〈スポンサーリンク〉
ポジショニングには背臥位、半側臥位、側臥位、前傾側臥位(半腹臥位)、腹臥位など様々あります。
今回はそれらについて簡単に説明していきたいと思います。
ただ、ここで注意が必要なのは、どのポジションでもそれが絶対ということはないということです。
それぞれのポジショニンが持っているメリット、デメリットを考えて、患者にどのメリットが1番しっくりくるか、またはデメリットはないかを考えて、適応していただきたいと思います。
では、まずは背臥位から。
背臥位
何よりも安定しています。
頭部、背中や臀部、大腿、下腿、踵部と、広い面で支えられているので、不安定の要素は少ないです。
実際背臥位で過ごしている患者さんは多いですよね。
ただし、脳性麻痺や脳卒中後遺症などの患者は、背筋など伸筋の筋緊張が亢進しやすいという側面もあります。
その場合は、膝下にクッションを挿入して屈曲位にするとか、対応が必要になることもあります。
この他、背臥位を長時間取りやすいということから、背部(セグメントで言うと、S6やS10)に無気肺が出来やすいというデメリットもある姿勢です。
仙骨や踵部、頭部に褥瘡ができやすいというデメリットも忘れてはなりませんね。
[メリット]
・支持面が広く、安定性はバツグン。
・管理が楽。
・多くの患者にとって安楽。
・頭部が動かしやすい。
[デメリット]
・背部に無気肺が出来やすい。
・背筋の筋緊張が亢進しやすい。(特に脳血管障害の患者)
・仙骨部や踵部、肩甲骨、頭部後面などに、褥瘡が出来やすい。
・舌根沈下を起こしやすい。
半側臥位
背臥位で過ごしていると仙骨部に褥瘡ができてしまいます。そこで半側臥位です。
枕を片側の臀部〜背部に挟み込むことで、仙骨部の除圧を行います。
除圧に必要な角度は30度くらいです。
排痰を目的であるのならば、30度では不十分。
60度くらいは傾けるようにしましょう。(実際の病棟では、排痰目的でも30度のポジショニングがなんと多いことか!)
[メリット]
・大転子部や仙骨部の除圧ができる。
・体位変換が容易。
・一人でも行える。
[デメリット]
・目的によって角度調整が必要。
・角度によって、耳に褥瘡ができることもある。
・身体にねじれが起きやすい。(クッションの調整が必要)
側臥位
一番不安定とも言える姿勢です。
前側、後側にも転がる可能性があり、不安定です。
下肢を曲げることで、ある程度安定性を確保することは可能です。
また上側の上下肢が重力により下がるので、身体に捻れが生じたり、肩関節や股関節に負担がかかります(これは上下肢をクッションに乗せることで解消できます。)。
ただ、下側の大腿骨大転子部や外果、上腕骨に褥瘡ができる可能性は高いです。
[メリット]
・クッションなどを効果的に使うことで、安定性を確保でき、片側肺の無気肺対応姿勢として有効。
・咳がやりやすく、排痰に有効。
[デメリット]
・重心が高く、支持面が小さいため、不安定。
・外果や腓骨頭、大腿骨大転子、上腕骨、耳介に褥瘡が出来やすい。
・下側の肩関節の損傷が起きやすい(肩を引き出す操作が必要)。
・枕の高さ調整が必要。
前傾側臥位(半腹臥位)
肺の背部の排痰に適しています。
腹臥位は臨床上難しいケースであっても、前傾側臥位は効果的にはそれほど遜色ないと言われています。
[メリット]
・背側部の無気肺対策に有効。
・人工呼吸器管理の患者にも比較的容易に実施できる。
・腹臥位療法とほぼ同様の効果が得られる。
[デメリット]
・体位変換に2人以上必要(人工呼吸器管理中の場合は3人以上)
・下側の肩関節に負担がかかる。(肩抜き操作をすればOK)
・
※前傾側臥位の姿勢変換のやり方はこちらを参照(→こちら)
腹臥位
昔から医療従事者の中では一般的なものですが、数年前、コロナ感染者の治療方法として、脚光を浴びました。
でも実施するのはやっぱり大変。
人工呼吸器管理中の患者や点滴が両上肢に挿入されている場合は、特に難しくなります。
Aラインが入っている場合などは循環動態も不安定なので、管理は非常に難しくなります。
腹臥位までしなくても、前述した前傾側臥位でも良いかな…と個人的には思います。
[メリット]
・人工呼吸器管理中の患者に起きがちな換気血流比不均衡の治療方として有用。
・伸筋痙性の強い患者の抑制になる。
・舌根沈下が起きずらい。
[デメリット]
・人工呼吸器管理中の患者など、チューブやラインの管理が難しい。
・窒息の危険性あり。
・胃ろうの患者は圧迫に注意が必要。
※腹臥位の姿勢変換のやり方はこちらを参照(→こちら)
ヘッド・アップ位(ギャッジ・アップ)
電動ベッドのギャッジ・アップ機能を使えば簡単に行えるため、ポジショニングの一選択として重要です。
【メリット】
・容易に抗重力位をとることができる。
・重力により内臓が下がり、横隔膜を圧迫しないため、呼吸がしやすくなる。
・人工呼吸器関連肺炎予防には30〜45度の角度が必要。
【デメリット】
・ずり落ちやすい。(先に膝を曲げておくと、ある程度防止できる。)
・シーツとの剪断力にて、仙骨部に褥瘡が発生しやすい。
・循環動態が安定していないと、行うことが難しい。
以上、簡単にそれぞれのポジションのメリット、デメリットについて述べてみました。
それぞれのメリットを生かしたポジショニングを選択していただければ、幸いです。
ありがとうございました。
〈スポンサーリンク〉