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シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか 第10回
「できません」の本当の意味を考えていますか?
「先生、それはできません。」
リハビリをしていると、患者さんからよく聞く言葉です。
この言葉を聞いたとき、
「まだ筋力が足りないのかな。」
「難しすぎたかな。」
「今日は調子が悪いのかな。」
そんなふうに考えることが多いと思います。
もちろん、それが理由のこともあります。
でも、一度立ち止まって考えてみてください。
患者さんが言う「できません」は、本当に能力だけの問題なのでしょうか。

「できません」という言葉の中には、さまざまな思いがある
例えば、
「転ぶのが怖い。」
「痛みが出そう。」
「また失敗したくない。」
「家族に心配をかけたくない。」
「以前やって悪化したことがある。」
「どうやればいいのか分からない。」
「迷惑をかけてしまいそう。」
患者さんは、その一つひとつを説明することはあまりありません。
それらをまとめて、
「できません。」
という一言で表現していることがあります。

「できる・できない」を評価しても、「できない理由」は分からない
理学療法士は、
筋力を測ります。
関節可動域を測ります。
バランス能力を評価します。
歩行能力を確認します。
もちろん、それらはとても大切です。
しかし、
同じように立ち上がれない患者さんでも、
筋力不足で立てない人もいれば、
転倒への恐怖で立てない人もいます。
痛みを我慢している人もいます。
息苦しくて立てない人もいます。
「できない」という結果だけでは、本当の理由は見えてきません。
セラピストならどう関わるか
患者さんから
「できません。」
と言われたら、
私はすぐに
「やってみましょう。」
とは言わないようにしています。
まずは、
「何が一番心配ですか?」
「どこが難しいと感じますか?」
「以前にも同じことがありましたか?」
そんなふうに聞いてみます。
すると、
「転ぶのが怖いんです。」
「膝が抜けそうな気がして。」
「また家族に迷惑をかけたくなくて。」
そんな本当の気持ちを話してくださることがあります。
その答えによって、
リハビリの進め方は大きく変わります。
手を添えるだけで安心できる人もいます。
練習の方法を変えた方がよい人もいます。
今日は動くより、話を聞くことが必要な人もいます。
私たちが評価すべきなのは、「できる・できない」だけではありません。
「なぜ、できないと感じているのか。」
その理由を知ることが、本当にその人に合ったリハビリにつながるのだと思います。

おわりに
「できません。」
その言葉を、
能力の問題だけで終わらせない。
その人は、
何を怖がっているのでしょうか。
何に困っているのでしょうか。
何を守ろうとしているのでしょうか。
その背景を知ろうとすることが、
患者さん一人ひとりに合ったリハビリにつながります。
患者さんの言葉は、ゴールではありません。
その人を理解するための入り口なのだと思います。

『できません』という言葉は、患者さんが自分に限界を宣言しているのではありません。
私たちに『どうしたらできるか、一緒に考えてほしい』と伝えている言葉なのかもしれません。
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