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作業療法(OT)の仕事
病院でリハビリを受けたことがある方なら、「PT」「OT」「ST」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
その中のOT(Occupational Therapist:作業療法士)は、どんな仕事をしているのでしょうか。
「手のリハビリをする人?」
「工作や手芸をする人?」
そんなイメージを持っている方もいると思います。
もちろん、それも作業療法の一部です。
でも、作業療法士が見ているものは、もっと広いものです。
着替える。食べる。トイレに行く。料理をする。買い物をする。趣味を楽しむ。
そして、
「その人が、これからどんな生活を送りたいのか」
というところまで考えていくのが、作業療法士という仕事です。
作業療法士(OT)とは?
作業療法士は、病気やけが、障害などによって生活に困難を抱えた人に対して、さまざまな「作業」を通して、その人らしい生活を取り戻すことを支援するリハビリテーション専門職です。
ここでいう「作業」は、工作だけを意味するものではありません。
食事、着替え、家事、仕事、勉強、趣味、地域活動など、人が生活の中で行うさまざまな活動が含まれます。
そのためOTは、
「腕がどのくらい動くか」
だけを見るのではありません。
その腕を使って、その人は何をしたいのか。
そこまで考えます。
手や指の機能を回復させる
OTの代表的な仕事の一つが、上肢や手指に対するリハビリです。(この印象が強いですよね)
脳卒中などによって手が動かしにくくなった患者さんに対して、物をつまむ、握る、離すといった練習を行います。
ペグを穴に差したり、小さな物をつまんだりする練習もあります。
ただし、
「ペグができるようになること」そのものが最終目標ではありません。
ボタンを留めたい。
箸を使いたい。
財布からお金を取り出したい。
また料理をしたい。
そうした生活につなげるために、手や指の機能を評価し、練習していきます。

「食べる」を練習する
食事も重要な生活動作です。
OTは、患者さんがスプーンや箸をどのように持っているのか、腕をどこまで動かせるのか、姿勢は安定しているのかなどを観察します。
普通のスプーンでは使いにくければ、柄を太くするなど、自助具を利用することもあります。
ここで大切なのは、
身体を道具に合わせるだけではなく、道具の方を人に合わせる
という考え方です。

着替えることも立派なリハビリ
朝起きて服を着る。
元気なときには何気なく行っていますが、片方の腕が動きにくくなるだけでも、更衣はかなり難しくなります。
OTは患者さんの身体機能を評価しながら、
「どちらの腕から袖を通すか」
「どんな姿勢なら安全か」
「どこまで自分でできるか」
などを考えます。
全部やってあげるのではありません。
必要なところだけ手伝い、自分でできる部分を増やしていく。
これもOTの大切な技術です。

トイレ動作は退院後の生活を大きく左右する
トイレ動作は、人間の尊厳に関わる重要な事柄です。
簡単に思える動作ですが、実はたくさんの能力が必要です。
トイレまで移動する。
便座の前で方向を変える。
ズボンを下ろす。
便座に座る。
立ち上がる。
ズボンを上げる。
手を洗う。
一つひとつは小さな動作でも、それらが組み合わさって「トイレに行く」という一つの生活行為になります。
そしてトイレを自分でできるかどうかは、本人だけでなく、介護する家族の生活にも大きく影響します。
だからこそOTは、病院の中だけではなく、退院後に実際に使うトイレまで想像しながら練習します。

身体だけを見ているわけではありません
OTが関わるのは身体機能だけではありません。
脳卒中や脳外傷などのあとには、
- 注意が続きにくい
- 覚えておくことが難しい
- 手順が分からなくなる
- 計画を立てて行動することが難しい
といった高次脳機能障害が現れることがあります。
そこでカードの分類や順序づけなどの課題を使い、注意・記憶・遂行機能などを評価・練習することがあります。
ただ、ここでも机の上の課題が最終目的ではありません。
たとえば料理なら、
「何を作るか考える」
「必要な材料を準備する」
「適切な順番で調理する」
という複数の認知機能が必要です。
机上でできたことを、どう生活へつなげていくのか。
そこがOTの腕の見せどころでもあります。(これは本当に大切!これができていないOTが過ぎます!!)

