チーム医療のイラスト その29 (保育士)

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病院にも保育士がいる?

〜医療を陰で支える「院内保育士」の仕事〜

病院で働いている職種と聞くと、どんな人を思い浮かべるでしょうか。

医師、看護師、薬剤師、理学療法士、診療放射線技師、臨床検査技師……。

たくさんの専門職が働いています。

しかし病院によっては、もう一つ大切な専門職が働いています。

保育士です。

「病院なのに、どうして保育士がいるの?」

そう思う人もいるかもしれません。

今回は、普段あまり表からは見えない病院で働く保育士、とくに院内保育所の保育士について紹介します。

 

病院の保育士は、誰を保育しているの?

院内保育所では、主に病院で働く職員の子どもを預かります。

病院では、看護師をはじめ多くの職員が早朝、夜間、休日にも働いています。

一般的な保育園の開園時間だけでは、勤務と子育てを両立することが難しい場合があります。

そこで重要になるのが院内保育所です。

実際に、365日24時間保育、夜間・休日保育、一時保育、病後児保育などを取り入れている病院もあります。厚生労働省も院内保育所を医療従事者の勤務環境を支える取り組みとして紹介しています。

つまり院内保育士は、子どもを支えているだけではありません。

その子の親である医療従事者が安心して働ける環境も支えているのです。

 

