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人工呼吸器をつけているから呼吸リハは不要?―私がそう思わない理由―
病棟で人工呼吸器を装着している患者さんを担当していると、時々こんな言葉を耳にすることがあります。
「人工呼吸器で呼吸を管理しているのだから、呼吸リハビリは必要ないのでは?」
確かに人工呼吸器は患者さんの呼吸を補助してくれる機械です。
しかし私は、長期に人工呼吸器を使用している患者さんほど呼吸リハビリが重要だと考えています。
今回はその理由についてお話ししたいと思います。

人工呼吸器は何をしているのか?
人工呼吸器は肺に空気を送り込み、換気を補助する機械です。
しかし人工呼吸器ができるのは「空気を出し入れすること」であって、
- 胸郭を柔らかくする
- 痰を出す
- 姿勢を整える
- 関節拘縮を防ぐ
- 脊柱変形を予防する
といったことはできません。
つまり、人工呼吸器と呼吸リハビリは役割が違うのです。

胸郭は動かさなければ硬くなる
長期間ベッド上で過ごしている患者さんでは、四肢だけでなく胸郭にも拘縮が起こります。
特に、
- 重症心身障害児者
- 神経筋疾患
- 長期臥床患者
では胸郭の柔軟性が徐々に失われていきます。
胸郭が硬くなると肺が十分に広がらなくなり、
- 無気肺
- 痰の貯留
- 肺炎
を引き起こしやすくなります。
そのため胸郭の可動性を維持することは重要な呼吸リハビリの一つです。

痰は人工呼吸器では取れない
人工呼吸器は換気を補助してくれますが、痰を排出してくれるわけではありません。
長期人工呼吸器管理患者さんでは、
- 咳が弱い
- 呼吸筋が低下している
- 自力で体位変換できない
などの理由で分泌物が溜まりやすくなります。
痰が溜まると、
- 肺炎
- 無気肺
- 酸素化低下
の原因になります。
そのため、
- 体位ドレナージ
- 呼気介助
- スクイージング
- MIE(機械による咳介助)
- 吸引
などを適切に組み合わせることが重要になります。

姿勢が呼吸を変える
呼吸状態は人工呼吸器の設定だけで決まるわけではありません。
例えば、
- 背臥位
- 側臥位
- ファーラー位
- 座位
では肺の広がり方が変わります。
一日中同じ姿勢で過ごしていると、換気が偏り、分泌物が貯留しやすくなります。
そのためポジショニングや離床も立派な呼吸リハビリです。

呼吸筋は使わなければ弱くなる
人工呼吸器に完全に依存した状態が続くと、横隔膜などの呼吸筋は徐々に弱くなります。
これは「人工呼吸器関連横隔膜機能障害(VIDD)」と呼ばれています。
患者さんによっては、
- 自発呼吸を維持する
- 人工呼吸器離脱を目指す
- 呼吸機能低下を最小限にする
ために呼吸筋へのアプローチが必要になることもあります。
関節拘縮予防も実は呼吸リハ
理学療法士は人工呼吸器装着患者さんに対して、
- 肩関節運動
- 体幹運動
- 胸椎の可動性改善
- ストレッチ
- ポジショニング
などを行います。
一見すると整形外科的な介入に見えるかもしれません。
しかし肩甲帯や体幹の柔軟性は胸郭の動きと密接に関係しています。
つまり拘縮予防そのものが呼吸機能の維持につながっているのです。
特に重症心身障害児者では重要
私が関わることの多い重症心身障害児者では、
- 側弯
- 胸郭変形
- 股関節拘縮
- 筋緊張亢進
などによって呼吸機能が徐々に低下していきます。
人工呼吸器を装着していても、
胸郭の変形が進めば換気効率は低下し、痰も溜まりやすくなります。
だからこそ、
- 胸郭可動性の維持
- ポジショニング
- 排痰
- 離床
が非常に大切になるのです。
おわりに
人工呼吸器は呼吸を補助してくれる素晴らしい医療機器です。
しかし人工呼吸器だけでは、
患者さんの胸郭を柔らかく保つことも、痰を出すことも、姿勢を整えることもできません。
私は、
「人工呼吸器管理患者に呼吸リハは不要」
ではなく、
「人工呼吸器管理患者だからこそ呼吸リハが必要」
だと考えています。
呼吸リハビリの目的は、呼吸をさせることではありません。
患者さんが少しでも良い呼吸状態を維持し、肺炎や無気肺を予防し、快適に生活できる身体を守ることなのだと思います。

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