インドで野良犬に噛まれた経験から、考えたこと

 

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以前にも書きましたが、僕は若いころインドでボランティア生活を送っていました。

当時円高で豊かな国、日本から来て、しかも数年という短い期間で

何ができるってわけではなかったのですが、

できるだけ、現地のものを食べて、現地の人と同じような服を着て、同じように振る舞いたいと思っていました。

僕が関わる人たちは、路上で生活を送る、いわゆる底辺の人たちでしたから、

できるだけ彼らと共に生活をしようと試みていました。

 

ですが、ある出来事で、それはかなり不遜な考え方だったことに気付かされました。

若かったとはいえ、今思えばかなり恥ずかしい考えで、

穴があったら、入りたくなるような話です。

 

ある日、僕は仕事を終えて街をブラブラと歩いていました。

そのとき突然ふくらはぎに鈍い痛みを感じ、

振り返ると、痩せこけた大柄の犬が僕のふくらはぎをパックリ噛みついていたのです。

何が起きたのか一瞬分からず固まってしまいましたが、

とりあえず犬を追い払い、近くの水飲み場まで早足で歩き、

大量の水で傷口を洗い流しました。

インドの野良犬の狂犬病に罹患している確率はかなり高く、年間2万人が狂犬病で命を落としています。

狂犬病を発症したら、死亡率100パーセント。

水を求めて苦しんで最後には亡くなってしまう…ってことが頭をぐるぐると回ります。

とりあえず、病院に行かなければと、

市内でも比較的設備が整っていると言われるキリスト教系の病院に行きました。

診察をしてもらい、血清を一定期間打つことになったものの、

インドの医療システムの関係でその場で打ってくれるわけでもなく、(病院に薬局はなかった)

薬剤は自分で薬局で買わなければなりませんでした。

ヨタヨタしながら薬局と病院を往復し、

大枚をはたいて買った血清を注射して、

ひとまず安心しました。

発症してしまったら仕方ないけど、とりあえずやれることはやったと。

後数回血清を打つ必要がありましたが、現時点では他にやれることはありませんでした。

 

でも、その後に、今度はどんよりした気持ちが襲ってきました。

もし僕がインドに生まれ底辺の生活をしていたら、どうなっていただろう。

薬も買えず、何もできなかったのかと。

インドでは診察料は無料でも薬は有料です。

日本では貧乏と言える生活をしていた僕でも、国を超えると物価の差で急にお金持ちになります。

たまたま日本に生まれただけで恩恵をこうむれたけど、そうでなければもうここにはいなかったかもしれません。

インドの底辺の人々と同じ生活を表面上はしているものの、

腹巻の中には大金のトラベラーズチェックを忍ばせている。

なんとも恥知らずな態度でしょう。

「若さゆえの行動」では片付けられない、恥ずかしい体験でした。

 

その後狂犬病の発症するという不安を抱えながら過ごしましたが、

幸い発症するということはありませんでした。

 

僕は悶々とした気持ちを抱えたまま、何ヶ月を過ごし、帰国しました。

帰宅したら猿岩石が世界放浪とか、そういった番組が人気となっていました。

いわゆるバックパッカーものです。

「貧乏旅行」なんて言葉も流行りました。(何が貧乏だよ、って感じですが。)

僕はそんな現象をどことなく冷めた目でしか見ることはできませんでした。

その時の僕と同じようないやらしさを感じるからです。

 

過去を振り返って、自分の行ったことを100パーセント否定する気持ちはありませんが、

失礼な態度であったことは間違いありません。

かといって、どういう態度であったら良かったのか、もわかりません。

もし、今後またインドに関わることができるのであれば、

もう一度深く考えて行動したいと思います。

 

※インドの医療に関しては、当時カルカッタの一病院の情報をもとに書いています。

 

 

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