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以前に何回かに渡って、THA(特に後方侵入の場合)の動作時の注意点についてまとめてきました。
今回はその補足です。
前回触れられなかったことを取り上げたいと思います。
その前に、基本中の基本のおさらいから。
手術の切開アプローチ方法と脱臼肢位
THAの切開アプローチには大きく分けて、後方侵入と前方侵入があります。
後方侵入では後方に、前方侵入の場合は前方脱臼しやすくなります。イラストを見ると容易に想像できますね。
では脱臼肢位を具体的に見てみましょう。
後方侵入の場合は屈曲・内転・内旋の複合運動(❌)
前方侵入の場合は伸展・内転、外旋の運動です。(❌)
複合運動ではなく、単独の運動でも過度のものであれば、それは脱臼の危険性があると言えます。
詳しくは以前の記事を参考にしてくださいね。
後方侵入の場合(→こちら)
前方侵入の場合(→こちら)
生活動作の注意点
前方侵入の場合、基本的に脱臼は起きづらいので、今回は後方侵入のケースを考えてみたいと思います。
【就寝】
できればベッドを使いましょう。もちろん床からの立ち上がり動作も、慎重に行えば問題ないケースがほとんどです。
リハビリの時にその方法について何度も習うことになると思いますが、それでも危険性がゼロになるとは言えません。
夜間にトイレに起きることがあると想定すれば、転倒の危険は常にあります。
また就寝の姿勢ですが、一般に術後3ヶ月は足の間に枕を挟んで、股関節が内転しないようにしてください。
特に横向きになる時は、枕を挟むのを忘れないように。
上になる脚が重力で下り、結果として内転位となることがあります。
【食事動作】
床に座って食べることは極力避けましょう。(❌)
あぐら自体は禁忌ではないですが、その姿勢になるまでに脱臼肢位をとってしまうことがあります。
この機会にテーブルと椅子での食事に切り替えてはどうでしょうか。
でも、理屈は分かっていても、そうしづらいケースがあるのもわかります。食事は一人で摂るわけではありません。
他の家族がちゃぶ台やコタツで食べる中、1人孤独でテーブルで…というのは、なかなか受け入れ難いことですよね。
家族間でよく相談しましょう。
【トイレ】
必ず洋式トイレを使いましょう。(⭕️)
和式トイレは脱臼肢位になってしまいます。(❌)
以前にも書きましたが、ぼくが知っている脱臼ケースでは、運転中に急にもよおしてしまい、立ち寄ったドライブイン(古い)で和式トイレを使ったというものでした。
なんとか中腰で行おうと試みたものの、重力には勝てず、そのまましゃがんでしまったということでした。
まぁ、このように避けられない場合もあるとは思いますが、自宅のトイレは安全にいきたいものです。
洋式トイレでも座面が低いタイプは脱臼の危険性はありますので、便座を補高するなり工夫が必要です。
下のイラストは悪い例 (❌)股関節が過屈曲となっています。
補高用の便座を使用すれば、便器ごと変えずに済みます。
これは良い例 (⭕️)
座位場面でそれほど屈曲位となっていなくても、立ち上がりの際に屈曲位を取らざるを得ないこともあります。
そのような時は、手すりを取り付けて上肢の代償を利用するのも手ですよ。
【お風呂】
これも以前にご紹介しましたので、そちらを参考にしてください。
THA後の浴槽の跨ぎ方(→こちら)
安全に行える方法を2つあげておきます。
まずは普通に跨ぐ方法。健側から浴槽に入れます。
またはこんなやり方も。(浴槽の縁に座って行う方法)
また、頭を洗うときに前にかがむことが多いと思いますが、前にかがむと股関節が過屈曲になってしまいます。
(これはダメな例❌)
美容院のように後方に流すようにして行うのはどうでしょうか。(これは⭕️)
くれぐれも後方への転倒に注意が必要ですが。
【階段昇降】
昇段は杖→良い方の足→悪い方の足の順番で行います。
降段は、杖→悪い方の足→良い方の足の順番で行います。
詳しくはこちらをご参照ください。
【更衣】
靴下を履く動作などは、禁忌肢位をとりがちです。下のような方法だと、股関節の過屈曲となってしまいます。
(これは悪い例❌)
(これは良い例⭕️)
(これはさらに安全⭕️)
詳しくは、以前の記事を参考にしてくださいね。(→こちら)
無理をしないでソックスエイドなどの自助具を使用するのも手です。
以上、簡単にTHA術後の日常生活動作について簡単にご説明しました。
まだ不十分な点も多いと思います。継続的に記事を更新していきたいと考えています。(→こちら)
ありがとうございました。
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