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フレンケル体操とは?
〜「正確に動かす」ことを練習する協調運動〜
今回は、運動の協調性を高めるために用いられてきたフレンケル体操(Frenkel exercises)について紹介します。
フレンケル体操にはたくさんの運動があります。
全部を紹介すると大変なので、今回はその中から臥位で行う基本的な運動をいくつか取り上げます。
「リハビリではこんなこともやっているんだ」
くらいに知っていただければ十分です。

フレンケル体操は筋トレではありません
例えば、仰向けになって膝を曲げたり伸ばしたりする。
動きだけを見ると、とても簡単な運動に見えます。
でも、フレンケル体操で大切なのは、
何回できたか。
どれだけ力を入れたか。
だけではありません。
「自分の脚が今どこにあるのか」を目で確認しながら、注意を向けて、狙ったところへできるだけ正確に動かします。
つまり、単純な筋力トレーニングというより、運動を正確にコントロールする練習です。

なぜ「見る」のでしょうか?
私たちは普段、いちいち足を見なくても、
「膝がどのくらい曲がっている」
「足がどこにある」
と、ある程度分かります。
筋肉や腱、関節などから入ってくる感覚情報が、その判断に関係しています。
ところが、深部感覚・固有感覚が障害されると、目を閉じた途端に脚の位置が分かりにくくなることがあります。
そこでフレンケル体操では、視覚を利用して動きを確認しながら、正確な運動を繰り返すという方法をとります。
ですから「見る」ということは、単なる初心者向けの補助ではありません。
フレンケル体操の考え方そのものに関係しています。

どんな失調に使われるのでしょうか?
フレンケル体操は、歴史的には特に感覚性失調に対する運動療法として知られています。
一方、失調にはさまざまな原因があります。
小脳の障害による失調と、深部感覚の障害による感覚性失調では、同じように「動きがぎこちない」と見えても、その仕組みは同じではありません。
小脳性失調についても、協調運動、バランス、歩行、筋力などを組み合わせたリハビリによって、失調症状やバランスが改善する可能性が示されています。
ただし研究にはばらつきがあり、「この体操なら必ず改善する」とまでは言えません。
ですから、
「感覚性失調=フレンケル体操、小脳性失調=何をしても効かない」
と単純に分けるのではなく、失調の原因や症状、その人の能力に応じて練習を選ぶことが大切です。
フレンケル体操の実際
フレンケル体操には、臥位、座位、立位、歩行など、さまざまな姿勢で行う方法があります。
今回は、ベッド上で上半身を少し起こした姿勢で行う運動を紹介します。
上半身を起こすことで、自分の脚の動きを目で確認しやすくなります。

① 膝の曲げ伸ばし
片脚の膝をゆっくり曲げます。
そして、再び伸ばします。
ポイントは、ただ何度も曲げ伸ばしすることではありません。
脚の動きを見ながら、一定の軌道をできるだけ正確に動かすこと。
速さを競う必要もありません。
まずは「狙ったように動かせる」ことを大切にします。
イラストで解説

膝を曲げて、

伸ばします。

これを繰り返します。

② 反対側のすねに沿って踵を滑らせる
片側の踵を、反対側の足首付近に置きます。
そこから踵をすねに沿わせるようにして、膝の方向へゆっくり滑らせます。
そして、再び足首の方向へ戻します。
踵がすねから大きく外れないように、動きを目で確認します。
これは筋力をつけること以上に、「踵をどこへ運ぶのか」を調整することが課題になります。
イラストで解説
片側の踵を対側の足首に乗せます。
踵を脛に沿って、膝まで滑らせます。(膝蓋骨でピタッと止める)

再び脛に沿って、足首まで伸ばします。

これを繰り返します。
③ 踵を膝へ運ぶ
片側の脚を動かし、踵を反対側の膝へ運びます。
一度離して、もう一度同じ場所を目標に踵を運びます。
「ごつん」と強くぶつける必要はありません。
大切なのは、
毎回できるだけ同じ場所へ、コントロールして運べるか。
というところです。
イラストで解説
片側の踵を、対側の膝の上に乗せます。
膝を伸ばして、一旦踵を膝から離します。

再び、踵で膝に接触させます。(ごつんと強く打ちつけないように)

これを繰り返します。
④ 脚を横へ開いて戻す
片脚をゆっくり横へ開きます。
そして、元の位置へ戻します。
この運動でも、ただ大きく開くことを目標にするのではなく、決めた軌道をできるだけ滑らかに動かすことを意識します。
イラストで解説

片側の股関節を外転させて、脚を開きます。

ゆっくりと股関節を内転させて、もとに戻します。

これを繰り返します。
同じようなことを座位、立位でも行います。(機会があれば、またご紹介したいと思います。)
「できるだけ難しく」が正解ではありません
協調運動の練習というと、
「もっと難しくした方が効果があるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、難しすぎて、
脚が大きく外れる。
何度やっても目標へ届かない。
力任せになってしまう。
疲れてますます動きが乱れる。
という状態で、ただ反復回数を増やせばよいわけではありません。
少し注意すれば正確にできる。
まずは、そのくらいの課題から始めます。
できるようになったら、動く距離を変える、速さを調整する、姿勢を変えるなど、少しずつ課題を発展させていきます。

臥位から座位へ。
座位から立位へ。
そして実際の歩行や生活動作へ。
運動の難易度を、その人に合わせて調整することが重要です。
現在の失調に対するリハビリでも、個々の状態に合わせた協調・バランス・歩行練習などを組み合わせることが重視されています。
「目を閉じてできる」が最終目標とは限りません
感覚障害が残っている人にとって、視覚は身体の位置を知るための大切な代償手段になることがあります。
ですから、必ずしも「目を見ないでできること」がゴールとは限りません。
その人の障害や目的によっては、視覚を上手に利用して安全に動けるようになること自体が重要です。
リハビリでは、「視覚を使わないこと」にこだわるのではなく、
何のためにこの練習をしているのか。
それが実際の生活にどうつながるのか。
まで考える必要があります。
まとめ
フレンケル体操というと、昔からある決まった運動を何度も繰り返す方法、という印象があるかもしれません。
でも、その本質を考えると大切なのは運動の種類そのものではありません。
見る。
注意を向ける。
狙ったところへ動かす。
結果を確認する。
そして、もう一度調整する。
そうやって「動きを正確にコントロールする」ことを練習します。
たくさんやればよいわけでも、難しいことをやればよいわけでもありません。
その人が少し頑張れば正確にできる課題を選ぶ。
昔からあるフレンケル体操ですが、この考え方は現在のリハビリを考えるうえでも参考になる部分があると思います。
ありがとうございます。
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