下肢の分離運動とは?共同運動との違いとリハビリ方法をイラストで解説

〈スポンサーリンク〉



下肢の分離運動とは?

〜共同運動との違いとリハビリ方法をイラストで解説〜

脳梗塞や脳出血などを発症すると、麻痺した手足を思うように動かせなくなることがあります。

例えば、膝を伸ばしたまま脚を持ち上げようとしても、膝が曲がってしまう。

反対に、膝を曲げようとしても、脚全体が突っ張ってしまう。

筋力がまったくないわけではないのに、思いどおりに動かせない。

こうした状態には、筋力だけでなく、関節の動きを選択的にコントロールする能力が関係しています。

今回は、脳卒中後のリハビリでよく使われる「共同運動」と「分離運動」について説明し、下肢の分離運動を練習する方法を紹介します。

 

分離運動とは?

分離運動とは、複数の関節が決まったパターンで一緒に動いてしまう状態から離れ、必要な関節や筋肉の働きを選択的にコントロールすることです。

例えば、股関節を曲げた姿勢を保ちながら、膝だけを曲げ伸ばしする。

股関節と膝関節の動きを、ある程度独立してコントロールするわけです。

ただし、分離運動とは、必ずしも一つの関節だけを動かすことではありません。

実際の歩行では、股関節、膝関節、足関節が協調して動きます。

大切なのは、それぞれの関節を必要に応じて動かし、不要な動きを抑えられることです。

では、分離運動の反対にある「共同運動」とは、どのようなものでしょうか。

 

共同運動とは?

脳卒中によって運動をコントロールする神経系が損傷すると、麻痺側の手足を思うように動かすことが難しくなります。

発症後には筋緊張が低下することもあれば、時間の経過とともに筋緊張が亢進することもあります。

そして、身体の一部を動かそうと思っても、ほかの関節まで一定の組み合わせで一緒に動いてしまうことがあります。

これが共同運動です。

例えば、肘を伸ばして手を挙げようとしても、肘が曲がってしまう。

肩なら肩だけ、肘なら肘だけというように、必要な動きを選択することが難しくなるわけです。

共同運動には一定の傾向があり、上肢では屈曲共同運動、下肢では伸展共同運動が目立つことがあります。

ただし、すべての患者さんが同じパターンを示すわけではありません。

 

ウェルニッケ・マン肢位

脳卒中後には、上肢が曲がり、下肢が伸びた特徴的な姿勢がみられることがあります。

これはウェルニッケ・マン肢位と呼ばれています。

街で、麻痺側の脚を突っ張るようにして歩いている方を見かけたことがあるかもしれません。

このような歩き方には、伸展共同運動や痙縮、筋力低下、足関節の運動障害など、さまざまな要因が関係します。

共同運動だけで説明できるものではありませんが、関節を自由にコントロールできないことが歩行に影響する一例です。

 

下肢の共同運動パターン

一般的な下肢の共同運動には、屈曲パターンと伸展パターンがあります。

下肢の屈曲共同運動(Flexion Synergy)

  • 股関節:屈曲・外転・外旋
  • 膝関節:屈曲
  • 足関節:背屈・内反

例えば、膝を曲げて脚を持ち上げようとしたときに、股関節が外転・外旋しやすくなることがあります。

 

下肢の伸展共同運動(Extension Synergy)

  • 股関節:伸展・内転・内旋
  • 膝関節:伸展
  • 足関節:底屈・内反

例えば、麻痺側の脚で立とうとしたときに、膝が強く伸び、足関節が底屈してしまうことがあります。

私の臨床経験では、特に立位や歩行場面で、下肢の伸展共同運動が目立つ患者さんを多く経験しました。

もちろん、麻痺の程度や回復段階によって現れ方は異なります。

また、共同運動は単なる筋緊張の亢進とは異なります。随意運動を行おうとしたときに、複数の関節が一定のパターンで連動することが特徴です。

 

なぜ分離運動の練習をするのか?

脳卒中後の運動麻痺では、筋力を強くすることだけが目標ではありません。

例えば、歩行中に脚を前へ振り出すとき、股関節を曲げながら膝を適切に曲げる必要があります。

ところが、下肢が伸展共同運動に強く支配されていると、膝を曲げることが難しくなります。

その結果、脚を外側に回して振り出すなどの代償動作がみられる場合があります。

もちろん、こうした代償動作にも、移動を可能にするための役割があります。

大切なのは、代償動作を一律に否定することではなく、患者さんの運動能力や生活上の目標に応じて、より多くの動き方を獲得できるようにすることです。

その方法の一つとして、分離運動の練習があります。

今回は、股関節の位置をできるだけ保ちながら、膝関節を曲げ伸ばしする運動を紹介します。

 

分離運動の練習① 背臥位バージョン

まず、仰向けで行う方法です。

仰向けになり、麻痺側の脚を持ち上げます。

 

 

股関節を曲げた位置で保ちながら、膝を伸ばします。

 

 

続いて、膝をゆっくり曲げます。

 

