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立位で行うクアド・セッティング|体重を支えながら膝を伸ばす練習
以前の記事では、仰向けや長座位で行うクアド・セッティングについて紹介しました。
また、うつ伏せで行う方法も紹介しています。
今回はもう一つ。
立った状態で行うクアド・セッティングです。
同じ「大腿四頭筋を収縮させて、膝を伸ばす方向へ力を出す」という運動でも、寝て行うのと立って行うのとでは少し意味が変わります。
立位では、自分の体重を脚で支えています。
ここが今回のポイントです。

クアド・セッティングとは?
クアド・セッティングは、大腿四頭筋を収縮させて、膝を伸ばす方向へ力を出す練習です。
一般的には、仰向けや長座位で膝の下にタオルを入れ、
「膝裏でタオルを押してください」
という方法がよく使われます。
関節を大きく動かさなくても大腿四頭筋を収縮させられるため、術後など大きな膝運動を行いにくい時期にも使われることがあります。
ただし、
「膝に負担がかからない運動」
とまで言い切れません
立位になれば、当然ながら脚には体重も加わります。
大切なのは、その人の状態や目的に合わせて方法を選ぶことです。
クアド・セッティングそのものについては、基本編で詳しく説明しています。
なぜ立って行うの?
仰向けでクアド・セッティングができるようになったとします。
では、それができれば歩行や立ち上がりでも、うまく大腿四頭筋を使えるのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
実際の生活では、私たちは寝た状態だけで膝を使っているわけではありません。
立つ。
歩く。
方向を変える。
段差を上る。
こうした動作では、体重を支えながら膝をコントロールする必要があります。
そこで、立位でのクアド・セッティングという方法があります。
寝た状態で筋肉を収縮させる練習から、実際に体重がかかった状態で膝をコントロールする練習へ。
その橋渡しの一つとして考えることができます。
ただし、
「仰向けができたら、次は必ず立位」
という順番ではありません。
その人が何を練習する必要があるのかによって選びます。

立位でのクアド・セッティングの方法
では、やってみましょう。
壁に背を向けて立ちます。
運動する側の膝の裏と壁との間に、クッションや柔らかいボールを挟みます。
踵はできるだけ壁に近づけておきます。
ただし、無理に壁へ踵をつけるために姿勢が崩れるようなら、少し離れても構いません。
最初は膝をわずかに緩めます。

そこから、
膝裏でボールを壁へ押しつけるように、膝を伸ばす方向へ力を入れます。
太ももの前側、大腿四頭筋が収縮していることを確認します。
数秒(5〜10秒)保持したら、ゆっくり力を抜きます。

これを繰り返します。
ボールをつぶすことが目的ではありません
この運動を見ていると、
「ボールを強くつぶせばいいんですね」
と思うかもしれません。
でも、ボールをつぶす競争ではありません。
ボールやクッションは、
「どちらへ力を出せばよいのか」
を分かりやすくするための目印です。
これは基本編で膝の下にタオルを入れたのと似ています。
仰向けでは膝裏でタオルを下へ押す。
立位では膝裏でボールを後方の壁へ押す。
姿勢は違っても、
大腿四頭筋を収縮させて、膝伸展方向へ力を出す
という中心部分は共通しています。
膝だけを見るのではなく、身体全体を見る
立位になると、寝て行う場合よりも見るところが増えます。
例えば、ボールを押そうとして、
お尻だけが壁から離れる。
上半身を大きく前へ倒す。
踵が浮く。
反対側の脚へ体重を逃がす。
身体全体を後ろへ押しつける。
そんなことがあります。

患者さんとしては、一生懸命ボールを押しているのでしょう。
でも、ボールがへこんでいる=目的どおりにできているとは限りません。
どのように立っているのか。
どちらの脚に体重がかかっているのか。
大腿四頭筋が実際に収縮しているのか。
膝だけでなく、身体全体を見る必要があります。
ここが立位で行う面白さでもあります。
膝は「伸ばしきるほどよい」わけではない
クアド・セッティングの目的は、とにかく膝を限界まで後ろへ押し込むことではありません。
膝の伸びる範囲には個人差があります。
もともと膝が反りやすい人もいますし、術後や変形性膝関節症などで伸展が制限されている人もいます。
無理に「最大伸展」を目指すのではなく、
その人にとって適切な範囲で、大腿四頭筋を使って膝伸展方向へ力を出す。
そこを大切にしたいと思います。
5~10秒でなければいけない?
記事では「5~10秒キープ」と書きました。
もちろん一つの方法ですが、これも絶対的な数字ではありません。
数秒から始めることもありますし、目的によって保持時間や回数、力の強さを変えます。
特に立位では、大腿四頭筋だけでなく、姿勢を保つこと自体にも負担がかかります。
後半になって姿勢が崩れているのに、
「10秒と書いてあったから」
と頑張る必要はありません。
時間より、運動の質を見る。
これは腹臥位でも同じですね。
歩行の練習になるの?
歩行には大腿四頭筋は重要な役割を持っています。
特に足が接地して体重を受けていく場面では、膝がガクッと崩れないように大腿四頭筋などが働きながら身体を支えています。
その意味では、荷重した状態で膝をコントロールする練習を行うことには意味があります。
ただし、立位でボールを押す運動と歩行は同じではありません。
歩行では身体が前へ進み、体重が移動し、片脚で支える時間もあります。
ですから、
立位クアド・セッティングができた=歩行で膝をうまく使える
ということではありません。
この運動で得たものを、立ち上がりや荷重移動、ステップ、歩行などへつなげていく必要があります。

仰向け・うつ伏せ・立位――どれが一番いい?
ここまで3種類のクアド・セッティングを紹介してきました。
では、どれが一番効果的なのでしょうか。
私は、単純に順位をつけなくてもよいと思います。
仰向けでは、大腿四頭筋の収縮そのものを確認しやすい。
腹臥位では、身体と床との関係を変えて膝伸展方向への力を練習できる。
立位では、体重を支えながら膝をコントロールするという要素が加わる。
それぞれ特徴が違います。
そして患者さんによって、
仰向けの方が分かりやすい人もいれば、立った方が力を入れる感覚をつかみやすい人もいます。
大切なのは「一番効く姿勢」を探すことではなく、
今、その人に何を練習してほしいのか。
そこから方法を選ぶことだと思います。
まとめ
クアド・セッティングというと、寝た状態で膝の下のタオルを押す運動を思い浮かべることが多いと思います。
でも、立位でも行うことができます。
立位になると、
大腿四頭筋を収縮させることに加えて、体重を支えながら膝をコントロールする
という要素が加わります。
だからといって、立位の方が上級で、仰向けより優れているということではありません。
運動は姿勢によって意味が変わります。
そして最終的に必要なのは、
「クアド・セッティングが上手にできること」ではなく、その力を立つ、歩く、階段を上るといった生活の中で使えること。
地味な運動ですが、その先に何をつなげるのか。
そこまで考えると、クアド・セッティングの見え方もちょっと変わってくると思います。
ありがとうございました。
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