絵本を読むのも大切な仕事

院内保育でも、子どもにとって大切なのは「いつもの子どもらしい時間」です。

絵本を読んだり、歌ったり、一緒に遊んだりする。

病院の中や近くにある保育施設だからといって、子どもの毎日まで「病院らしく」なる必要はありません。

むしろ、保護者の勤務が不規則になりやすい環境だからこそ、子どもが安心して過ごせる生活の場をつくることが重要になります。

子どもの言葉だけではなく、表情を見る

子どもが元気に遊んでいる日ばかりではありません。

「お母さんに会いたい」

「今日はなんとなく寂しい」

そんな気持ちを、まだ上手に言葉にできない子もいます。

だから保育士は、しゃがんで目線を合わせ、表情や仕草にも注意を向けます。

泣いているから、すぐに泣き止ませればよい。

言うことを聞かないから、注意すればよい。

それだけではありません。

この子は今、何を伝えようとしているのだろう。

その背景を考えることも、保育の専門性の一つです。

「遊んでいる」ではなく「遊びを見ている」

積み木を積む。

おもちゃの車を走らせる。

友達と遊ぶ。

一見すると、保育士はただそばで見ているだけに見えるかもしれません。

しかし、その「見る」には意味があります。

手をどのように使っているのか。

どんな遊びに興味を示すのか。

友達とどう関わっているのか。

困ったときにどうするのか。

必要以上に大人が手を出さず、子ども自身が経験する時間を守ることも大切です。

見守ることも、立派な保育なのです。

食べることも生活を学ぶ時間

食事では、単に子どものお腹を満たせばよいわけではありません。

スプーンを使う。

自分で食べる。

いろいろな食材を経験する。

食事の挨拶や習慣を覚える。

こうした毎日の経験そのものが、子どもの成長につながっていきます。

年齢や発達に合わせて、「自分でやってみたい」という気持ちを大切にしながら必要な部分だけを手伝います。

お昼寝中も、仕事は続いている

子どもたちが眠ったら、保育士も一休み。

……というわけにはいきません。

午睡中も子どもの状態を確認します。

実際、院内保育所の保育士業務として「午睡チェック」を明記している病院もあります。

布団はきちんと掛かっているか。

いつもと違う様子はないか。

安全に眠れているか。

静かな時間にも、保育士の目は子どもたちを見守っています。

病院ならではの「時間」の難しさ

院内保育の大きな特徴の一つが、保護者の勤務時間が一般的な会社員とは異なることです。

医療は夜になったからといって止まりません。

夜勤をする職員もいます。

休日に勤務する職員もいます。

予定していた時刻に仕事を終えられない場合もあります。

実際に夜間保育を行う院内保育所もあり、夜の寝かしつけまで保育士の業務としている病院があります。

これは一般的な保育園とは少し違う、院内保育ならではの難しさです。

「自分でやりたい」を待つ

ボタンを留める。

靴を履く。

服を着替える。

大人がやった方がずっと早いでしょう。

でも、あえて全部やらない。

少し待ってみる。

困ったところだけ手伝う。

保育士は「できないことを代わりにする人」ではなく、子どもが自分でできるようになる過程を支える人でもあります。

これは保育の仕事の面白いところです。

保護者との会話も大切な保育

院内保育士が向き合う相手は、子どもだけではありません。

送り迎えのときには保護者と情報を共有します。

「今日はこんな遊びをしていました」

「お昼ご飯はこれくらい食べました」

「少し眠そうでした」

「こんなことができるようになりました」

短い会話や連絡帳を通して、その日の子どもの様子を伝えます。

そして院内保育の場合、その保護者自身が同じ病院で働く医療従事者であることも大きな特徴です。

命を支える仕事を終えて迎えに来る人もいれば、これから夜勤へ向かう人もいるかもしれません。

その生活を理解しながら子どもと家庭を支えることも、院内保育の役割です。

子どもが帰ったあとにも仕事がある

保育士というと、「一日中子どもと遊んでいる」というイメージを持たれることがあります。

しかし、実際には記録の仕事があります。

連絡帳を書く。

日誌を書く。

子どもの様子を記録する。

保育計画を考える。

施設によって内容は異なりますが、実際の院内保育所でも、日誌、連絡ノート、月案・週日案・個別計画などの作成が業務に含まれています。

目の前の子どもを見ることと、その姿を記録して次の保育につなげること。

どちらも保育士の仕事です。

明日の保育は、今日のうちから始まっている

画用紙を切る。

工作の材料をそろえる。

おもちゃを整理する。

保育室を整える。

こうした仕事は、保護者からはほとんど見えません。

しかし翌日、子どもたちが安全に楽しく遊ぶためには欠かせない仕事です。

子どものいないところで行う仕事も、すべて子どもにつながっています。

 

一人で抱え込まず、チームで子どもを見る

「今日は少し元気がなかったね」

「最近、この遊びに興味を持っているみたい」

「お母さんからこんな話があったよ」

保育士同士で情報を共有することで、一人だけの見方に偏ることを防げます。

とくに勤務時間が変則的な院内保育では、自分がいない時間の子どもの様子を知るためにも、記録や申し送りが重要になります。

子どもを支えるのは、一人の保育士ではありません。

保育士同士、そして保護者と一緒に支えていきます。

さらに特殊な仕事――病児・病後児保育

病院によっては、院内保育に加えて病児保育・病後児保育を行っています。

実際に院内保育と病児保育の両方を担当する病院の保育士求人もあります。

ここでは元気な子どもを預かる通常の保育とは違う注意が必要です。

体調が悪い。

いつもより元気がない。

食欲がない。

眠りたがる。

そんな子どもに、「みんなと同じ活動をしましょう」と求めるわけにはいきません。

その日の体調に合わせて、静かに遊ぶ、休ませるなど、保育の内容そのものを調整する必要があります。

病児保育室によって対象となる病気や受け入れ基準も異なります。病院内の病児保育室で少人数の病児・病後児を預かる例もあります。

ここには、保育と医療の距離が非常に近い、病院ならではの特殊性があります。

院内保育士が支えているのは「病院」でもある

院内保育について考えていると、面白いことに気づきます。

保育士が直接支えているのは子どもです。

しかし、その子どもの親は病院で患者さんを支えています。

たとえば看護師が夜勤をするとき、

「子どもを安心して預けられる場所がない」

となれば、勤務そのものが難しくなることがあります。

逆に、

「ここなら安心して預けられる」

と思える場所があれば、仕事を続けやすくなります。

厚生労働省が紹介する事例でも、院内保育所は医師、看護職、コメディカルなどが安心して働くための勤務環境改善策として位置づけられています。

つまり、

保育士 → 子ども → 医療従事者 → 患者さん

という、一見すると見えにくいつながりがあるのです。

院内保育士が患者さんの治療をするわけではありません。

それでも、医療従事者が働き続けられる環境を支えることで、結果として病院全体を下支えしています。

病院には、患者さんから見えない仕事がたくさんある

病院という場所は、医療職だけでは成り立ちません。

患者さんの目の前で働く人。

医療機器を管理する人。

食事をつくる人。

建物を管理する人。

事務をする人。

そして、そこで働く職員の子どもたちを守る人。

それぞれの仕事がつながって、病院という大きな組織が動いています。

院内保育士は、患者さんから直接「ありがとう」と言われる機会は少ないかもしれません。

それでも、その仕事の先には、安心して働く医療従事者がいます。

そして、その医療従事者の先には患者さんがいます。

子どもの手を握るその手が、巡り巡って医療を支えている。

病院で働く保育士は、そんな「見えないところから医療を支える専門職」の一つなのだと思います。

 

終わりに

僕が働いていた病院では重症心身障害児の方々が入所する病棟があり、保育士がスタッフとして勤務していました。

保育士がいることは小児病院では普通なことかもしれませんが、一般病院では珍しいことかもしれません。

保育士は、文字通り患者や入所者が子どもである場合に、その対応を行います。

子どもの心理社会的ケアを提供し、彼らが安心感を得られる環境づくりに貢献します。

一緒に過ごす時間も長いことから、子どものことをよく知っています。

リハビリスタッフや看護師にとっても、保育士からの情報は非常に助かるものです。

 

おまけ:保育士のイラスト

色違いのイラストをいくつか載せておきます。

よろしかったら、お使いください。

 

 

 

 

 

 

 

ありがとうございました。

 

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