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「〇〇をやっておけばよかった」
〜歳を重ねた患者さんから教わった“人生で後悔したこと”〜
病院で理学療法士として働いていると、毎日たくさんの患者さんと出会います。
運動や生活について助言をする立場でありながら、実際には僕のほうが人生の先輩から多くのことを学ばせてもらう場面が少なくありません。
特に高齢の患者さんは、長い年月の中で喜びも失敗も積み重ね、今の姿にたどりついています。
その経験に耳を傾けるたび、胸に残る言葉がいくつも見つかります。
そんな中、僕がよく患者さんに尋ねる質問があります。
「若い頃に、やっておけば良かったと思うことはありますか?」
返ってくる答えは実にさまざまです。
- 「仕事ばかりじゃなくて、もっと家族との時間を大切にすればよかった」
- 「好きな趣味を思い切り楽しんでおけばよかった」
- 「体が動くうちに海外にもっと行っておけばよかった」
人生のどこかでふと振り返ったときに湧き上がる“後悔”や“願い”は、人それぞれ。
でも、どの言葉にも“その人らしい人生の重み”が宿っています。
そのなかでも、多くの人が口にする言葉はこれです。
「歯を大切にしておけば良かった。」
これは本当に、多くの方が口にされる後悔です。
歯というのは、失って初めてその重要性に気づくものかもしれません。
噛む力が落ちると食事が制限されますし、食べたいものが食べられなくなるのは、生活の楽しみが大きく一つ奪われることを意味します。

■ 噛む力と全身機能の関係
ここから、理学療法士として感じる“噛む力の重要性”について少し触れてみたいと思います。
僕は理学療法士ですから。
噛むという動作は、単に「食べ物を砕く」だけの行為ではありません。実は、全身機能と密接につながっています。
① 噛む力が弱いと、栄養状態が低下しやすい
硬いものが食べられなくなると、どうしても柔らかい食事に偏り、たんぱく質や食物繊維が不足しがちになります。
結果として筋肉量の低下(サルコペニア)や体力の低下につながり、歩行能力にも影響が出ます。
② 噛む刺激は、脳の活性化につながる
咀嚼によって脳の血流が増え、注意力・記憶力などの維持に関係すると言われています。
患者さんでも「噛めなくなった頃から元気がなくなった」と感じる方が意外と多いです。
③ 噛む力と姿勢・バランス
咀嚼に使う筋肉は、頭部の安定や姿勢保持にも関係します。
噛む力が低下した方の中には、首や体幹の安定性が落ち、転倒リスクが高くなるケースもあります。
実際、咬合力の低下と歩行速度低下・握力低下には関連があるという研究もあります。
④ 口腔機能の低下は「フレイル」の入口
歯の喪失や噛む力の低下、飲み込みに関する問題は、総称して「オーラルフレイル」と呼ばれ、全身のフレイルを進める要因になります。
つまり口の健康は“全身の健康の指標”でもあるのです。
噛む力が弱まるということは、ただ食事が不便になるだけでなく、
「全身の老いを早める可能性がある」
ということを、患者さんを通じて実感しています。
だからこそ
「歯を大切にしておけば良かった」
という言葉には、深くうなずいてしまうのです。

◼️ おわりに
患者さんの歩んできた人生から学べることは、本当に尽きません。
僕たちは身体機能の専門職ではありますが、患者さんの言葉から学ぶ“人生のヒント”のようなものも、日々の臨床の中で確かに受け取っています。
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