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人工呼吸器と身体抑制について考える
〜「安全のため」が、優先されて良いの?〜
人工呼吸器を装着している患者さん。
気管切開をしている患者さん。
自己抜管の危険がある患者さん。
医療現場では、その“安全”を守るために身体抑制が行われることがあります。
両手をベッド柵に固定される。
ミトンを装着される。
24時間、自由に身体を動かせない。
それは決して珍しい光景ではありません。
でも、その姿を前にした時、ふと胸が苦しくなる瞬間があります。
「これは本当に仕方のないことなのだろうか。」
今回は、人工呼吸器管理中の身体抑制について、医療者の立場で考えてみたいと思います。

「抑制しなければ危ない」は本当
まず最初に、誤解のないように書いておきます。
人工呼吸器管理中の自己抜管は、本当に危険です。
特に、
- 気管切開チューブ
- 人工呼吸器回路
- 酸素ライン
- 点滴ライン
などは、抜去されると命に関わることがあります。
さらに、
- 認知機能低下
- 不穏
- せん妄
- 重症心身障害
- 神経難病
などがあると、危険性はさらに高まります。

現場のスタッフは、決して「縛りたい」と思って抑制しているわけではありません。
むしろ逆です。
「抜けたらどうしよう」
「命に関わったらどうしよう」
そんな恐怖の中で、ギリギリの判断をしています。
だから、抑制をしている医療者を簡単に責めることはできません。

でも、“安全”だけでは説明できない苦しさがある
ただ、それでも。
24時間、両腕を固定され続ける姿を見ていると、心が揺れます。
しかも、それが一時的ではなく、
「この先も、ずっと続くかもしれない」
となると、なおさらです。
人は本来、
- 身体を動かし
- 触れ
- 探索し
- 姿勢を変え
- 自分の意思で動く
生き物です。
それを奪われ続けることは、単なる“安全対策”ではなく、その人の生活そのものに関わります。
「反応が少ない人」は、本当に苦痛を感じていないのか
重症心身障害児(者)や重度障害のある方では、
- 表情変化が少ない
- 言葉で訴えられない
- 意思表示が難しい
ことがあります。
すると周囲は、無意識に、
「そこまで苦痛ではないのかもしれない」
と思ってしまうことがあります。
でも、本当にそうでしょうか。多分違います。

身体を動かしたい。
痒い。
違和感がある。
不安。
怖い。
苦しい。
そうした感覚が、まったく存在しないとは言い切れません。
むしろ、表現できないからこそ、こちらが想像し続けなければならないのだと思います。
「抑制するか、しないか」の二択ではない
身体抑制の議論は、時々極端になります。次のような二択。
- 絶対に必要
- 完全撤廃すべき
でも現実は、そんな単純ではありません。
大切なのは、
「ゼロにできるか」ではなく、「少しでも苦痛を減らせないか」という視点ではないでしょうか。
例えば、
- 本当に両手が必要なのか
- 片手では危険なのか
- 時間帯で変えられないか
- 見守り中だけ解除できないか
- 離床時はどうか
- 可動域を少し残せないか
そんな小さな工夫の積み重ねが、“その人らしさ”を守ることにつながることがあります。

「触る」のは、危険行為だけではない
患者さんがチューブを触る時。
私たちはつい、「危険行動」として見てしまいます。
でも実際には、
- 苦しい
- 痰が不快
- 痒い
- 気になる
- 不安
- 暇
- 感覚刺激が少ない
そんな理由が隠れていることがあります。
特に長期臥床では、「何もすることがない」という状態自体が、大きなストレスになります。

だからこそ、
- 姿勢を変える
- 離床する
- 音楽を流す
- 好きな刺激を増やす
- 触れる
- 景色を変える
そんな関わりも、とても大切です。
「命を守る」と「生きている感覚を守る」
医療は、命を守る仕事です。
でも同時に、
“その人がどう生きるか”
を考える仕事でもあるはずです。
安全を守ろうとするあまり、
- 動けない
- 触れられない
- 自由がない
- 刺激がない
状態が続くと、人は少しずつ“生活”を失っていきます。
もちろん簡単な答えはありません。
現場には、人手不足もあります。
事故への恐怖もあります。
責任もあります。
それでも、
「この人にとって、少しでも苦痛を減らせないか」
と考え続けることには意味があると思うのです。

最後に
身体抑制の問題は、誰か一人を責めれば解決するものではありません。
医師も。看護師も。リハビリスタッフも。そして家族も。
みんな悩みながら、その人の安全と生活の間で揺れています。
だからこそ大切なのは、
「仕方ない」で思考停止しないこと。
そして、
「本当にこの方法しかないのか」を問い続けることなのだと思います。
安全だけではなく、苦痛だけでもなく、その両方を見続ける。
それが、長期療養に関わる医療者に必要な視点なのかもしれません。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
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