洗濯物をたたむのもリハビリ?
病院のリハビリ室で患者さんが洗濯物をたたんでいたら、
「これがリハビリなの?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、その人が退院後に家事を再開したいのであれば、洗濯物をたたむことは立派なリハビリになります。
調理、食器の片付け、掃除なども同じです。
腕の動き、立位バランス、注意力、手順、疲労など、実際の生活動作だからこそ分かることがあります。

「できないなら道具を使う」という選択肢
リハビリというと、
「できないことを練習して、できるようにする」
というイメージが強いかもしれません。
でも、それだけではありません。
太い柄のスプーン。
ボタンエイド。
リーチャー。
こうした自助具を使えば、身体機能が完全に元へ戻らなくても、自分でできることがあります。
何度練習してもうまくいかないことを延々と練習するより、道具や環境を少し変えた方が、その人の生活がずっと楽になることもあります。
「身体を変える」だけではなく、「方法や環境を変える」。
これも作業療法の大切な考え方です。
患者さんは自助具を使うことに抵抗感を持っている事も多いですが、早めに見極めて導入することは大切です。

趣味だって大切な「作業」
絵を描く。
園芸をする。
手芸をする。
将棋を指す。
こうした活動が作業療法に使われることもあります。
ただし、OTは単に患者さんと一緒に遊んでいるわけではありません。(遊んでいる人もいますが笑)
その活動には、
手を動かすこと、
姿勢を保つこと、
考えること、
集中すること、
人と関わることなど、
さまざまな要素があります。
そして何より、
「自分が好きだったことを、もう一度やってみたい」
という気持ちは、リハビリを続ける大きな力になることがあります。(これも大切!!)

病院から「本当の生活」へ
リハビリ室の中で歩ける。
服を着られる。
財布からお金を出せる。
それだけでは、まだ十分とは限りません。
実際の生活には、もっと複雑な状況があります。
商品を探し、値段を確認し、必要なものを選び、財布からお金を出し、荷物を持って帰る。
OTは、こうした実際の生活を想定した練習も行います。
「病院でできる」を「生活の中でできる」へ。
作業療法の非常に大切な役割です。

OTもチーム医療の一員
患者さんの生活を一人の専門職だけで支えることはできません。
医師、看護師、PT、OT、ST、医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな職種が情報を共有します。
PTから、
「杖を使えば病棟内を歩けます」
という情報が出る。
OTからは、
「移動はできますが、着替えではまだ介助が必要です」
「調理では手順を忘れてしまうことがあります」
といった情報が出る。
同じ患者さんを見ていても、専門職によって見ている角度が少し違います。
その情報を持ち寄ることで、ようやく患者さんの生活全体が見えてきます。

PTとOTは何が違うの?
これは非常によく聞かれる質問です。
大まかに説明するなら、PTは立つ・歩く・移動するといった基本動作や身体機能を得意とし、OTは食事・更衣・家事などの生活行為や作業活動を得意としています。
ただし、実際の臨床ではきれいに線引きできるものではありません。
OTが歩行を見ることもありますし、PTが上肢や生活動作に関わることもあります。
大切なのは「これはPTの仕事」「これはOTの仕事」と縄張りを作ることではなく、
それぞれの専門性を生かして患者さんの生活を支えること
だと思います。

