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点滴台を持って歩く患者さん|リハビリで意外と気をつけたいこと
僕が就職した当時は、点滴台の性能は今のものとは比べものになりませんでした。
足も3〜4本しかなく、しかもキャスターは小さい。
バランスもあまりよくありませんでした。
キャスターにゴミがたまりやすく、押しているのに真っすぐ走ってくれない点滴台もたくさんありました。
現在は足も5〜6本に増え、昔に比べれば倒れにくい構造になっています。
とはいえ、点滴台を持った患者さんの移動が簡単になったかというと、そうでもありません。
輸液ポンプの取り付け位置によっては上が重くなりますし、エレベーターの入り口のような、ほんのわずかな段差にキャスターが引っかかることもあります。
点滴台の上についている、点滴バッグを引っかけるカギのような部分。
あれをカーテンに引っかけてしまうこともあります。
倒れにくくしようとして足の部分を大きくすれば、今度は患者さんの足にぶつかりやすくなる。
なかなか難しいものですね。
……話題が逸れました。
今回は、そんな点滴台を持った患者さんのリハビリについて、僕がこれまでに何度かやってしまった失敗も含めて書いてみたいと思います。

「少しくらいなら大丈夫かな」で逆血
点滴をした患者さんを歩かせていて、点滴ルートに血液を逆流させてしまったことは、僕にも何度もあります。
例えば、輸液がもうすぐ終わりそうな患者さん。
点滴バッグを見ると、残っている薬液はほんの少しです。
「まあ、少し歩くくらいなら大丈夫かな」
そう思って歩行を始めたことがありました。
ところが、歩いている途中で輸液が終了。
気がついたときには、ルート内に血液が逆流していました。
「ああ、やってしまった……」
今から考えれば、そんな微妙なタイミングでわざわざ歩き始める必要もなかったんですよね。
看護師さんに、
「点滴がもう終わりそうですけど、今歩いて大丈夫ですか?」
と一言確認すればよかっただけです。
患者さんが歩けるかどうかだけでなく、点滴バッグの中身がどのくらい残っているのか。
これも離床前に見ておきたいところです。

寝ているときには落ちていたのに……
もう一つ、何度か経験したのが自然滴下の点滴です。
患者さんがベッドで寝ているときには、ちゃんと薬液が落ちている。
そこで患者さんを起こして、立ってもらいます。
そして歩き始める。
しばらくして点滴を見ると、
「あれ? 落ちていない」
さらに見ると、ルート内に血液が逆流している。
そんなことがありました。
自然滴下の点滴は、輸液バッグと静脈との高低差によって生じる圧力差を利用しています。実際、バッグの高さによって流量が変わることも報告されています。
患者さんが臥位から座位、そして立位になれば、挿入部の高さも変わります。
つまり、
「寝ているときにちゃんと落ちていたから大丈夫」ではない。
これは僕自身、失敗しながら覚えていったことです。
臥位で確認したら、座位でも見る。
立ったら、また見る。
歩き始めても、ときどき見る。
患者さんの姿勢が変われば、点滴を取り巻く条件も変わります。

エレベーターの段差は侮れない
病院の中で点滴台を押していると、意外に厄介なのがエレベーターです。
問題になるのは、出入り口のほんのわずかな段差。
人が歩くだけならほとんど気になりません。
でも、小さなキャスターにとってはそうではありません。
特に危ないのが、
「戸が閉まりそうだ。早く出なきゃ(または、早く入らくちゃ)」
というとき。
患者さんと一緒に急いで出ようとして、
ガツン。
点滴台のキャスターだけが段差に引っかかる。
患者さんは前へ進もうとしているのに、点滴台は後ろに残ります。
当然、その間をつないでいる点滴ルートも引っ張られます。
閉まりそうなエレベーターを見ると、つい急ぎたくなります。
でも、そこで無理をしない。
開くのボタンを押したり、次まで待てばいいんですよね。

車椅子+点滴台。手が足りない
さらに面倒なのが、患者さんを車椅子で移動させながら点滴台も運ぶ場面です。
車椅子を押す。
点滴台も動かす。
ルートを見る。
患者さんを見る。
周囲も見る。
……手が足りません。
僕自身、操作に手間取って点滴台を倒しそうになったことがあります。
幸い倒れませんでしたが、
「これは無理して一人でやるものではないな」
と思いました。
一人でできることと、一人でやった方がよいことは違います。
難しそうなら、誰かに点滴台を持ってもらう。
それだけでずっと安全になります。

輸液ポンプ、高すぎない?
もう一つ、以前から気になっていたのが輸液ポンプの位置です。
輸液ポンプは結構重いですよね。
それが点滴台の高い位置についていると、
「これ、もう少し下にあった方が安定するんじゃないかな」
と思うことがあります。
重いものが上にあれば重心は高くなりますから、点滴台が傾いたときには安定性の面で不利になります。
実際、医療機器によっては点滴台への取り付け高さに上限を設けたり、5〜6本脚の医療用点滴台を推奨したりしているものがあります。
ただし、ここで問題があります。
理学療法士が輸液ポンプの位置を勝手に変えてよいのでしょうか?
私はここでいつも迷います。
移動の安全だけを考えれば、もう少し低くしたい。
でも輸液ポンプは治療に使用している医療機器です。
機器によって適切な取り付け方も違いますし、院内の決まりもあります。
ですから、
「歩行させたいのですが、この位置だと点滴台が不安定に感じます。ポンプを下げても大丈夫ですか?」
と看護師さんに相談する。
それでいいのだと思います。
リハビリ中に気づいた危険を、PTだけで全部解決する必要はありません。

患者さんだけ見ていてはいけない
歩行練習をしていると、当然、患者さんを見ます。
ふらついていないか。
膝折れしないか。
足が上がっているか。
息切れしていないか。
でも、点滴をしている患者さんの場合、それだけでは足りません。
点滴バッグの残量はどうか。
ちゃんと滴下しているか。
ルートは引っ張られていないか。
挿入部に問題はないか。
点滴台は安定しているか。
ポンプは大丈夫か。
この先に段差はないか。
カーテンに引っかからないか。
そして患者さん自身が点滴台を操作する場合には、点滴台を扱いながら安全に歩けるのかも見なければなりません。
末梢静脈カテーテルそのものにも、閉塞、浸潤・血管外漏出、静脈炎などのトラブルがあります。決して「刺さっていればそれでOK」というものではありません。
考えてみると、結構忙しいですね。

「患者さん+点滴台+ルート」で見る
僕は何度か失敗して、
患者さんだけを見るのではなく、患者さんと点滴台とルートを一つのものとして見る
ことが大切なのだと思うようになりました。
離床前に確認する。
座ったら、また確認する。
立ったら確認する。
歩き始めたら、また見る。
そして、自分だけでは判断できないことがあれば看護師さんに聞く。
確認 → 動く → もう一度確認。
点滴をした患者さんのリハビリでは、そんな繰り返しが大切なのだと思います。
……と、ずいぶん真面目な話になってしまいました。
今回は、そんな点滴台を持った患者さんのイラストです。
よろしかったらお使いください。
(点滴台の足の数が昔のままじゃないか、というツッコミは無しでお願いします。)
点滴台を持った患者のイラスト







よろしかったらお使いください。
ありがとうございました。
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