腱板部分断裂(棘上筋)のリハビリ戦略と時期別アプローチ

腱板部分断裂(棘上筋)のリハビリ戦略と時期別アプローチ

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【保存療法でも回復を目指せる】腱板部分断裂(棘上筋)のリハビリと考え方

肩の痛みの原因のひとつに、腱板部分断裂があります。

腱板の中でも、特に損傷がみられやすいのが「棘上筋」です。

「腱が切れていると言われたけれど、リハビリをして意味があるの?」

「断裂したら、いずれ手術になるの?」

そんな不安を持つ方もいると思います。

しかし、「断裂がある=すぐに手術」ではありません。

部分断裂では、痛みや筋力、年齢、活動量、断裂の大きさや場所などを考慮しながら、まず保存療法が選択されるケースも少なくありません。

そしてリハビリで大切なのは、

「切れた腱そのものを元通りにする」ことだけを目標にするのではなく、肩全体を使いやすい状態にしていくこと

です。

今回は、腱板部分断裂に対するリハビリの考え方を紹介します。

 

そもそも腱板とは?

肩関節の周囲には、

  • 棘上筋
  • 棘下筋
  • 小円筋
  • 肩甲下筋

という4つの筋があります。

これらの腱が肩関節を包むように存在しており、まとめて腱板(ローテーターカフ)と呼ばれます。

腱板は単純に腕を動かすだけではありません。

腕を動かすときに上腕骨頭を安定させ、肩関節をスムーズに動かすための重要な役割を担っています。

その中でも棘上筋は、加齢による変性や繰り返しの負担、外傷などによって損傷することがあります。

腱の一部だけが損傷した状態が部分断裂です。

 

「断裂しているのに、リハビリして意味があるの?」

画像検査で「腱板断裂」と聞くと、

「切れているところを治さなければ肩は使えない」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、肩の動きは棘上筋だけで作られているわけではありません。

ほかの腱板筋、三角筋、肩甲骨周囲筋など、たくさんの筋肉が協力して肩を動かしています。

そのためリハビリでは、

肩甲骨と上腕骨の動きを整える

残っている腱板機能を活かす

周囲の筋肉を適切に働かせる

痛みを悪化させる動作を見直す

といったことを行います。

つまり、

画像上の「断裂」と、実際の「肩の使いやすさ」は同じものではない

ということです。

部分断裂そのものが画像上残っていても、痛みが軽くなり、日常生活で肩を使いやすくなる可能性があります

非手術治療後に機能改善がみられた部分断裂の報告もあります。

 

時期別リハビリの進め方

① 痛みが強い時期

まず優先するのは、無理に筋力をつけることではありません。

痛みを悪化させず、肩を動かせる状態を保つことです。

特に、腕を何度も高く上げる作業など、痛みが強くなる動作については一時的に量や方法を調整します。

一方で、

「痛いからまったく動かさない」

というのも必ずしも良いとは限りません。

状態に応じて、

  • 振り子運動
  • 無理のない範囲での関節運動
  • 肩甲骨周囲の軽い運動

などから始めます。

大切なのは、

「痛いのを我慢して動かす」でも「まったく動かさない」でもないこと。

その人の肩の状態を見ながら、負荷を調整します。

② 痛みが落ち着いてきたら

痛みが落ち着き、肩を動かせるようになってきたら、少しずつ筋機能を取り戻していきます。

ここで重要になるのが、腱板と肩甲骨周囲筋の働きです。

例えば、

  • 痛みの少ない範囲での等尺性運動
  • 肩関節の内旋・外旋運動
  • 肩甲骨周囲筋のトレーニング
  • 姿勢や肩甲上腕リズムの改善

などです。

 

ゴムチューブを使った運動も選択肢になります。

ただし、

「腱板断裂だから、とにかく腱板を鍛えればいい」

というわけではありません。

肩甲骨の動き、上腕骨の動き、痛み、筋力などを総合的にみながら負荷を調整します。

部分断裂に対する非手術治療では、理学療法、活動調整などが第一選択肢として挙げられており、運動では肩甲上腕の動きや姿勢などを含めて考えることが推奨されています。

③ 日常生活や仕事、スポーツへ戻していく

肩の状態が改善してきたら、

「筋力をつける」だけでなく、「実際に使える肩に戻す」

段階へ進みます。

例えば、

物を棚へ戻す。

洗濯物を干す。

仕事で腕を使う。

スポーツで投げる。

人によって必要な動作は違います。

そのため、この段階では単純な筋力トレーニングだけではなく、

その人が実際にやりたい活動に合わせて運動を組み立てる

ことが大切になります。

スポーツはかなり後になってからですね。

断裂が50%を超えたら手術?

腱板部分断裂では、腱の厚みの何%が損傷しているかが治療方針を考える材料のひとつになります。

従来、腱厚の50%という数字が手術を検討する一つの目安として使われてきました。

50%を超えると、残った腱にかかる力学的負担が大きくなることなどが、その理由の一つです。

しかし、

「50%を超えたら手術、50%未満ならリハビリ」

と単純に決められるものではありません。

治療方針には、

断裂の大きさや場所だけでなく、痛み、筋力低下、年齢、外傷の有無、仕事やスポーツで求められる活動レベル、そして保存療法への反応など、さまざまな要素が関係します。

現在のAAOSガイドラインでも、高度な部分断裂について、理学療法などを行っても症状が改善しない場合には手術治療が選択肢になるという位置づけです。

つまりMRIだけを見て治療を決めるのではなく、

「その人が実際にどれくらい困っているのか」

を見ることが重要なのです。

 

まとめ

腱板部分断裂があるからといって、必ず手術になるわけではありません。

そして、

「腱が元通りになったか」だけがリハビリの成果でもありません。

痛みが減った。

腕を使いやすくなった。

仕事に戻れた。

趣味を再開できた。

夜眠れるようになった。

こうした変化も、大切な「回復」です。

腱板部分断裂に対するリハビリでは、

損傷している場所だけを見るのではなく、肩全体の機能と、その人の生活を見る。

私はそこが、とても大切だと思います。

「断裂しているから動かせない肩」ではなく、

断裂があっても、その人が使える肩を一緒につくっていく。

それが保存療法におけるリハビリの大きな役割ではないでしょうか。

※肩の痛みや腱板断裂の状態には個人差があります。外傷後に急に腕が上がらなくなった場合、強い筋力低下がある場合、痛みが長く続く場合などは、自己判断で運動を続けず、整形外科医や理学療法士などに相談してください。

 

ありがとうございました。

 

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