作業療法士にも難しさがあります
OTの仕事は、成果が数字だけでは見えにくいことがあります。
筋力が何kg増えた。
歩行距離が何m伸びた。
そうした変化と比べ、
「一人でシャツを着られた」
「久しぶりに料理ができた」
「自分で買い物へ行けた」
という成果は、評価表の数字だけでは表しきれません。
また、身体機能が改善しても、患者さんが望んでいる生活につながらなければ、
「訓練ではできるけれど、家ではできない」
ということも起こります。
逆に身体機能そのものはあまり変わらなくても、自助具や環境調整によって生活が大きく変わることもあります。
だからOTには、身体機能だけでなく、
「この人はどこで、誰と、どんな生活をするのだろう」
と想像する力が求められます。
これが面白さであると同時に、難しさでもあるのでしょう。
そして一番大切なのは「何がしたいですか?」です。
ただし「したいこと」と「できること」に大きな乖離があるときは悩みます。本当に。
一緒に悩むことができるのもOTだからこそだと思います。(そうであってほしい!!)

リハビリでは、ときどき専門職側が目標を決めすぎてしまうことがあります。
「筋力をつけましょう」
「手をもっと動かしましょう」
「一人で着替えられるようになりましょう」
もちろん、どれも大切です。
でも患者さんにとって、本当に大切なのは別のことかもしれません。
「また家族に料理を作りたい」
「自分で好きな服を着たい」
「スーパーまで買い物に行きたい」
「もう一度、趣味を楽しみたい」
だからOTは、その人の話を聞きます。
何ができないのか、だけではなく。
何ができるようになりたいのか。
さらに言えば、
その人は、これからどんな生活をしたいのか。
そこから作業療法が始まります。
作業療法士に向いている人とは?
作業療法士と聞くと、「手先が器用じゃないとダメなの?」「絵や工作が得意じゃないと向いていないの?」といったイメージを持つ人も少なくありません。
確かにものづくりや絵を描くことをリハビリの手段に使うことはありますが、それ自体が適性の本質ではありません。
作業療法士の役割は、病気や障害を抱える人が「その人らしい生活」を取り戻せるように支援することです。
そのために必要なのは技術よりも、相手の生活に寄り添う姿勢や柔軟な発想です。
まず大切なのは、患者さんの暮らしや背景に関心を持てることです。
どんな生活を望んでいるのかを丁寧に聞き取り、その人に合ったゴールを一緒に考えます。
そして、できなくなったことを補ったり、新しいやり方を工夫したりするための柔軟な発想力も欠かせません。
さらに、作業療法士には観察力と分析力が求められます。
動作のちょっとした癖や心理的な要因まで見抜き、「なぜできないのか」を理解することで、適切な支援につなげていきます。
リハビリは時間がかかるものですから、根気強く伴走し続ける姿勢も重要です。
そして、忘れてはならないのがコミュニケーション力です。
対象は子どもから高齢者まで幅広く、患者さん本人だけでなく家族や他職種とのやりとりも日常的にあります。相手に合わせて分かりやすく伝えたり、信頼関係を築いたりできる力が、現場で大きな強みになります。
つまり、作業療法士に向いているのは、単に「ものづくりが好きな人」ではなく、人の生活を支えるために、その人に合った作業や活動を工夫できる人です。
おわりに
作業療法士という仕事を一言で説明するのは、実は簡単ではありません。
手のリハビリもする。
着替えも練習する。
料理もする。
認知機能も見る。
自助具も考える。
趣味にも関わる。
一見すると、バラバラな仕事に見えます。
でも、すべてには一本の線が通っています。
それは、
「その人が、その人らしい生活を送るために必要なことを考える」
ということです。
手を動かせるようになることがゴールなのではありません。
その手で、もう一度料理をする。
服を着る。
財布を持って買い物へ行く。
絵を描く。
大切な人のために何かをする。
作業療法士が支えているのは、単なる「動作」ではありません。
その動作の先にある、その人の生活なのだと思います。
おまけ:作業療法士のイラスト
以前に描いたOTのイラストをいくつか載せておきます。よろしかったらお使いください。
おもちゃを持ってる姿。


ハサミと画材。

スプーンとパレット。

ファイルも抱える姿。

ありがとうございました。
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