痛みは温める?冷やす? 「急性期は冷やす、慢性期は温める」だけでは決められない

痛みは温める?冷やす?  「急性期は冷やす、慢性期は温める」だけでは決められない

〈スポンサーリンク〉




痛みは温める?冷やす?

「急性期は冷やす、慢性期は温める」だけでは決められない

痛みがあるとき、

温めた方がいいのか。それとも、冷やした方がいいのか。

患者さんから聞かれることの多い質問です。

私も理学療法士になるための勉強をしていた頃、こんなふうに習った記憶があります。

「急性期は冷やす」

「慢性期は温める」

外傷直後など炎症が強い時期に温めると、血流が増えて腫れや痛みが強くなる可能性がある。

だから急性期には冷却する。

一方、慢性的な痛みになったら温めて血流を良くする。

そして慢性期なら、

「本人が気持ちいいと感じる方でもいい」

そんなふうに理解していました。

これは今でも、まったく間違った考え方というわけではありません。

ただ、長く臨床をしているうちに、私は少し違和感を持つようになりました。

特に肩です。

肩の痛みがある患者さんを冷やすと、

「かえって動かしにくくなるのではないか」

「この肩は温めた方が楽なのではないか」

そう感じることが何度もありました。同僚に聞いて同じような感想を持っていました。

では、

肩は冷やさない方がいいのでしょうか。

改めて考えてみたいと思います。

そもそも、なぜ痛いところを冷やすのか

冷却、いわゆるアイシングは昔からスポーツやリハビリの現場で使われてきました。

冷やすと皮膚やその下の組織の温度が低下します。

それによって神経の伝導速度などにも変化が起こり、一時的に痛みを感じにくくする効果が期待できます。

つまり冷却には、

「痛みを少し楽にする」

という意味があります。

ここで、昔の説明を少し見直す必要があります。

以前は、

「冷やして炎症を止める」

という説明がよくされていました。

しかし現在では、炎症そのものを単純に「悪いもの」として、できるだけ抑えればよいとは考えません。

炎症反応は、傷ついた組織が修復していく過程の一部でもあります。

ですから、

「炎症がある=とにかく冷やす」

と単純には考えにくくなっています。

冷却はむしろ、疼痛や腫脹などをコントロールするための一つの手段として考えた方がよいでしょう。

 

では、温めると何が起こるのか

温熱では逆に、組織の温度が上昇します。

血流が増えたり、筋肉や軟部組織が動かしやすくなったりして、

「温めると楽になる」

「身体が動かしやすくなる」

と感じる人がいます。

慢性的な腰痛や肩周囲の痛みなどでは、この「気持ちよさ」も大切です。

痛みの治療というと、

痛みを0にする

ことだけを考えてしまいがちですが、リハビリではもう一つ重要な目的があります。

それは、

痛みを少し楽にして、そのあと身体を動かせるようにすること。

です。

温熱療法そのものですべてを治すというより、

温める
↓
少し楽になる
↓
身体を動かす
↓
必要な運動や生活動作につなげる

という使い方です。

「急性期は冷やす、慢性期は温める」は間違いなのか

これも、完全な間違いではありません。

例えば外傷直後で、腫脹や熱感、強い疼痛がある。

そんなときに長時間温めれば、かえって症状が強くなることがあります。

一方、何か月も続いている慢性痛で、冷やすと身体がこわばり、温めると動きやすくなる人に、わざわざ冷却を続ける必要性は低いでしょう。

ただし、

急性期=冷却
慢性期=温熱

という公式だけで決めるのも少し違います。

大切なのは、

「今、その人に何が起きているのか」

です。

 

私が「肩を冷やす」ことに感じていた違和感

私は臨床で、肩については特に、

「冷やすとかえって良くないのではないか」

と感じることがありました。

もちろん、これはすべての肩痛に当てはまるわけではありません。

肩でも外傷直後や手術後など、疼痛管理として冷却が使われる場面はあります。

ですから、

「肩は絶対に冷やしてはいけない」

ということではありません。

それでも、慢性的な肩痛や肩関節の拘縮がある患者さんでは、冷やすより温めた方が動きやすそうに見えることがあります。

なぜなのでしょう。

 

