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「旅」と「旅行」の違いは?――旅は人生を豊かにするのか
「旅」と「旅行」に違いはあるのでしょうか。
辞書的な意味ではなく、僕の勝手なイメージです。
旅行は、日常生活から少し離れて休息し、数日後にはまた日常へ戻ってくるもの。
いわば「息抜き」のような感じがします。
それに対して「旅」は、もう少し重い。
ときには人生そのものを背負って出かけるようなイメージがあります。
「みちのくひとり旅」のような(笑)。
数人で温泉に行ったら「旅行」。
一人で行き先もよく決めず、しばらく帰ってこなかったら「旅」。
もちろん、そんな明確な境界があるわけではありません。
でも僕にとって旅とは、
日常から離れるだけでなく、帰ってきたあとの日常まで少し変えてしまうもの
だったような気がします。

旅は人を幸せにするのか?
なぜ唐突にこんなことを考えたかというと、以前、僕と同年代のバックパッカー仲間と話をしたことがきっかけでした。
旅に一区切りをつけ、企業の正社員になった人。
今でもアルバイトなどをしながら旅を繰り返し、文字どおり「旅が人生」になった人。
生き方はそれぞれです。
ただ、みんな若い頃のようなバックパッカーではありません。
それなりに歳をとりました。
そして一見すると、誰もそれほど幸せそうではない中年男性になっています(笑)。
そんな男たちが酒を飲みながら、
「俺たちの人生、これで良かったのかな」
などと話すわけです。
「旅をしていなかったら、別の人生もあったかな……。」
まあ、深刻な人生相談というより、酒を飲みながらグダグダ言っているだけなのですが。
でも、僕にはずっと引っかかっている問いです。
旅は、本当に人を幸せにするのでしょうか。

僕も、旅をすれば何かが見つかると思っていた
僕は10代から20代前半、自分が何をしたいのか、よく分かっていませんでした。
多くの若者がそうなのかもしれません。
ただ当時の僕は、
「旅をすれば何かが分かるんじゃないか」
と、どこかで思っていました。
今考えると、旅が人生の答えを教えてくれると勘違いしていたのでしょう。
それで旅を繰り返し、いろいろな葛藤の末、インドまでたどり着きました。
……と書くと、なんだか高尚な青年のようですが、そんなことはありません。
当時は、本当に何も分かっていなかったのです。
世間はバブル期。
今とは就職をめぐる状況もずいぶん違いました。
少々甘えた生き方をしていても許されるような時代だったことも、僕の背中を押してくれました。
自由な時間を過ごさせてもらいました。
両親には、ずいぶん心配をかけました。
その後の就職氷河期に社会へ出た人たちからすれば、「そんな時代があったのか」と思われるかもしれません。

旅から帰ってきたら、日本が窮屈になった
ところが、長く旅をしてインドから日本へ帰ってくると、今度は日本社会に居心地の悪さを感じるようになりました。
どうしても、日本の悪いところばかりが目につくのです。
何でも決まり通り。
「前例がありませんから」
と言われて却下される。
そんな社会を、ひどく窮屈に感じました。

ただ、今になって考えると、本当に日本社会だけが悪かったのでしょうか。
旅によって外の世界を知ったことで、自分自身が以前の生活に戻りにくくなっていた部分もあったのだと思います。
日本社会に馴染めない自分を認めるより、
「日本がおかしい」
と思うことで、精神的なバランスを取っていたところもあったのでしょう。
旅は世界を広げてくれました。
でも、世界が広がるということは、それまで普通だと思っていた場所に、そのまま戻れなくなることでもあります。
これは旅の「光」だけでは語れない部分だと思います。
旅を続けた友人たち
同じ頃にバックパッカーをしていた友人の中には、その後も働いては旅に出る生活を続けた人がいました。
当時は、自動車や家電などの工場で一定期間働き、お金を貯めたら、また海外へ出る。
半年働いて、半年旅をする。
そんな生活をしている人も珍しくありませんでした。
若いうちは、それでも何とかなります。
でも歳を重ねると、同じようにはいきません。
働ける場所が限られてきたり、雇用条件が厳しくなったりする。
旅を優先してきたことの代償のようなものが、後になって現れることもあります。
だから、
「旅をすれば人生が豊かになる」
と僕は簡単には言えません。

それでも、旅には人を引きつける何かがある
旅先では、毎日のように新しいものに出会います。
知らない町。
知らない食べ物。
知らない価値観。
そして、昨日まで知らなかった人。
次に何が起こるか分からない。
その中で、ときどき心がふっと解放される瞬間があります。
一度その感覚を知ってしまうと、
毎朝同じ時間に起きて、
同じ場所へ行き、
同じ人たちと会い、
また家へ帰ってくる。
そんな生活に、以前と同じ魅力を感じられなくなることがあります。

もちろん、日常生活が悪いわけではありません。
安定した仕事を持つことにも、家庭を築くことにも、そこでしか得られないものがあります。
ただ、一度外の世界を知ってしまった人間にとって、
外の世界と、日本で暮らす現実の世界。
その狭間で引き裂かれるような気持ちになることがあります。
僕には、その旅人の気持ちが痛いほど分かります。

旅は人生を豊かにするのか、それとも不幸にするのか
結局のところ、
旅は人生を豊かにすることもあれば、かえって生きづらくすることもある。
それが今の僕の答えです。
知らなければ満足できたものに、満足できなくなることもあります。
旅に使った時間を仕事に使っていたら、違う人生があったかもしれません。
もっと安定した生活を送っていたかもしれない。
別の人間関係があったかもしれない。
だから、
「旅をしていなかったら、別の人生もあったかな……。」
という問いには、たぶん一生答えは出ません。

「豊かな青春、みじめな老後」
バックパッカーの世界には、
「豊かな青春、みじめな老後」
という言葉があります。
若い頃の自由と、その後に待っているかもしれない現実。
バックパッカーという生き方の「光」と「陰」を、ずいぶん意地悪に、でも的確に表した言葉だと思います。
歳をとった今では、若い頃よりも、この言葉の意味が分かるようになりました。

それでも。
もし、もう一度若い頃に戻れるとしたら。
旅をしないで、もっと堅実に生きるでしょうか。
就職して、将来のことを考えて、お金を貯めて。
そういう人生を選ぶでしょうか。
たぶん、選ばないと思います。
やっぱり僕は、旅に出るでしょう。
旅が僕を幸せにしたのかどうかは、今でも分かりません。
人生を豊かにしてくれたのか、それとも少し生きづらくしたのか。
それも分かりません。
ただ、
あの頃の自分が旅に出たことを、今の僕は後悔していません。
旅に人生の答えがあったわけではありません。
もしかすると旅とは、答えを見つけるものではなく、
答えの出ない問いを、人生の中にいくつか持ち帰ってくるものなのかもしれません。
そんな問いを抱えながら歳をとるのも、案外悪くないのではないかと思っています。

お付きいただき、ありがとうございました。
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合いしていたたき、ありがとうございました。
