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食事と姿勢・離床のリアルな関係
――「角度」だけでは語れない嚥下の話
病棟でよく交わされる会話があります。
「食事は30°でいいですか?」「一応90°とっておきました」
一見すると、これは“正解を確認するためのやりとり”に見えます。
しかし実際には、
姿勢・離床・疲労・呼吸状態は複雑に絡み合い、
「何度が正しいか」という単純な話では済みません。
① ベッド上30°と90°座位の違い ― どちらが安全か、ではなく「何が違うのか」
30°ギャッジアップ(半座位)
- 体幹・頸部の支持が比較的安定しやすい
- 抗重力負荷が小さく、疲労は出にくい
- 反面、
- 重力による食塊の咽頭流入をコントロールしにくい
- 舌骨・喉頭の前上方運動が制限されやすい

90°座位(端座位・車椅子)
- 重力方向が「嚥下に有利」に働く
- 体幹・頸部・骨盤のアライメントが整えば嚥下効率は高い
- ただし、
- 体幹保持が不十分だと一気に疲労が出る
- 呼吸数増加・努力呼吸が嚥下に干渉しやすい

→重要なのは角度ではなく、「その姿勢を保つためにどれだけ努力が必要か」
90°がとれていても、
・肩がすくみ
・呼吸が荒く
・食後にぐったりする
のであれば、それは“良い姿勢”とは言えません。気をつけて!
② 食前・食後の離床はアリかナシか ― 嚥下だけ見ていると、判断を誤る

食前離床
- 覚醒レベルの向上
- 姿勢調整(骨盤・体幹・頸部)がしやすい
- 呼吸が落ち着く人も多い
一方で、
- 離床そのものが負荷となり
- 食事開始時点ですでに疲労している
ケースも少なくありません。
食後離床
- 逆流・誤嚥リスクを下げる意味では有効
- 端座位・車椅子で30分程度保持できるなら理想的
ただし、
- 食後すぐの移乗で呼吸数が上がる
- 咳嗽が増える
- SpO₂が下がる
こうした反応が出る人にとっては、
「食後は静かに過ごす」こと自体が嚥下ケアになります。
ポイント: 結論として
離床は“嚥下を助ける手段”であって、“目的”ではない
食事と離床を機械的にセットで考えないことが大切です。
③ 疲労・呼吸数が嚥下に与える影響 ― 嚥下は「呼吸の余力」で行われる
嚥下は一瞬の動作に見えますが、
実際には呼吸を一時的に止める高度な協調運動です。
- 呼吸数が多い
- 努力呼吸がある
- 会話で息切れが出る
こうした状態では、
「飲み込むための余白」そのものが減っていると考えた方がよいです。

臨床ではよく見ます。
- 食事後半になるとむせ始める
- 食形態は同じなのに、時間帯で嚥下が変わる
- 午前より夕方の方が誤嚥しやすい
これは技術の問題ではなく、
単純に疲労と呼吸が限界に近づいているだけ、ということも多い。
ポイント:嚥下評価では「何を食べられるか」だけでなく
「どの状態なら食べられるか」を見る視点が不可欠です。
おわりに
姿勢・離床・嚥下は、マニュアル化しにくい領域です。
だからこそ、
- 数値(角度)
- 手順(離床の有無)
よりも、
その人の呼吸、疲労、表情、食後の反応
といった「生きている反応」を丁寧に見ることが、一番の安全策になります。
食事はリハビリであり、生活であり、
ときにその人の一日の中で最も負荷の高い活動でもあります。
「ちゃんと座らせる」より、
「無理なく飲み込める状態をつくる」
その視点を忘れずにいたいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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