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シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか その19回
「ありがとう」の本当の意味を考えていますか?
「先生、ありがとう。」
リハビリが終わったとき。
退院の日。
病室を出ようとしたとき。
患者さんから、そんな言葉をかけていただくことがあります。
その一言を聞くと、
「少しでも役に立てたのかな。」
「喜んでいただけたんだ。」
私たちは嬉しくなります。
もちろん、その「ありがとう」には、感謝の気持ちが込められているのでしょう。
でも、一度立ち止まって考えてみてください。
患者さんは、本当に「ありがとう」だけを伝えたかったのでしょうか。

「ありがとう」という言葉の中には、さまざまな思いがある
例えば、
「今日で最後だから。」
「もう会えないかもしれない。」
「本当はもっと話したかった。」
「これ以上迷惑をかけたくない。」
「うまく気持ちを伝えられない。」
「支えてくれて嬉しかった。」
患者さんは、その思いを一つひとつ説明することはあまりありません。
それらをまとめて、
「ありがとう。」
という一言で表現していることがあります。

「ありがとう」は、別れの言葉になることもある
退院の日。
転院の日。
あるいは、リハビリが終了する日。
患者さんは、
「ありがとうございました。」
と笑顔で言います。
でも、その笑顔の奥には、
「本当はまだ不安です。」
「もう少し一緒に頑張りたかった。」
「一人でやっていけるかな。」
そんな気持ちが隠れていることがあります。
「ありがとう。」
は、
「さようなら。」
の代わりなのかもしれません。
だからこそ、その一言には、少し寂しさが混じっていることがあります。

感謝だけではなく、信頼の証でもある
患者さんは、毎日たくさんの医療者と関わっています。
その中で、
あえて「ありがとう」と伝えてくださるのは、
「この人なら分かってくれる。」
「安心して話せた。」
そんな信頼の気持ちが含まれていることもあります。
リハビリは、
筋力をつけることだけではありません。
一緒に笑った時間。
悔しさを共有した時間。
転びそうになって支えた瞬間。
少し歩けるようになって一緒に喜んだ日。
そんな積み重ねがあって初めて、
「ありがとう。」
という言葉につながるのだと思います。
セラピストならどう関わるか
患者さんから、
「ありがとう。」
と言われたとき、
私は、
「こちらこそ、ありがとうございました。」
と返します。
そして、できればもう一言、
「○○さんと一緒にリハビリができて、私も嬉しかったです。」
と伝えたいと思っています。
患者さんは、
「ありがとう。」
と言って終わりにしたつもりでも、
本当は、
「先生に出会えてよかった。」
「頑張ってきてよかった。」
そんな気持ちを伝えたかったのかもしれません。
だからこそ、
私たちも形式的な挨拶だけではなく、
その人との時間を大切に思っていたことを伝えたいのです。

「ありがとう」の後に残るもの
患者さんが退院されたあと、
ふと病室の前を通ると、
「あの方、元気にしているかな。」
と思うことがあります。
患者さんもまた、
家に帰ってから、
「リハビリの先生、元気かな。」
と思い出してくださることがあるかもしれません。
医療者と患者さんの関係は、
退院したら終わりなのかもしれません。
でも、
一緒に過ごした時間まで消えるわけではありません。
だから私は、
「ありがとう。」
という言葉は、
感謝だけではなく、
一緒に歩んだ時間そのものを表す言葉なのだと思っています。

おわりに
「ありがとう。」
その言葉を、
「感謝してくれたんだ。」
だけで終わらせない。
その人は、
何を伝えたかったのでしょうか。
何を残したかったのでしょうか。
そして、
どんな思いで、その一言を口にしたのでしょうか。
その背景を知ろうとすることが、
患者さんとの出会いを、より大切なものにしてくれるのだと思います。

「ありがとう」は、感謝の言葉です。
でも時には、別れの言葉であり、信頼の言葉であり、一緒に過ごした時間そのものを表す言葉でもあります。
だから私は、患者さんから『ありがとう』と言われるたびに、その一言の奥にある思いまで受け止められる理学療法士でありたいと思っています。(理学療法士を退職するかもしれない自分にはもう無理な話ですが)

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