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めまい(前庭)のリハビリ⑥
前庭障害では、なぜ暗い場所で歩きにくくなるの?― 視覚と足裏感覚の役割 ―
「昼間は歩けるのに、夜になると急に不安になる。」
「暗い廊下では壁を触りたくなる。」
「目を閉じると急にふらつく。」

前庭障害を経験した方なら、このような体験をしたことがあるかもしれません。
私自身も、夜道を歩くと昼間より不安が強くなることがありました。
「暗いだけなのに、なぜこんなに歩きにくいのだろう。」
その答えは、これまで何度も登場してきた感覚の再重み付け(Sensory Reweighting)にあります。
今回は、日常生活の中で「目」と「足裏」がどれほど大切な役割を果たしているのかを見ていきましょう。
バランスは「3本脚のイス」のようなもの
私たちの身体は、3つの感覚を組み合わせてバランスを保っています。
- 前庭(内耳)
- 視覚(目)
- 体性感覚(足裏・筋肉・関節)
この3つは、ちょうど3本脚のイスのような関係です。
3本とも正常なら、とても安定しています。
しかし、前庭障害では1本の脚が弱くなります。
すると脳は、
残りの2本、
つまり
目と足裏の感覚に、より頼るようになります。
これが「感覚の再重み付け」です。

暗くなると「目」という支えが減ってしまう
昼間は、
周囲の景色を見ることで、
身体が傾いていないかを確認できます。
ところが、
夜になると、
視覚から得られる情報が急に少なくなります。
すると、
脳が頼りにしていた「目」という支えが弱くなります。
前庭も弱い。
目からの情報も少ない。
そうなると、
頼れるのは足裏の感覚だけになります。
そのため、
暗い場所では急に不安定になってしまうのです。

目を閉じると、なぜふらつくのでしょうか
これも同じ理由です。
目を閉じると、
視覚からの情報がゼロになります。
健康な人なら、
前庭と足裏の感覚だけでも、
ある程度バランスを保てます。
しかし、
前庭障害では、
前庭からの情報も十分ではありません。
そのため、
目を閉じた瞬間、
バランスを保つための情報が一気に減ってしまいます。
だから、
急に身体が揺れたり、
立っていられなくなったりすることがあります。
理学療法士が行うロンベルグテストや閉眼立位でも、この仕組みが利用されています。

足裏の感覚も、とても大切
ここまで読むと、
「目が大事なんだ。」
と思われるかもしれません。
もちろん、その通りです。
しかし、
実はもう一つ大切なのが
足裏の感覚です。
柔らかい砂浜。
厚いじゅうたん。
ふかふかしたマット。
こうした場所では、
足裏から伝わる情報が少なくなります。
すると、
脳は身体の位置を判断しにくくなります。
だから、
前庭障害の方は、
柔らかい場所でもふらつきやすくなることがあります。

おわりに
前庭障害では、
単に「耳」が悪くなっているだけではありません。
脳は、
目や足裏からの情報を利用して、
毎日バランスを保とうとしています。
だからこそ、
夜道や暗い場所、
目を閉じた時、
柔らかい地面では、
急に歩きにくくなることがあります。
これは決して気のせいではありません。
脳が利用できる情報が減ってしまうために起こる、ごく自然な反応なのです。
そして前庭リハビリは、
こうした状況でも脳が少しずつ適応できるように学習を促す訓練でもあります。
焦らず少しずつ経験を積み重ねることで、
脳は残された感覚をさらに上手に使えるようになっていきます。
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