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脳性麻痺児に多い“尖足歩行”とは?
〜原因と改善アプローチをわかりやすく解説〜
脳性麻痺のお子さんをみていると、歩行時に つま先だけで歩く“尖足歩行” がよく見られます。
かかとが床につかないため、転びやすい・疲れやすいなどの問題が起こりやすく、放置しておくと足部の変形や関節痛につながることもあります。
今回は、尖足歩行が なぜ起こるのか、そして どんなリハビリや装具が有効なのか を、できるだけわかりやすく整理していきます。
1.尖足歩行とは?
尖足歩行とは「かかとが地面につかず、いつもつま先立ちで歩く状態」を指します。
片側だけのこともあれば、両側が尖足になることもあります。
尖足にはいくつかのタイプがあり、原因や改善アプローチも子どもによって異なります。
そのため、まずはなぜ尖足になっているのかを見極めることが大切です。

2.尖足歩行が起こる理由
① ふくらはぎの筋(下腿三頭筋)の“痙縮”
脳性麻痺では、神経の障害によって筋肉が過敏に反応しやすくなります。
とくに 腓腹筋・ヒラメ筋が緊張しやすい ため、足首を背屈させようとすると反射的にギュッと縮んでしまい、かかとがつきません。
歩くときには本来、
かかと → 足の裏 → つま先
と体重が移動しますが、痙縮があるとこの動きが阻害され、つま先から接地する歩き方 になります。
② 筋・腱の短縮(拘縮)
痙縮が長期間つづくと、ふくらはぎの筋やアキレス腱が実際に短くなってしまいます。
この状態になると、
- ベッド上でも足首が背屈しない
- 立たせようとしても物理的にかかとが床に届かない
といった“構造的な”尖足へ移行します。

③ 股・膝の姿勢不良の影響(jump gaitなど)
脳性麻痺では足首だけでなく、
- ハムストリングスの緊張 → 膝の屈曲
- 股関節屈筋の緊張 → 股の屈曲・内転
が同時に見られることが多いです。
すると結果的に、
股と膝が曲がった姿勢を代償するためにつま先立ちになり、尖足が強調されることがあります。
身体は繋がっていますから、それぞれの要因が複合的に影響するのですね。
④ バランス能力の未熟さ・不安定さ
お子さんによっては、かかとを床につけると“倒れそう”に感じるため、自分なりに安定しやすいつま先立ちを選んでしまうことがあります。
つま先立ちは支持基底面が小さく不利な姿勢ですが、感覚が弱かったり姿勢制御が苦手だったりする場合、本人にとっては「安定しているように感じる」姿勢なのです。
一般の人にすれば危なそうに見えることでも、彼らにとってはそれがある意味戦力的なのかもしれません。
ただそれが長期的に見ると良いわけではないですけど。
⑤ 足部の変形(尖足内反など)
長期の尖足により、足部のアライメントが崩れて、
- 尖足内反足
- 前足部の内転
- 土踏まずの変形
などの二次変形が生じることがあります。
この段階になると、リハビリだけでの改善が難しく、装具や手術治療 の検討が必要になることもあります。
3.尖足歩行がもたらす問題
- 転倒しやすい
- 疲れやすい
- 足部や膝の痛み
- 変形が進む
- 成人期に歩行距離が低下する
特に、変形や拘縮が進むと改善が難しくなるため、早期からの介入が非常に重要 です。
4.尖足歩行の評価ポイント(PT視点)
・足関節の可動域
膝を伸ばした状態・曲げた状態のどちらで背屈が出にくいかで、原因(腓腹筋 or ヒラメ筋 or 関節包)が分かれます。
・ 痙縮の程度
MASやTardieuスケールで評価します。
・ 筋力・選択的運動
前脛骨筋(背屈筋)が働けているか、足を単独で動かせるか。
・立位・歩行分析
本当の尖足なのか、股膝の代償なのか、crouch gaitへの移行なのかを見極めます。
5.尖足歩行の改善方法
① ストレッチ・ポジショニング
- ふくらはぎの持続的ストレッチ
- 壁やスロープを使った立位ストレッチ
- 夜間用スプリントによる持続伸張
重要なのは、
「毎日、少しずつ伸ばし続けること」 です。

② 装具療法(AFO)
- 固定式AFO
- ヒンジ付き(底屈制限)AFO
など、子どもの歩行タイプに合わせて選択します。
装具は“矯正”と“変形予防”の両方に効果がある
ため、尖足の初期〜中期ではとても重要になります。

③ ボツリヌス毒素注射
ふくらはぎの痙縮が強い場合に有効です。
注射後は筋がゆるむため、
- ストレッチ(ティルトテーブルで持続的に伸張することも)
- 装具装着
- 歩行練習
を集中して行うことで、効果が最大限に高まります。
④ 歩行練習・姿勢制御トレーニング
- かかと接地の練習
- 荷重練習
- トレッドミル歩行
- 体幹・骨盤コントロール練習
「かかとをつけても怖くない」という体験を積ませ、
新しい歩行戦略を学習していくこと が大切です。
⑤ 手術療法(必要な場合)
保存療法で十分な改善が得られず、日常生活に支障が大きい場合に検討されます。
- アキレス腱延長術
- 筋腱移行術
などが代表的です。
手術後も 装具+リハビリは必須 で、再発予防のための継続した介入が必要です。
6.お子さんに合わせた“目標設定”が大切
尖足歩行の改善といっても、目指す目標はさまざまです。
- 完全に正常歩行を目指す
- 転倒を減らす
- 疲れにくくする
- 痛みを予防する
- 移動手段の幅を広げる
など、目標は家庭や生活環境によって変わります。
脳性麻痺は成長とともに姿勢も変わるため、
「そのお子さんにとって最適な歩き方・最適な支援」 を、家族・医療者・療育スタッフが一緒に考えていくことが大切です。
まとめ
- 尖足歩行は、痙縮・拘縮・姿勢制御の問題・変形などが組み合わさって起こる。
- 早期からのストレッチ、装具、歩行練習が改善の鍵。
- 必要に応じてボツリヌス注射や手術療法も検討される。
- 大切なのは「見た目の正常さ」を求めるだけではなく、その子の生活にとって最適な歩き方を一緒に探すこと。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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