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リハビリの場面で、患者や利用者ができない動作を繰り返し練習することは、よく見られる光景です。
動作を繰り返し行うことが、その動作を獲得する最短方法だと言われていますが、
実際はどうなのでしょうか。
正確な動作を獲得するまでに、一般的には数万回〜数十万回必要と言われています。
そういった研究も、過去にいくつか行われています。
しかもオリンピックの選手並みの正確性を獲得するためには、もっと反復練習が必要に違いありません。
これに対して、リハビリの時間はわずかです。
その中で最大限行える回数も限られています。
リハビリでの、たかだか数十回の運動が効果的だとは思えませんよね。
もちろん、動作の正確さ、スピード、タイミング、可動域、強度、方向など、一つ一つ確かめながら行うことに意味はあります。
しかし定着というところまで、なかなか辿り着かないでしょう。
リハビリ以外の時間が大切
患者さんは、リハビリ以外の時間も動いています。
トイレなどの日常生活動作は、否応なくやらなければなりません。
むしろリハビリ以外の方が圧倒的に長い。
リハビリで習ったやり方を思い出しながら、看護師さんや介助員さんの助けを借りて、患者さんは日常動作を繰り返します。
でもここで落とし穴もあります。
患者さんは自分のやりやすい代償動作を含めたやり方を、学んでいきます。
代償動作の習得は、あっという間です。
患者さんにとって残された機能を使うわけですからね。
とにかく動作ができることが大事なんです。
セラピストとしては悩ましいところです。
僕自身の経験から
今まで何度も書いたことがありますが、僕は以前に耳の病気が原因で平衡感覚を失いました。
しばらくはまっすぐ歩けず、杖を持って歩いていたこともありました。
ようやく自信を持って歩けるようになったのは、発症してから1年経った後でした。
これは身体の機能が1年で回復したというわけでなく、
視覚や足底感覚を総動員させながら代償動作を獲得できたのに、1年かかったということです。
今でも機能は全く回復していません。
なぜなら今でも目を閉じれば、フラフラして真っ直ぐ歩けませんから。
耳の前庭機能が良くなったわけでは無さそうです。
こうした経験を踏まえると、成人になって障害を受けると、代償動作にもかなりの時間が必要だと改めて思われます。
(小児の場合は発達という要素が加わるので話は違います)
最初に書いたように、リハビリの限られた時間で何ができるだろうと気弱にもなりますが、
視点を変えて、リハビリ以外の時間をどのように過ごしていただけるかを考えていく必要性を強く感じます。
セラピストから看護師さん、介助員さんにポイントを伝えて、
日常生活の動作を共通の方法で指導できる体制作りが大切だと思います。
ありがとうございました。
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