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今回は趣を変えて、腹臥位療法のことについて、イラストを交えてご紹介します。
随分前にHCUの看護師さんから、腹臥位のポジショニングについて講師をやってほしいと頼まれたことがありました。
うちのHCUの看護師さんは皆んな優秀で、僕がお伝えすることなど何一つないのですが、
「ポジショニングはリハビリ」という考え(違うと思うけど)をお持ちのようだったので、とりあえず快諾しました。
今回はその時の資料を使って、簡単に説明しますね。
では参りましょう。
まずは腹臥位療法とはという定義から。
腹臥位療法とは?
日本救急医学会の定義では、
「急性期呼吸不全に対する治療法のひとつで、腹臥位で人工呼吸療法を行うこと。」
「肺水腫、肺炎、ARDSなどで、障害部位が背側に限局して分布する、いわゆる背側肺障害を有する場合に有効」とされています。
腹臥位療法の対象
新型コロナ感染によるARDS(急性呼吸窮迫症候群)で大きく取り上げられたように、重症の急性呼吸不全が対象です。
ですが、腹臥位療法自体は、以前から重症障害児者や神経難病など呼吸・排痰に問題を抱えた患者にも適応されています。
腹臥位療法の効果
同じく日本救急医学会の定義では、腹臥位療法の効果についてこう述べています。
「肺側障害肺に多く分布した血流が健常肺へ再分配され、換気血流比が改善します。またクロージング・ボリュームの減少、横隔膜運動の変化、心臓により圧排される左下葉換気の改善、体位ドレナージによる気道分泌物の排出の改善」
などが挙げられています。
同じことを繰り返し少しわかりやすく言うと、こんなことです。
・背臥位では腹側に換気が集中するため、胸郭の動きが少ない背側で換気が減少してしまう。
・背臥位では肺胞の血流量は換気の少ない背側に集中するため、換気は悪化してしまう。
→腹臥位では血流が腹側に移動することで、酸素化は向上する。
・背臥位では心臓など臓器の重さにより左下葉(背側肺底部)に無気肺が生じてしまう。
→腹臥位では無気肺が生じていた部分の圧迫が改善する。無気肺は消失、減少する。
実施方法
1人ではできません。数人で行い事故を予防しましょう。ここでは詳しく説明しません。別の記事をご参照ください。
腹臥位は別記事を参考(→こちら)
半腹臥位は別記事を参考(→こちら)
やり易さや抜管などのリスクを考えると後者が推奨されます。
実施時間
実施時間は米国集中治療医学会ガイドラインでは、1日あたり12〜16時間とされています。
ただし腹臥位療法と言っても、目的によって異なるで、用途によって使いわけましょう。
腹臥位療法の注意点
・痰の多い方は、腹臥位になる前後に、吸引をしましょう。
・意思表示をできない患者は、窒息の危険があるため、腹臥位施行中は、側に付きそうようにしましょう。
・嘔吐の危険もあるため、食後は避けましょう。
お付き合い、ありがとうございました。
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