血圧測定のイラスト その3 〜血圧測定の疑問に答えます〜

血圧測定のイラスト その3  〜血圧測定の疑問に答えます〜

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血圧はどこで測る?左右差・足での測定・点滴中の腕はどうする?

— 理学療法士が現場から解説します —

血圧測定は医療の現場では当たり前のように行われていますが、実は「どの腕で測るべきか」「左右で違っても良いのか」「点滴中の腕はダメ?」など、細かい疑問がたくさんあります。

普段は気にせず測ってしまいがちですが、状況によっては測定値の信頼性や安全性に大きく関わることがあります。

本記事では、理学療法士として日常的に血圧測定を行う立場から、現場で押さえておきたいポイントを整理してみたいと思います。

◼️ 血圧は「右腕」と「左腕」で違う?

● 多少の左右差は“正常の範囲”

人間の血管は完全に左右対称ではありません。

多くの人で 5〜10mmHg 程度の違い は普通にあります。

利き腕の方がわずかに高く出る人もいます。

● 注意したい左右差

ただし、収縮期血圧で15mmHg 以上の差が続く場合は、

鎖骨下動脈の狭窄

・動脈硬化の影響

・大動脈解離の可能性も!

など、血管の疾患が潜んでいることがあります。

そのため医療現場では、初回測定は左右両方で測るのが基本です。

そのうえで、高い方の腕で今後の評価を統一するのが一般的です。

 

◼️ 足(下肢)で血圧を測る場合は?

「点滴で両側の腕が使えない」「手術後で腕が測れない」など、

上肢で測れないケースは意外と多いものです。

そんなときは、下肢(膝窩や足首)で測定することがあります。

● 下肢で測ると値はどうなる?

上腕より約10〜20mmHg 高めに出るのが正常です。

理由は、

・心臓から遠く、圧波が伝わる過程で変化する

・動脈が太く、反射波の影響を受けやすい

などが挙げられます。

ただし、重度の動脈硬化があると、逆に低く出ることもあります。

「値が高めに出やすい」という特徴を理解した上で比較していくことがポイントです。

◼️ 側臥位で測る場合の注意点

● 側臥位で「心臓より上の腕」で測ると低く出る理由

血圧は 心臓の高さを基準 にしています。

側臥位では上側の腕が心臓より高くなるため、静水圧の影響で血圧は低めに出ます。

目安:腕が心臓より10cm高くなると約7〜8mmHg 低く出る と言われています。

 

● 「下側の腕」で測る方が良い?

結論:可能なら“下側の腕”で測る方が正確に近いです。

下側の腕は心臓の高さに近くなるため、側臥位ではこちらの方が誤差が少ないからです。

ただし注意点があります。↓

●  側臥位で下側の腕を測るときの注意点

下側は体重がかかるため…

  • 腕の下に軽くタオルなどを入れて圧迫を避ける
  • 腕が前方に落ちすぎないように90°前方挙上を避ける
  • しびれや疼痛に注意

※ 腕が圧迫されると血圧が 逆に高め に出ることがあります。

つまり、

心臓の高さに合わせつつ、圧迫がない姿勢を作れるかがポイント です。

● 仰臥位に戻して血圧を測る場合、何分待つ?

これも離床評価や回復期の測定でよくありますね。

一般的な基準:1〜2分程度

体位変換後の循環調整は、通常 1〜2分 である程度安定します。

さらに厳密にしたい場合:3分

欧米のガイドライン(AHAなど)では、

体位変換後は3分待って測定 を推奨していることが多いです。

理由

  • 静水圧による血液分布が変わる
  • 自律神経が姿勢変化に反応する
  • 静脈還流量が安定する
    → 血圧が安定するのに一定の時間が必要

特に高齢者・循環器疾患・脱水患者では変動が大きいため、3分待つとより信頼性が高くなります。

 

◼️ 点滴をしている腕は測っていい?

ここは実務で最も迷いやすい部分です。

● 点滴“中”の腕は測定してはいけない

理由は明確です。

  1. カフの圧で輸液が逆流・閉塞する危険
  2. 圧変化で滴下量が乱れ、正確な値が得られない
  3. 留置針の血管損傷につながる

つまり 点滴が流れている腕は原則NG です。

 

◼️ では、点滴針が刺さっているだけなら?(留置のみ)

ここは「絶対禁止」ではありませんが、できれば避けるのが安全です。

● 避けるべき理由

・カフの圧迫で針が血管内で動く

・血管壁を傷つける、逆血、炎症のリスク

・ブレが出て測定精度が下がる

特に高齢者や脆弱な血管ではリスクが高くなります。

● どうしても必要な場合の注意

・必ず針より“中枢側(肩側)”にカフを巻く

・決して針より末梢(手首側)に巻かない

・できれば看護師と情報共有して行う

安全性を最優先に、臨床判断が求められるポイントです。

 

◼️ 理学療法士としての視点

血圧測定は、起立耐性評価や離床の安全管理に欠かせません。

だからこそ、測定環境の微妙な違いが結果を左右します。

● PTが押さえておきたい3つのポイント

  1. 初回は左右比較をする
  2. 点滴側は避け、代替として反対側 or 下肢で測る
  3. 評価は毎回同じ側・同じ姿勢で行う(比較のため)

この基本が守られるだけで、血圧評価の信頼性は大きく向上します。

◼️ 最後に

血圧測定はシンプルに見えて、実は奥が深い行為です。

安全性を保ちながら正確なデータを取ることで、その後の離床や運動療法がより安心して行えるようになります。

 

 

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