〈スポンサーリンク〉
シリーズ 患者さんの言葉の本当の意味を考えていますか その13回
「怖い」の本当の意味を考えていますか?
「先生、ちょっと怖いです。」
リハビリをしていると、患者さんからこう言われることがあります。

でも実際には、
「怖い。」
とはっきり口にされる方は、それほど多くありません。
その代わりに、
「今日はやめておきます。」
「痛いからできません。」
「歩けません。」
そんな言葉で、自分の気持ちを表現していることがあります。
だからこそ、一度立ち止まって考えてみてください。
患者さんは、本当に「できない」と言っているのでしょうか。
それとも、「怖い」と言っているのでしょうか。

「怖い」という言葉の中には、さまざまな思いがある
例えば、
「また転んだらどうしよう。」
「骨折したら家族に迷惑をかける。」
「息が苦しくなったらどうしよう。」
「手術したところが壊れそう。」
「また脳梗塞になったら…。」
「もう一度、あの痛みを味わいたくない。」
患者さんにとって、「怖い」とは命や生活に関わる現実です。
だから簡単には口にできません。
その代わりに、
「できません。」
「痛いです。」
「今日はやめます。」
という言葉で、その気持ちを伝えていることがあります。

「怖い」は悪いことではない
私たちは時々、
「大丈夫ですよ。」
「そんなに心配しなくても。」
と励ましたくなります。
もちろん、その言葉が患者さんを支えることもあります。
でも、
患者さんにとって、その恐怖には理由があります。
転倒して骨折した経験。
息ができなくなった苦しさ。
救急車で運ばれた記憶。
その経験があるからこそ、怖いのです。
つまり、
恐怖は弱さではありません。
患者さんが自分の身体を守ろうとしている、大切な反応なのです。

セラピストならどう関わるか
患者さんから、
「できません。」
と言われたら、
私はまず、
「何が一番怖いですか?」
と聞いてみます。

すると、
「転ぶのが怖い。」
「息が苦しくなるのが怖い。」
「また痛くなるのが怖い。」
そんな本当の気持ちを話してくださることがあります。
その答えによって、
リハビリの進め方は大きく変わります。

手を添えて安心してもらうこと。
まずは座った状態から始めること。
呼吸を整えてから動くこと。
あるいは、
今日は動くことよりも、不安な気持ちを聞くことが大切な日かもしれません。

私たちが向き合うのは、
筋力だけではありません。
恐怖もまた、評価すべき大切な情報なのです。

おわりに
「怖い。」
その言葉は、
弱い人だけが口にする言葉ではありません。
病気やけがを経験した人なら、
誰もが感じる自然な感情です。
だからこそ、
私たちは、
「怖くないですよ。」
と否定するのではなく、
「何が怖いのですか。」
と、その理由に耳を傾けたい。
患者さんが安心して一歩踏み出せるように支えること。
それも、理学療法士の大切な役割なのだと思います。
患者さんの言葉は、ゴールではありません。
その人を理解するための入り口なのだと思います。

恐怖をなくすことが、リハビリではありません。
恐怖があっても、「これならやってみよう」と思える安心感を一緒につくること。
それが、私たち理学療法士にできる支援なのだと思います。

〈スポンサーリンク〉