
ベッドの高さも違う。
トイレも違う。
床の感触も違う。
周囲には知らない人がいる。
「失敗したらどうしよう。」
そんな緊張の中で動いています。
一方、自宅には、
慣れた家具。
慣れた動線。
慣れた生活があります。
つまり、
同じ身体でも、安心できる環境では能力が発揮されやすいのです。

「家ではできる」は、生活を知るヒント
患者さんが、
「家ではできます。」
と言ったとき、
私は、
「できるんですね。」
だけで終わらせません。
「どんなふうに立っていますか?」
「何につかまっていますか?」
「どのくらい時間をかけていますか?」
「誰か見守っていますか?」
そんなふうに聞いてみます。

すると、
「テーブルにつかまっています。」
「ソファが近いので安心なんです。」
「壁を触りながら歩いています。」
「途中で何度も休みます。」
病院では見えなかった生活の工夫が見えてくることがあります。

セラピストならどう関わるか
「家ではできる。」
その言葉は、
能力を過大評価しているのではなく、
生活環境を教えてくれているのかもしれません。

だから私は、
「病院ではできないから。」
と否定するのではなく、
「家ではどうやってできているのか。」
を知ろうとします。
その工夫を病院でも再現できれば、
患者さんはもっと安心して動けるかもしれません。
逆に、
病院でできることを家でも続けられるように、
環境を整えることが必要な場合もあります。
リハビリは、
身体だけを見ていては十分ではありません。
その人が生活している環境まで含めて考えることが、本当のリハビリなのだと思います。

おわりに
「家ではできるんです。」
その言葉を、
「本当ですか?」
だけで終わらせない。
その人は、
どんな工夫をしているのでしょうか。
何に支えられているのでしょうか。
そして、
何があるから安心して動けるのでしょうか。
その背景を知ろうとすることが、
病院でのリハビリと、自宅での生活をつなぐ第一歩になります。
患者さんの言葉は、ゴールではありません。
その人を理解するための入り口なのだと思います。

病院でできることが、そのまま家でできるとは限りません。
でも、家でできることが、病院でできないこともあります。
理学療法士が見るべきなのは、「能力」だけではなく、「その能力が発揮できる環境」なのだと思います。
ありがとうございました。
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