高次脳機能障害を脳の構造から理解するために

高次脳機能障害を脳の構造から理解するために

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僕が高次脳機能障害の当事者になって

2022年に脳炎、脳出血に罹患して、高次脳機能障害になりました。

発症当時は、自分に何が起こったのか理解できなかったのですが、時間が経つにつれて、徐々に理解をしてきました。

2度目の発症の時は声掛けをされても反応が乏しかったのですが、そのうちに言葉が出ないものの、理解は少しできるようになり、一部指示に従えるようになりました。

リハビリも始まり、その中で簡単な作業をやるようになったのですが、数字を順番になぞる課題さえろくに出来ないことが判明しました。

自分では発症前とそれほど変わっていないと考えていたので、そのことにはショックを受けましたが、それでも自分の状態を少しでも理解しようという気持ちが湧いてきました。

退院後「そう言えば昔研修会で習ったことがあるなあ」と、ノートを取り出し、神経心理ピラミッドを学習したことを思い出しました。(セラピスト時代は時はそんな高次脳機能についてそれほど詳しく考えたことはなくて、STさん、OTさん任せでした。恥ずかしながら・・。)

自分がこのピラミッドの構造うち、どの機能が障害されているのかどの段階に居るのかを考えて、「あ〜、自分は高次脳機能障害なんだ」と改めた自覚をしたのです。

 

脳の階層性(神経心理ピラミッド)とは

神経心理ピラミッドとは、僕が以前に研修会で習った脳の機能を構造的に表したものです。(立神粧子、2006)

以下に簡単に説明を加えてみますね。

私たちが生きるために必要な脳の機能は、大きく下図のようになっています。

動物が生きるために必要な機能、たとえば意識や覚醒などは下の層に位置付けられています(基礎レベル)。

それに対して、人間がより良く生きるために必要な高次の機能、たとえば記憶遂行機能言語などは上の層に位置付けられています(高次レベル)。

生命の維持に必要なものは下層で、それがあってはじめて高次の機能が働くことができます

だからリハビリの評価では、まず意識の評価をするんですね。

そもそも覚醒が悪い患者だと、上位の評価の信憑性が損なわれますから(最初から高次脳機能を評価しようとして怒られる新人STを見たことがあります)。

下の基礎レベルの機能は予備能力が低く、一度損傷を受けたら回復が難しく、上の高次レベルの機能は、余裕がありリハビリテーションの効果が高く、回復がしやすいと言われています。

診療報酬改定で工事機能機能障害患者のリハビリテーションの算定期間が長いのも、そうした理由に基づいているのですね。

 

脳の階層性の各論

まずは下層から説明します。

意識・覚醒

意識とは、感覚刺激を認知できること、感覚刺激に対して反応できることです。

意識生命、精神活動の土台になるものです。まずここがしっかり働かないと、その上に進めません。

意識が保たれているかを評価するには、覚醒・睡眠サイクルの変遷反応の緩慢さ、反応量などを診ます。

 

感情

脳が障害されると、喜怒哀楽の感情が減少します。

意欲や発動性も低下します。主体性が必要な場面ではかなり問題になります。

逆に、固執、衝動、易怒など感情が抑制できなくなることがあります。これを脱抑制と言います。

要するに我慢できない状態です。時に暴言や暴力を振るったり、攻撃的になることもあります。

 

 

注意

注意とは「何かに気づく能力」です。

一般に、注意は次の4つがあります。

「選択的注意」「持続的注意」「注意の配分」「注意の転換」です。

 

選択的注意は「周囲の多種多様な情報の中から1つを選んで、そこに意識を向けさせること」です。イラストでは常に周囲をキョロキョロしている様子を描いてみました。

持続的注意は、文字通りです。一定時間、対象物に意識の集中を持続させることです。

注意の配分は、同時に2つ以上の物事を行う時に、バランスよく、注意を向けることです。

注意の転換とは、より重要な情報に注意を切り替えることです。日常生活ではたくさんの情報が次々に入ってくるので、その都度注意を切り替えることが必要です。

 

 

情報処理

情報を速度や効率性を考えて処理することです。(これに関してはノートを見てもあまり記載がなかったので、端折ります。)

 

 

記憶

記憶のプロセスには①記銘(覚えること)→②保持(忘れないこと)→③想起(思い出すこと)があります。

脳が障害されて記憶が問題となった場合には、このうちどこが障害されているのか明確にする必要があります(明確にできない場合もあるでしょうが‥)。

 

遂行

物事を立案してやり遂げる動作には、次のような一連の過程です。

意欲→プランニング→個々の効率的な実行→工程のモニタリング→想定外の事態に対する行動修正です。

それらの要素のを総括する高次脳機能が遂行機能です。

たとえばイラストに描かれているように、カレーライスを料理をする過程を考えてみると、

①メニューを考える

②必要な材料(カレー粉、野菜、肉など)を購入する

③手順を効率に遂行する(鍋に湯を沸かしながら、野菜を切るなど)

④体裁よく、器に盛り付ける

このような過程を効率的に行う機能が遂行機能です。

今回は料理を例に取りましたが、全ての日常動作にはこのような遂行機能が必要になっており、この障害は大きな問題になります。

 

気づき

気づきにはいくつかのものがありますが、自分の障害をしっかり認識できて、それを体験として結びつけることです。

また、問題が起こった時にどのような対応するかまで、予想的に対応することです。

一度失敗しても、その経験から結果を予測でき、失敗を繰り返さないことです。

 

 

OTさん、STさん、心理士さんにとっては当たり前でしょうが、一般の人にとってはなかなか難しい分野ですね。

参考になったら、幸いです。

ありがとうございました。

 

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