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リズムは分かるのに、なぜメロディーが分からない?―難聴になって知った「音楽の聞こえ方」
難聴になって補聴器を使い始めて、驚いたことがあります。
音楽が分からないのです。
これは、僕にとって少し意外なことでした。
言葉が聞き取れないことについては、なんとなく理解できます。
実際、補聴器をつければ人の声(機械音ですが)がしていることは分かっても、何を話しているのかまでは分からないことがあります。
でも、音楽は違うと思っていました。
音が聞こえているのなら、
「なんとなく高くなった」
「今度は低くなった」
くらいは分かるだろう。
はっきり聞こえなくても、知っている曲ならメロディーくらい分かるんじゃないか。
そう思っていました。
ところが、実際は違いました。

音楽が「不穏な音」に聞こえる
補聴器をつけて音楽を聞いてみると、音が鳴っていること自体は分かります。
でも、
メロディーが分からない。
知っているはずの音楽なのに、曲として入ってきません。
僕には、なんだかホラー映画で流れているような不穏な音に聞こえることがあります。
これはなかなか説明しにくい感覚です。
「音楽が小さく聞こえる」というのとも違います。
音はする。
でも、それが僕の知っている「音楽」にならないのです。

ラジオ体操なら分かると思ったけれど……
先日、ジムでラジオ体操をする機会がありました。
ラジオ体操の音楽なら何度も聞いたことがあります。
メロディーも単純ですし、身体も動きを覚えています。
「これなら大丈夫だろう」
と思って参加しました。
ところが、音楽がよく分からず、周りと動きがズレてしまいました。
そこで少し心配になりました。
「もしかすると、僕はリズムそのものも分からなくなっているのでは?」

単純なリズムを試してみた
そこで、YouTubeにある簡単なリズムの聞き取りを試してみました。
複雑な音楽ではなく、
「タン、タン、タン、タン」
のような単純なものです。

結果は、
リズムは分かりました。
音が鳴ったタイミングも分かるし、その間隔が変化することも分かります。
リズムに合わせて、指で机を叩くこともできました。
これは、ちょっと安心しました。
もちろん、自宅で試した簡単な課題ですから、医学的な聴覚検査ではありません。
それでも、
「少なくとも単純なリズムは分かる。でもメロディーは分からない」
という、自分の聞こえ方の特徴が少し見えてきました。
では、リズムとメロディーでは何が違うのでしょうか。
リズムとメロディーは、同じ「音楽」でも違う情報
音楽には、いろいろな情報が含まれています。
リズムでは、
いつ音が鳴ったか。
どのくらい続いたか。
次の音までどのくらい間隔があったか。
といった「時間」の情報が重要になります。
一方、メロディーを感じるためには、それだけでは足りません。
たとえば、
ド → ミ → ソ → ミ → ド
と音が並んでいたとします。
5回音が鳴ったことだけ分かっても、それだけではこのメロディーは分かりません。
「最初より次の音が高くなった」
「さらに高くなった」
「今度は下がった」
というように、音の高さの違いや変化を捉える必要があります。
そして脳がその音の並びをまとめて、
「これは一つのメロディーだ」
と認識します。

耳は「音量」だけを感じているわけではない
僕は以前、耳についてかなり単純に考えていました。
音が小さければ聞こえない。
大きければ聞こえる。
でも、耳の仕事はそれだけではありません。
内耳の蝸牛では、入ってきた音を周波数などに応じて細かく分析しています。
つまり耳は、
「音が鳴った」
だけでなく、
「どんな高さの音なのか」
という情報も脳へ送っているわけです。
感音難聴では、このような音の周波数成分を細かく分けて捉える能力が低下することがあります。
すると、
音の存在は分かる。
音が鳴るタイミングも分かる。
でも、それぞれの音の高さや音色の違いが分かりにくい。
ということが起こり得ます。
「ド・ミ・ソ」が全部同じに聞こえるわけではない
ここは少し注意が必要です。
「メロディーが分からない=すべての音程がまったく同じに聞こえている」
とは限りません。
大きく高さの違う音なら区別できても、近い音程になると難しいかもしれません。
単独なら高い・低いが分かっても、いくつもの音が連続すると追えなくなるかもしれません。
さらに実際の音楽には、一つの音だけではなく、楽器の音色、倍音、和音、伴奏、歌声など、たくさんの情報が同時に含まれています。
だから、
単純な二つの音を聞き分けること
と、
実際の曲をメロディーとして聞き取ること
も、同じではありません。
僕自身がどこまで音程を区別できているのかは、まだ分かりません。
これも今後、少し試してみたいところです。
では、なぜラジオ体操ではズレたのか?
簡単なリズムの課題ができたのなら、
「ラジオ体操でもリズムくらい取れるのでは?」
と思います。
でも、実際のラジオ体操の音源は「タン、タン、タン」だけではありません。
メロディーがあります。
伴奏があります。
さまざまな高さの音があります。
さらにジムなら、周囲の人の動きや物音などもあります。
その中から、
「身体を動かすタイミングにつながる音」を取り出す
必要があります。
ですから、自宅で単純なリズムを聞き分けられたことと、ラジオ体操で周囲とズレたことは矛盾しません。
むしろ、
単純なリズムなら分かるけれど、複雑な音の中では難しくなる
可能性もあります。
補聴器をつければ、音楽も元通りになる?
ここで、また補聴器の話になります。
補聴器は単純にすべての音を同じだけ大きくしているわけではありません。
その人の聴力に合わせて周波数ごとに増幅量を変えたり、大きすぎる音を圧縮したり、雑音を抑えたりと、さまざまな処理をしています。
こうした機能は会話を聞くためには重要です。
一方、音楽は非常に幅広い周波数や音量、複雑な倍音を含んでいます。
そのため、普段の会話に合わせた補聴器の設定が、必ずしも音楽に最適とは限りません。
補聴器によっては「音楽用プログラム」を設定できるものもあります。
僕も今度、補聴器の調整をするときに、
「音は聞こえるけれど、メロディーが分からない」
と相談してみようと思っています。
ただし、設定を変えれば必ずメロディーが分かるようになる、という意味ではありません。
聞こえ方には、補聴器だけでなく、内耳や聴覚神経、脳での音の処理など、いろいろな要素が関係しています。
難聴になって、「音楽」が不思議になった
以前の僕にとって、音楽はただ聞くものでした。
メロディーを聞くために、
「今の音は何Hzだろう」
「前の音より高いだろうか」
などと考える必要はありません。
勝手に音楽として聞こえていました。
だからこそ、難聴になって初めて気づきました。
音楽を音楽として感じるためには、
音が聞こえるだけでは足りない。
音の高さ。
音色。
時間。
リズム。
それらを耳と脳が分析し、まとめ上げて、初めて僕たちは「音楽」として感じているのですね。
僕の場合、
音は聞こえる。
単純なリズムも分かる。
でも、メロディーが分からない。
まだ、自分の耳で何が起きているのか、すべて分かったわけではありません。
でも難聴になったことで、以前なら考えもしなかった「聞こえる」という仕組みを、一つずつ知るようになりました。
ホラー映画のように聞こえている音楽も、僕の耳がどう音を受け取っているのかを知る、一つの手がかりなのかもしれません。(ホラー映画音楽を常に響いているのも、相当忍耐が要りますが‥)
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