足に点滴が入っていたら歩いていい?―足背・足関節周囲に末梢静脈カテーテルがある患者さんのリハビリ

足に点滴が入っていたら歩いていい?―足背・足関節周囲に末梢静脈カテーテルがある患者さんのリハビリ

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足に点滴が入っていたら歩いていい?

―足背・足関節周囲に末梢静脈カテーテルがある患者さんのリハビリ

病院でリハビリをしていると、点滴をしたまま患者さんを離床させることは珍しくありません。

多くの場合、点滴のルートは上肢に入っています。

ところが、ときどき足背や足関節の周囲に点滴のルートが入っている患者さんがいます。

「どうしてこんなところに?」

と思うこともあります。

しかし、何度も点滴治療を受けていたり、血管が細かったり、これまで何度も穿刺されていたりすると、上肢で血管を確保することが難しくなることがあります。

実際、末梢静脈路の確保が難しい患者さんは珍しくなく、繰り返す穿刺そのものが患者さんの負担になります。

そのような事情があって、下肢にルートが確保されていることもあるのでしょう。

では、

足に点滴が入っている患者さんは歩いていいのでしょうか?

今回は、理学療法士の立場から考えてみたいと思います。

成人では上肢への留置が基本

まず知っておきたいのは、成人の末梢静脈カテーテルでは、上肢への留置が推奨されているということです。

CDCのガイドラインでは、成人では上肢を使用し、下肢に留置された場合には可能になれば上肢へ変更することが推奨されています。

ですから、

「足にも普通に点滴を入れればいい」

というわけではありません。

一方で、現実の患者さんでは、なかなか血管が確保できないことがあります。

何度も穿刺されている患者さんを見て、

「また刺し直せばいい」

とも簡単には言えません。

リハビリスタッフとしては、なぜここにルートが入っているのかという背景も考えておく必要があると思います。

 

私は歩行を控えることが多かった

私自身は、足関節周囲に点滴のルートが入っている患者さんでは、無理に歩行まで行わず、立位程度に留めることが多くありました。

これは「足に点滴が入っていたら歩いてはいけない」という決まりを知っていたからではありません。

実際に患者さんの足を見て、

「これで歩かせて大丈夫なのだろうか?」

と思ったからです。

歩行では、足関節は底屈・背屈を繰り返します。

そこで私は、まず荷重しない状態で足関節を底屈・背屈させてみることもありました。

ところが、それだけでも挿入部周辺が動いたり、ルートや固定部に影響しそうに見えることがありました。

そういう場合には、

「これを何十歩も繰り返す必要があるだろうか」

と考えて、歩行まで進めないことがありました。

今振り返ってみても、この「実際に動かして、ルートに何が起こるかを見る」という考え方自体は大切だったと思います。

問題なのは「足に入っていること」だけではない

末梢静脈カテーテルでは、静脈炎、浸潤・血管外漏出、閉塞、漏れ、疼痛、抜去・逸脱など、さまざまなトラブルが起こります。大規模なシステマティックレビューでも、こうした合併症が一定の頻度で生じることが報告されています。

また、固定が不十分なカテーテルでは、カテーテルの小さな動きが繰り返されることで血管壁への機械的刺激などにつながる可能性があります。

そう考えると、リハビリで見るべきなのは、

「下肢に点滴が入っているかどうか」だけではありません。

足関節を動かしたときに、

  • 挿入部が動いていないか
  • ドレッシングが浮いたりずれたりしないか
  • ルートが引っ張られないか
  • チューブが折れたり圧迫されたりしないか
  • 疼痛や違和感が出ないか
  • 発赤、腫脹、熱感、漏れなどがないか

といったことを見ます。

そして、動かす前だけではなく、動かした後にも確認することが重要です。

「まず足関節を動かしてみる」は一つの評価になる

いきなり歩行させるのではなく、まず臥位や座位で足関節をゆっくり動かしてみます。

底屈。

背屈。

そのとき、カテーテルと固定部、ルートがどう動くのかを見ます。

患者さんにも、

「痛くないですか?」

「引っ張られる感じはありませんか?」

と確認します。

問題がなければ、次に立位。

立位でもう一度確認します。

ここまでは問題がなかったとしても、そこから歩行へ進むかどうかは別に考えます。

歩行になれば足関節運動を何度も繰り返しますし、荷重も加わります。点滴台を操作する必要もあります。

つまり、

臥位で足関節が動かせた=歩いても大丈夫

とは限りません。

一段階ずつ実際の反応を見ていくことが大切だと思います。

 

では、足に点滴があったら歩かない方がいい?

ここは、今回あらためて文献を調べてみて、私自身も慎重に書いておきたいところです。

「足背や足関節周囲に末梢静脈カテーテルが留置されていたら歩行は禁止」

という一律の基準は、私が確認した範囲では見つけることができませんでした。

したがって、

「足に点滴があるから立位まで」

と決めてしまうのも適切ではないと思います。

反対に、

「歩行禁止という根拠がないから、普通に歩いてよい」

と考えるのも違います。

留置されている場所、固定状態、投与されている薬剤、患者さんの状態、足関節運動による挿入部への影響、そして歩行練習の必要性。

それらを見ながら個別に判断する必要があります。

 

歩かせたいなら、看護師さんに相談するという選択肢もある

ここで大事なのが、多職種との相談です。

たとえば、

「この患者さんには歩行練習が必要だけれど、足関節を動かすたびにルートがかなり動く」

という場合。

PTだけで、

「危ないから今日は歩行中止」

と終わらせるのではなく、

看護師さんに、

「歩行練習をしたいのですが、この位置だと足関節を動かすたびに固定部に負担がかかりそうです」

と相談することもできます。

もちろん、

「リハビリをしたいから上肢に刺し直してください」

という単純な話ではありません。

上肢ではどうしても血管が取れず、苦労してその場所に確保したルートかもしれないからです。

だからこそ、

点滴治療と離床の両方をどう成立させるかを、PTだけで考えない。

看護師や必要に応じて医師と情報を共有することが大切だと思います。

 

点滴を見るのではなく、「動いたとき」を見る

点滴が入っている患者さんを見ると、

「点滴があるから動かせない」

あるいは逆に、

「点滴くらいなら歩ける」

と考えてしまうことがあります。

でも、大切なのはそこではないのかもしれません。

どこに入っているのか。

どんな動作で、その場所がどう動くのか。

実際に動いたとき、患者さんとカテーテルに何が起こるのか。

そして、

その患者さんに、今その動作を行う必要があるのか。

足関節に点滴が入っているなら、まず足関節を動かしてみる。

問題がなければ立ってみる。

そして、もう一度確認する。

必要なら看護師さんと相談する。

「歩けるか、歩けないか」を最初から決めるのではなく、

どうすれば安全に動けるのかを考える。

点滴をしながら行うリハビリでは、そんな視点が大切なのだと思います。

 

ありがとうございました。

 

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