肩では「痛いから動かさない」が問題になることがある

肩関節は非常に大きな可動域を持っています。

しかし痛みが出ると、人は自然に肩を動かさなくなります。

痛い。

↓

動かさない。

↓

肩周囲の筋活動や運動量が減る。

↓

さらに動かしにくくなる。

↓

動かすと痛い。

↓

もっと動かさなくなる。

このような悪循環が生じることがあります。

特に、いわゆる凍結肩(肩関節周囲炎)では、疼痛だけでなく肩関節の可動域制限が大きな問題になります。

そんな肩を冷やした結果、

「痛みは少し楽だけれど、肩が固まった感じがする」

となれば、その人にとって冷却が最適とは限りません。

逆に温めたことで、

「少し楽になった」
「肩を動かしやすい」

となるのであれば、そのあとに行う運動療法につなげやすくなります。

 

温めれば肩関節周囲炎が治るわけではない

ここも誤解したくないところです。

「肩は温めれば治る」

ということではありません。

温熱療法だけで肩の問題を解決しようとするのは難しいでしょう。

温熱はあくまで、動くための準備として利用する。

温めたことで痛みが少し楽になった。

筋肉の緊張感が減った。

動かしやすくなった。

その状態を利用して、適切な運動や日常生活につなげていく。

私はこのように考えた方が、リハビリらしいと思います。

冷却も同じ。「冷やすこと」が治療目的ではない

これは冷却についても同じです。

例えば運動した後に肩の痛みが強くなった。

少し冷やすと楽になる。

その結果、過度に痛みを恐れず次の活動につなげられる。

それなら冷却にも意味があります。

つまり、

温めることも、冷やすことも、それ自体が最終目的ではありません。

「何のために行うのか」が大切なのです。

 

「気持ちいい方でいい」は、意外と大切なのかもしれない

学生の頃、

「慢性期なら、本人が気持ちいい方でもいい」

と聞いた記憶があります。

若い頃の私は、

「そんな曖昧な決め方でいいのかな」

と思っていたかもしれません。

でも長く臨床を経験すると、この考え方も案外大切なのではないかと思います。

もちろん、明らかな外傷や炎症、循環障害や感覚障害などがある場合は別です。

安全性を確認する必要があります。

しかし慢性的な痛みで大きな問題がなければ、

温めると楽なのか。
冷やすと楽なのか。
そのあと動きやすくなるのはどちらなのか。

患者さん自身の反応も、立派な評価情報です。

「温熱と冷却、どちらが医学的に正解か」

だけではなく、

「この人に使った結果、何が変わったのか」

を見るということです。

 

「効いた」とは、何が変わったことなのだろう

例えば肩を10分間温めたとします。

患者さんが、

「気持ちよかったです」

と言った。

それだけでも、一つの効果ではあります。

でも理学療法士なら、その先も見たいところです。

温める前より肩が動かしやすくなったのか。

痛みはどう変わったのか。

服を着やすくなったのか。

髪を洗いやすくなったのか。

その変化はどのくらい続いたのか。

そして、

温めなくても少しずつ動けるようになっていくのか。

そこまで見ていく必要があります。

冷却についても同じです。

「冷やしたら痛みが減った」

だけではなく、

その結果、その人の動きや生活がどう変わったのか。

そこを見ることが大切です。

「温める?冷やす?」から、「何を変えたい?」へ

学生の頃は、

急性期には冷却。
慢性期には温熱。

そんなふうに覚えていました。

それは臨床に入るための基本として、決して無意味な知識ではなかったと思います。

でも実際の患者さんは、教科書のようには分けられません。

同じ肩痛でも、

温めた方が楽な人もいる。

冷やした方が楽な人もいる。

そして何もしない方がいい場合もあります。

だから現在の私は、

「温めるべきか、冷やすべきか」

だけではなく、

「なぜ、それをするのか」

を考えることが大切なのだと思います。

痛みを減らしたいのか。

腫れをコントロールしたいのか。

動きやすくしたいのか。

運動療法につなげたいのか。

そして実際に行ったあと、

その人の痛みと動きはどう変わったのか。

特に肩について私が長年感じていた、

「本当に冷やした方がいいのだろうか?」

という違和感。

それは、「肩は冷やしてはいけない」という答えにつながるものではありませんでした。

むしろ、

治療法を先に決めるのではなく、患者さんの反応を見て治療法を選ぶ。

そんな当たり前だけれど大切なことにつながっているように思います。

「温めるか、冷やすか」ではなく、「この人の何を変えたいのか」。

物理療法を使うときにも、その視点を忘れないようにしたいと思います。

 

 

長文を読んでいただき、ありがとございました。

ポチっとお願いします↓

 

〈スポンサーリンク〉