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シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか その5回
「迷惑をかけたくない」の本当の意味を考えていますか?
「家族に迷惑をかけたくないんです。」
入院中の患者さんから、この言葉を聞くことがあります。
この言葉を聞くと、私たちはつい、
「そんなこと気にしなくても大丈夫ですよ。」
「ご家族は支えるつもりでいますよ。」
と励ましたくなります。
もちろん、その言葉に嘘はありません。
でも、それだけで患者さんの思いは軽くなるのでしょうか。
「迷惑」とは何を意味しているのか
患者さんが言う「迷惑」は、人によって意味が違います。
ある人にとっては、
「介護で家族の時間を奪ってしまうこと。」
ある人にとっては、
「医療費をかけてしまうこと。」
またある人にとっては、
「娘が仕事を辞めること。」
「妻に自分の下の世話をさせること。」
「孫に心配をかけること。」
つまり、「迷惑をかけたくない」という言葉の背景には、その人が大切にしている人への思いや、自分が築いてきた人生観が隠れています。

本当に望んでいるのは「迷惑をかけないこと」なのか
以前、一人の患者さんがこう話されました。
「もう施設でもいいですよ。家族に迷惑をかけたくないから。」
話はそれで終わるはずでした。
でも、少し時間をかけて話を聞くと、患者さんは静かにこう続けました。
「本当は家に帰りたいんだけどね。」
その一言を聞いたとき、私は気づきました。
患者さんは施設を希望していたのではありません。
「家に帰りたい」という願いよりも、「家族に負担をかけたくない」という思いを優先していたのです。
もし最初の言葉だけを信じていたら、
患者さんの本当の願いに気づくことはできなかったでしょう。

「迷惑をかけたくない」の裏には愛情がある
この言葉を口にする患者さんほど、
家族を大切に思っていることがあります。
「迷惑をかけたくない。」
それは、
「家族が好きだから。」
「これ以上苦労をかけたくないから。」
という愛情の表現なのかもしれません。
だからこそ、
「気にしなくていいですよ。」
という言葉だけでは、その思いは受け止めきれません。
セラピストならどう関わるか
「迷惑をかけたくない。」
そう言われたら、
私はすぐに励ますのではなく、
まず、
「そう思われるのには、何か理由があるんですね。」
と、その気持ちを受け止めるようにしています。
そして、
「どんなことが一番気になっていますか?」
「ご家族のことを考えておられるんですね。」
と少しずつ話を広げていきます。
すると、
患者さん自身も気づいていなかった本音が見えてくることがあります。
また、このような場面では、家族の思いを確認することも大切です。
患者さんは「迷惑をかけている」と思っていても、
家族は「一緒に暮らしたい」と願っていることも少なくありません。
両者の思いをつなぐことも、私たち医療者の大切な役割だと思います。

おわりに
患者さんは、自分の願いをそのまま口にできないことがあります。
その代わりに、
「迷惑をかけたくない。」
という言葉で、自分の気持ちを包み込んでいることがあります。
だからこそ、私たちはその言葉だけを聞くのではなく、
その奥にある思いにも耳を傾けたい。
患者さんの言葉は、その人の人生の一部です。
その言葉の背景を知ろうとすることが、その人らしい人生を支える第一歩になるのだと思います。

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