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ポジショニングには、その目的によって多様にあります。
褥瘡予防、誤嚥予防、換気改善、排痰等、その目的に応じてポイントも異なります。
今回ご紹介するものは、換気血流比の不均衡からくる酸素化不良を改善するポジショニングです。
換気血流比不均衡とは
では最初に、換気血流比不均衡とはどういう状態を指すのでしょうか。
簡単に説明しますね。
肺胞の各領域で、肺胞換気量(V)と肺毛細血管血流(Q)のバランスが悪い状態のこと。
換気量と血流の不均衡、VQミスマッチとも言います。
その比率がうまく合わないことで、ガス交換効率が低下した状態となります。
もう少し具体的に見てみましょう。
自分で呼吸できている場合と人工呼吸器で陽圧管理となっている場合で異なるので、分けて考えてみますね。
【自発呼吸の場合】
下側の肺は、重力により血流は増加します。
自発呼吸では横隔膜の動きが背側で大きくなるため、換気は背側の方が優位に行われています。
もちろん重力の影響は腹腔内臓器は背側に移動し、下側の肺容量の減少を招いてしまうという側面もありますが、
それでも総じて血流も豊富、換気量も豊富ということで換気血流比不均衡は起きづらくなっています。
一方、上側の肺は重力の影響で血流は少なくなりますが、逆に換気も同じように少なくなるため(換気の15%)、
ミスマッチは起きず、ある意味効率的な換気が行えていると言えます。
【人工呼吸器による陽圧管理】
人工呼吸器管理中は、吸気時は上側(前胸部)の肺で換気されますが、下側の肺での換気は非常に弱くなります。
よって上側の肺の換気量は大きくなりますが、重力の関係で血流量は少ないため、十分なガス交換ができません。
下側の肺では、血流は十分にあるものの、換気量が少ないため、こちらも十分なガス交換ができません。
また下側は気道分泌物の貯留により、気道クリアランスが低下しがちなので、更に換気量が少なくなって、ミスマッチに拍車をかけます。
このように人工呼吸器管理中の患者は換気血流比不均衡が起きやすいと言えるのです。
換気血流比不均衡を改善するには…
こんな活気血流比不均衡を改善するために手っ取り早いのが、ポジショニングです!!
お察しの通り、腹臥位(または前傾側臥位)です!!!
背臥位で下側(背側側)だった肺は臓器の圧迫により潰れがち(無気肺が起こりやすい)でしたが、これが上側になることで拡張が期待できます。
気道内分泌物の移動も促され、背側の肺も拡張されやすくなるのです。
背臥位で上側(腹側)だった肺には、下側になることで血流がどくどく流れ込み、ガス交換が効率的に行えるようになります。
その結果、酸素化が改善し、SpO2の値も上昇しやすくなります。
このように腹臥位になるメリットは、換気と血流の関係からみても十分にあるのですね。
側臥位の場合も同様?
今回は背臥位と腹臥位の関係性から説明をしましたが、側臥位で左右のポジショニングでも同じことが言えます。
例えば右肺に無気肺があったときを考えてみましょう。
右肺を下にすると、血流が豊富でも換気できないため不均衡が起きます。
そこで、右肺を上側にして肺の拡張を促し、下側になる左肺でガス交換を行うのです。
右肺の無気肺も臓器の圧迫から解放され、また分泌物の移動が促進されることから拡張しやすくなります。
随分簡略化してしまいましたが、ご理解いただけましたでしょうか?
実際はこんなに単純にうまくいくことは少ないですが、基本はこんなところだと思います。
もう少し詳しく知りたい方は、成書をお読みくださいませ。(僕も機会があればもう少し詳しいところを書いてみたいと思います。)
ありがとうございました。
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