〈スポンサーリンク〉
シリーズ作業を考える 第2回
なぜ人は「何もしない」と弱っていくのか
― 作業が人を支えている ―
リハビリの現場にいると、不思議なことに気づきます。
人は、何もしないと急速に弱っていくのです。
もちろん筋力低下は起こります。
長期臥床による廃用症候群はよく知られています。
しかし実際には、それだけではありません。
入院して活動量が減ると、次のような変化が起きてきます。
- 表情が乏しくなる
- 会話が減る
- 食欲が落ちる
- 意欲がなくなる
- ぼんやりしている時間が増える
身体だけでなく、人そのものが弱っていくように見えることがあります。
これは単なる身体機能の問題なのでしょうか。

◼️ 人は「活動する存在」
人間は、何かをして生きています。
朝起きて
顔を洗い
食事を作り
誰かと話し
外に出て
仕事をし
趣味を楽しむ。
こうした日々の営みは、あまりにも当たり前なので普段は意識しません。
しかし入院すると、突然それらが失われます。
- 家事をしない
- 仕事をしない
- 買い物にも行かない
- 趣味もできない
生活の中の「やること」が一気に減ってしまうのです。
すると人は、ゆっくりと弱っていきます。
◼️ 作業が人を支えている
リハビリの世界では、人が行う活動を
「作業(occupation)」と呼びます。
それは特別なものではありません。
- 食事をする
- 洗濯をする
- 散歩をする
- 誰かと話す
- 本を読む
- 料理を作る
こうした生活の活動です。
これらの作業は、ただ時間を埋めるためにあるわけではありません。
実は、
身体・心・社会のつながりを支えています。
例えば料理をする場合。
- 手や体を動かす
- 段取りを考える
- 家族のことを思う
- 食事を囲んで会話が生まれる

ひとつの作業の中に、さまざまな働きが含まれています。
作業は、単なる動作ではありません。
人が世界と関わる方法でもあります。
◼️ 作業を失うということ
病気や障害によって、作業が失われることがあります。
例えば
- 歩けなくなり散歩に行けない
- 手が動かず料理ができない
- 仕事を辞めざるを得ない
このとき失われるのは、動作だけではありません。
- 生活のリズム
- 家族の中での役割
- 社会とのつながり
も同時に失われてしまいます。
だから患者さんは、よくこう言います。
「何もすることがない」
この言葉は、単に暇だという意味ではありません。
自分の役割を失った感覚なのかもしれません。

◼️ 作業は人を元気にする
逆に言えば、作業が戻ると人は変わります。
例えば、
入院してほとんど動かなかった患者さんが
リハビリで簡単な家事を始めたとします。
すると、
- 表情が明るくなる
- 会話が増える
- 食欲が戻る
- 活動量が増える
そんな変化が見られることがあります。
身体機能が劇的に改善したわけではありません。
しかし
生活が動き始めた
のです。
人は「何かをする存在」です。
作業は、人の活力を引き出します。

◼️ リハビリの本当の目的
リハビリというと、
- 筋力トレーニング
- 関節運動
- 歩行練習
といった運動を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし本当の目的は、
生活の作業を取り戻すこと
です。
例えば、歩けるようになること自体が目的ではありません。
歩いて
- 散歩に行き
- 買い物に行き
- 友人に会い
- 生活を楽しむ
そのために歩くのです。
作業は、生活そのものです。

◼️ おわりに
人は、何もしないと弱っていきます。
それは筋力が落ちるからだけではありません。
作業が失われると、
人は世界との関係を失ってしまう
からです。
リハビリとは、
身体を鍛えることだけではありません。
その人が再び
- 食事を作り
- 誰かと話し
- 趣味を楽しみ
- 社会と関わる
そんな作業を取り戻すことでもあります。
人が元気に生きるためには、
作業が必要なのかもしれません。
このシリーズは全6回です。最後までお付き合いくださいね。
〈スポンサーリンク〉