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排痰手技の考え方― スクイージングから呼吸介助へ ―
僕が理学療法士になった頃は呼吸・排痰と言えば、イコール「スクイージング」でした。
著名な先生の講習会にも幾度も参加したし、彼の華麗なテクニックに参加者は皆『ほほ〜っ』と歓喜を上げていました。(今では懐かしい思い出!)
その流れは収まりましたが、スクイージングという言葉は僕がいる田舎の病院では今でも当たり前に使われています。
看護師さんも“呼吸リハ=スクイージング“と思っている方も少なからずいるようです。
そこで今回は排痰手技について、改めて考えてみたいと思います。
◼️ 排痰手技は「痰を出す技術」ではありません
排痰手技というと、
「痰を押し出す」
「強く圧迫する」
といったイメージを持たれることが多いと思います。
しかし実際の排痰は、
呼吸の流れを整え、その結果として痰が動く現象
と捉えたほうが、臨床ではうまくいきます。
手技そのものが主役なのではなく、呼吸・胸郭運動・姿勢が主役です。
◼️ スクイージングが主流だった時代
一時期、排痰手技といえば
スクイージング(呼気時の胸郭圧迫)が広く使われていました。
スクイージングには、
•呼気流速を高めやすい
•咳嗽が弱い患者さんでも痰を動かしやすい
•急性期やICUで再現性が高い
といった利点があります。
そのため現在でも、急性期・人工呼吸器管理・意識障害がある症例では、有効な場面があります。
◼️ 見えてきたスクイージングの課題
一方で、臨床経験が積み重なる中で、
いくつかの課題も明らかになってきました。

・吸気が入りにくくなる
強い呼気圧迫を繰り返すと、
次の吸気が浅くなり、換気量が低下することがあります。
・胸郭の自然な動きが失われる
胸郭には、本来
「広がって、自然に戻る」
という弾性の動きがあります。
過度な介助は、この自然なリコイルを妨げてしまいます。
・呼吸が苦しくなる
患者さんの呼吸リズムと介助が合わないと、
呼吸困難感や疲労感が強くなることもあります。
◼️ 最近主流になってきた考え方
近年は、スクイージング一辺倒ではなく、
•肋骨の生理的な動きを引き出す
•吸気をしっかり確保する
•呼気は胸郭の自然な戻りを活かす
といった呼吸介助中心のアプローチが主流になってきています。
「痰を動かそう」とするよりも、「呼吸を整えた結果、痰が動く」
という考え方です。

◼️ 排痰手技を目的別に整理すると分かりやすい
排痰手技は、段階ごとに考えると整理しやすくなります。

① 換気を整える(準備段階)
•胸郭モビライゼーション
•肋骨の動きを意識した呼吸介助
•体位ドレナージによる重力の利用
まずは、痰が動けるだけの換気とスペースを作ります。
② 痰を動かす(動員段階)
•呼気相に合わせた軽い介助
•胸郭の戻りを邪魔しない接触圧
•ハフィングや呼気延長の誘導
この段階では、強く押さないことがポイントです。
③ 排出を助ける(仕上げ)
•咳嗽介助
•必要に応じた短時間のスクイージング
•排痰補助機器の併用
スクイージングは、最後の一押しとして使う位置づけになります。
◼️ スクイージングは「使わない」のではありません
誤解されやすい点ですが、
スクイージングが「悪い」わけではありません。
•自発呼吸が弱い
•意識障害がある
•急性期で痰が多い
こうした場面では、今も重要な手技です。
ただし、
呼吸を作らずに、いきなり絞る排痰は、すk慢性期や高齢者では逆効果になることがあります。
◼️ 排痰手技の本質
排痰手技で大切なのは、
❌ どれだけ強く押したか
⭕ 呼吸が楽になったか
という視点です。
呼吸が整えば、痰は自然に動き、患者さん自身の咳へとつながります。

◼️ おわりに
排痰手技は、
「効かせる技術」から「呼吸を支える技術」へと変わってきています。
スクイージングは主役ではなく、呼吸介助という舞台の中の一つの手段です。
呼吸を邪魔しないこと。
それが、これからの排痰リハビリで最も大切な視点だと感じています。
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