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高次脳機能障害のリハビリの主体はST、OT、どちら?歴史から紐解きます
◼️ 高次脳機能リハビリ ― 30年前と今
私が理学療法士として働き始めた30年前、言語聴覚士(ST)はまだ国家資格ではありませんでした。
当時「言語療法士」や「聴能訓練士」と呼ばれる人たちはいましたが、数も限られ、まだ制度的に整っていない時代でした。
そのころ「高次脳機能障害」という言葉も今ほど一般的ではなく、リハビリの現場では失語症は言語療法士が、そして注意障害や記憶障害、遂行機能障害といった“高次脳”全般は作業療法士(OT)が担っていた印象が強くあります。
私自身の記憶でも、「高次脳はOTの分野」という感覚がありました。

◼️ ST資格化と学会の広がり
1997年に言語聴覚士法が成立し、1999年から国家試験が始まりました。
制度化によって養成校が整備され、STの数が一気に増えていきます。
また1977年に発足していた「日本失語症学会」は2000年に「日本高次脳機能障害学会」へと改称。
ちょうどSTが国家資格として羽ばたき始めた時期と重なり、STが学会の中心的な担い手となりました。
こうして「高次脳機能障害=STの専門」というイメージが徐々に広がっていった**のです。
◼️ 現在の棲み分け
では今はどうでしょうか。実際の臨床現場では以下のようなすみ分けが多く見られます。
言語聴覚士(ST)
失語症、失読・失書の評価・訓練
WMS-R、RBMTなどを用いた記憶障害の評価と訓練
TMT、PASATなどを用いた注意機能評価コミュニケーション支援(会話、発話明瞭度、AAC など)
認知障害患者の社会的交流を支えるプログラム

作業療法士(OT)
遂行機能障害の評価(BADS、WCSTなど)と日常生活への般化訓練
注意・記憶障害を考慮したIADL訓練(調理、買い物、金銭管理など)
職業復帰・就労支援、余暇活動支援
家族指導や環境調整を含めた包括的アプローチ

つまり、STは「言語・記憶・コミュニケーション」中心、OTは「行動・生活・社会参加」中心と整理するとわかりやすいでしょう。
もちろん実際には互いに重なる領域も多く、チームで協力して関わるのが前提です。
◼️ まとめ
30年前は「高次脳=OT」という印象が強かったのが、STの国家資格化を機に大きく様変わりしました。
今ではSTとOTがそれぞれの強みを生かしながら、互いに補い合う関係にあります。
当時を知っている身からすると、この変化はとても興味深いものです。
リハビリの世界もまた、制度や学会の動きとともに変わり続けているのだと実感します。

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