この運動では、股関節の位置をできるだけ変えずに、膝関節の屈伸を行うことがポイントです。

実際には、股関節を完全に固定する必要はありません。

また、麻痺側の脚を空中で保持すること自体が難しい患者さんもいます。

その場合は、セラピストが大腿部を支えたり、脚を支持できる環境を整えたりして、運動の難易度を調整します。

大切なのは、脚を高く持ち上げることではなく、膝の動きをできるだけ選択的にコントロールすることです。

 

分離運動の練習② 腹臥位バージョン

次は、うつ伏せで行う方法です。

うつ伏せになることは、患者さんによっては難易度が高いものです。

ただし、骨盤や大腿部がベッドに支持されるため、股関節の余分な動きを抑えやすいというメリットがあります。

うつ伏せになり、

膝をゆっくり曲げます。

続いて、膝をゆっくり伸ばします。

このとき、膝を曲げようとして骨盤が持ち上がったり、腰を反らしたりしていないか確認します。

腹臥位では骨盤や大腿部が支持されますが、股関節が完全に固定されるわけではありません。

必要に応じて骨盤を支えたり、運動範囲を小さくしたりして調整します。

比較的軽度の麻痺で、膝の動きを自分でコントロールできる患者さんには、取り入れやすい運動の一つだと思います。

ただし、呼吸状態や疼痛、関節可動域などによっては腹臥位が適さないこともあります。

無理にこの姿勢をとる必要はありません。

 

分離運動を行うときのポイント

・力を入れすぎない

膝を曲げようとして強く力を入れると、かえって共同運動パターンが強く現れることがあります。

そのような場合は、運動範囲を小さくしたり、介助を加えたりして調整します。

無理に大きく動かす必要はありません。

・自分の動きを確認する

鏡を使ったり、セラピストから動きについて説明を受けたりして、自分の動きを確認できるとよいですね。

例えば、

「膝を曲げるときに、股関節まで動いていませんか?」

と確認するだけでも、運動の目的が分かりやすくなります。

ただし、感覚障害や注意障害などがある患者さんでは、確認方法を工夫する必要があります。

・患者さんの状態に合わせる

発症から時間が経つにつれて、分離運動ができるようになる方もいれば、麻痺が重度で、なかなか難しい方もいます。

また、認知機能や理解力、疲労の程度によっても、練習方法を調整する必要があります。

重度の麻痺がある場合でも、介助や支持を利用して運動を経験できることがあります。

ただし、患者さんが自分で行う自主トレーニングとして適しているかどうかは、別に考える必要があります。

筋緊張が高い場合には、姿勢を調整したり、ゆっくりと関節を動かしたりして、動きやすい状態を整えることもあります。

ストレッチをすれば必ず分離運動が改善するというわけではありませんが、運動を行う前の準備として役立つ場合があります。

 

分離運動は、膝の曲げ伸ばしだけではない

今回取り上げたのは、膝関節の屈伸を中心とした二つの運動です。

でも、実際にはこれだけではありません。

例えば、SLR(下肢伸展挙上)では、膝を伸ばした状態を保ちながら股関節を曲げます。

膝関節の位置を保持しつつ股関節を動かすという意味で、関節のコントロールを練習する機会になります。

 

また、足関節の底背屈運動でも、膝や股関節の余分な動きを抑えながら足首を動かす練習ができます。

ただし、これらの運動を行えば、必ず共同運動からの分離が進むというわけではありません。

どの関節を動かしたいのか。

どの動きを抑えたいのか。

その運動が、患者さんの生活動作にどうつながるのか。

こうした目的を考えることが大切です。

 

分離運動ができれば、それでよいのか?

最後に、もう一つ。

ベッドの上で膝を上手に曲げ伸ばしできるようになったとしても、それだけで歩行が改善するとは限りません。

歩行には筋力、感覚、バランス、姿勢制御など、さまざまな能力が必要だからです。

ベッド上で練習した動きを、立ち上がりや歩行などの実際の動作につなげていくことも重要になります。

そして、分離運動が十分にできないからといって、歩行練習や日常生活動作の練習ができないわけでもありません。

患者さんによっては、代償動作や補助具を利用しながら、生活の中で必要な動作を獲得していくことも大切です。

分離運動は、あくまでもリハビリの一つの手段です。

 

まとめ

脳卒中後の運動麻痺では、身体の一部を動かそうとしても、複数の関節が一定のパターンで一緒に動いてしまうことがあります。

これが共同運動です。

一方、分離運動では、共同運動パターンに強く支配されず、必要な関節運動を選択的にコントロールします。

今回紹介した背臥位や腹臥位での膝関節屈伸は、その練習方法の一例です。

ただし、運動をきれいに行うことだけが目的ではありません。

最終的には、立つ、歩く、移動するなど、患者さんが必要とする動作につなげていくこと。

そのために、分離運動という視点を持っておくことが大切なのだと思います。

ありがとうございました。

 

 

ポチっとお願いします↓


オリジナルイラストランキング

〈スポンサーリンク〉