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多発性硬化症とは
多発性硬化症とは、中枢神経系の脱髄疾患の1つです。
病巣は脳、脊髄、視神経に出現するので、障害はその出現部分により様々です。
例えば、脊髄が傷害されると四肢の麻痺、しびれ、排尿障害、排便傷害のように脊損と類似した障害が、
大脳の病変では、脳卒中のように運動障害、感覚障害、高次脳機能障害が生じます。
また小脳の病変では、協調性の障害やバランス障害が出現します。
多発性硬化症の特異的なのは、視覚障害です。
これは視神経の障害によって起こります。中には失明する方もいらっしゃいます。
この他の特徴としては、進行の経過にいろいろな型があるということです。
この型を把握することもリハビリを行う上で大切です。
リハビリは?
一般的に急性期では治療は薬物療法中心になり、積極的なリハビリは行なわないことが多いです。
しかし長期間の臥床による身体機能の低下は避けなければなりません。
日々身体状態をチェックしながら、状態・適応を医師に確認してもらい、リハビリを始めましょう。
リハビリを行う上での注意点
多発性硬化症は気温や体温の上昇で症状の悪化をもたらすことがあります。
従ってリハビリの時は、エアコンを使い室内温度に気をつけましょう。
また過度な負荷は禁忌です。疲労感に注意です。(ウートフ徴候:体温が上がると症状が悪化する状態のこと)
ストレスもダメみたいです。
多発性硬化症のリハビリテーション
「これだけやれば良い」というものは存在しません。
先に述べたように多発性硬化症は傷害された部分によって症状が幅広く、人それぞれ必要とされることも異なると思います。
ただ基本的なことは、柔軟性を維持すること、筋力の維持、協調性の維持、歩行能力の維持、呼吸機能の維持です。
これらを自主トレーニングに落とし込んで、日常的に行うことが大切です。
これを保ちながらADL(日常生活動作)を維持することになるのではないでしょうか。
僕は自宅でトレーニングや自己管理をしっかりやって、ADLを保っていらっしゃる方をたくさん知っています。
以下、それぞれを簡単に説明しておきますね。
・柔軟性を維持すること(関節可動域訓練)
痙縮が出現している場合は、関節可動域制限が生じることがあります。特に下腿三頭筋の伸張性低下により足関節背屈制限が生じることがあるので、定期的なチェックやストレッチを行いましょう。
・筋力の維持(筋力維持・増強訓練)
活動性の低下に伴って、筋力が低下することがあります。
自宅で簡単に行なえる筋力増強訓練を行いましょう。
例えばハーフスクワットなどです。
エルゴメーターなどを使用するのも良いでしょう。負荷量を目で確認できるので、過負荷を予防できます。
・バランス能力の維持(バランス訓練)
四つ這いで上下肢の挙上訓練や片脚立位訓練、継ぎ足歩行訓練など、その方のバランス能力に合わせて選択してください。
重心が高くなると転倒した時のダメージが大きくなるから、自主トレの時は安全にやれるものを選択してください。(立位バランス練習など、高度なバランス練習はリハの時にやってくださいね。)
継足歩行練習はかなり高度な練習です。
・歩行能力の維持
麻痺などの影響で活動範囲が制限されて、歩行能力が低下します。
疲労や体体温上昇を考慮して、運動負荷を調整しながら運動しましょう。
・感覚の低下に対する対応
多発性硬化症の患者さんは位置覚などな固有感覚が障害されることもあります。
その場合は位置感覚のトレーニングを行うことも有用かもしれしれません。
詳しくは別に記しますね。(↓)
以下に固有感覚のトレーニングの例をいくつか載せておきますね。
位置感覚のトレーニングの例(下肢)
まずは、屈曲方向の運動の1例から。
椅子に座り、
床に何か目的物(コインでも何でも良い)を置きます。
そして距離を眼で確認。
眼を閉じて、足を動かして、目的物に到達していたらOK。
もし離れていたら、もう1回やってみます。
もう1例あげておきます。(外側)
眼を閉じて、足を動かして、目的物に到達していたらOK。
もし離れていたら、もう1回やってみます。
位置感覚のトレーニングの例(上肢)
上肢も、やり方は同じです。
手をテーブルの上に乗せます。
片方の手を前方の動かします。
そして、眼で確認。
眼を閉じて、同じ距離かな‥と思うところまで動かします。
同じ距離であればOK。
届かなかったり、行きすぎていたらやり直します。
目的物を使用して、前後左右方向で行っても良いですね。(イラストは前後のみ)
繰り返しますが、多発性硬化症の症状は様々です。
必要な内容も皆さん違いますので、医師やセラピストに相談してみてください。
彼らが評価を行ってくれて、適切なプログラムを組んでくれるでしょう。
ありがとうございました。
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