評価の先にある生活を思い描く力──セラピストに必要な想像力

評価の先にある生活を思い描く力──セラピストに必要な想像力

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リハビリテーションにおける“想像力”という専門性

──機能を読み解き、人生を思い描く仕事──

医療や福祉の世界では、どんな職種でも一定の想像力が求められます。

しかし、その必要性がひときわ大きくなるのが、日々の生活そのものに関わるリハビリテーションです。

リハビリは単に機能を改善する作業ではなく、「その人の生活を再び編み直す」仕事であり、その中核にあるのは想像力だと感じています。

 

■ 機能から動作を“予見する”力

リハビリでは、関節可動域や筋力といった身体機能の評価をもとに、その人がどのような生活動作を再び行えるかを推測します。

例えば‥

  • 膝がどのくらい伸び、どのくらい曲がれば歩行が可能なのか
  • 肘の屈曲がどの範囲まであれば食事動作が可能なのか
  • どれほどの下肢筋力があれば立ち上がれるのか

これらは教科書的な基準もありますが、実際の生活は常に個別的で、同じ数値でも人によってできることは違います。

その違いを埋め、日常に置き換えて考えるためには、目の前のデータを“生活のシーン”に変換する創造的な思考が必要になります。

■ 希望から逆算して必要な機能を探る

逆に、患者さんの希望を起点に「その生活を叶えるには、どんな機能が必要か」を組み立てていく場面も多くあります。

  • 「自宅で自分でトイレに行きたい」
  • 「もう一度料理がしたい」
  • 「杖を使って散歩したい」

こうした願いを聞いたとき、セラピストはそこに必要な動作、筋力、可動域、バランスなどを逆説的に想像し、道筋を作っていきます。

料理なら、その手順通りに事を行う遂行能力も必要になりますね。

 

ここでも、杓子定規に“この疾患ならこのゴール”と決めつけてしまうのは誤りです。

病名が同じでも、生活背景も価値観も身体状況も全く違います。想像力がなければ、その人に合わせたリハビリは生まれません。

■ 心の動きを想像することも専門性の一つ

そしてもう一つ忘れてはならないのが、心理面への想像力です。

病気になることや、障害を持つという現実は、健常者には到底実感しきれない苦しみを伴います。

しかし、完全に理解できないとしても、想像して寄り添うことはできます。

患者さんは、「専門的な技術」だけでなく、「自分の気持ちをわかろうとしてくれる姿勢」に救われることが少なくありません。

身体機能の評価だけでなく、心の変化や揺らぎをも想像しながら伴走すること。

それはセラピストの重要な専門性であり、人としての温かさが問われる部分でもあります。

■ 想像力は“その人の未来”を形作る

リハビリテーションとは、患者さんの“これからの生活”を共に考える営みです。

  • 機能を評価し、動作を推し量る
  • 希望から必要な能力を逆算する
  • 苦しみや不安を想像し、寄り添う

そのいずれも、想像力なくしては成立しません。

ルール通りに進めるだけでは、人の生活は見えてこないからです。

目の前の患者さんの人生を思い描き、その人にとっての最適解を探し続ける。

想像力は、セラピストが持つべき「静かな武器」であり、生活を取り戻すための大切な道具なのだと、日々の臨床の中で強く感じています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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