廃用症候群を防ぐための早期介入の考え方

廃用症候群を防ぐための早期介入の考え方

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廃用症候群を防ぐための早期介入の考え方 〜理学療法士の視点から〜

1. はじめに

廃用症候群は、ベッド上安静や活動制限により、筋・骨格・循環・呼吸・神経系など全身の機能低下を引き起こす状態です。

わずか数日間の安静でも筋力低下や関節可動域制限が始まり、退院後のADLに深刻な影響を及ぼすことは周知の事実です。

臨床では「安静=安全」という意識が未だ根強く残っており、本来動かせる患者が不必要に安静を強いられるケースも散見されます。

本記事では、廃用症候群を予防するための早期介入の意義と具体的アプローチを医療者視点で整理します。

2. 早期介入が必要な理由

繰り返しますが、廃用症候群は、動かないことで筋力・関節・呼吸・循環・認知などあらゆる機能が低下する状態。

そしてそのスピードは想像以上に早く、寝たきり1日目から筋力低下は始まるといわれます。

とある海外の研究では、健康な20代の若者をベッドに抑制して2週間過ごさせて、その効果を見たというものがあります。

その結果は筋力が低下など著しい廃用が生じました。

特に抗重力筋は萎縮が早く、ベッド上生活が続けば起き上がる力や歩行能力はあっという間に落ちてしまいます。

まとめると・・・

筋力低下は24〜48時間の安静から始まる

• 特に抗重力筋(大腿四頭筋・腓腹筋など)は萎縮が早い。

循環・呼吸機能の低下

• 臥位による静脈還流低下、肺胞換気低下が早期に出現。

意欲・認知機能の低下

• 刺激の乏しい環境では抑うつやせん妄のリスク増大。

臨床では「転倒が怖いから」「まだ治療中だから」と動くことを先送りにする場面がありますが、その間にも機能低下のカウントダウンは進んでいます。

3. 早期介入の基本方針

早期介入の第一歩は「できることを見極める」

早期介入とは、無理やり立たせることではありません。

まずは患者のバイタルや全身状態を確認し、“今できる最小限の活動”を見極めることから始まります。

• ベッド上で足首や膝を動かす

• 深呼吸や呼吸筋ストレッチ

• ベッドアップでの食事

• 数分の端座位保持

こうした小さな動きでも、筋力や呼吸・循環機能に刺激を与え、廃用を確実に遅らせます。

そして状態を見ながら、ベッド上 → 端座位 → 立位 → 歩行 という漸増プロトコルで進めていきます。

 

4. 具体的な介入例(病棟で即実践可能)

ベッド上運動

• 足関節の底背屈、股関節外転内転、膝伸展挙上

• 呼吸筋ストレッチ、深呼吸、口すぼめ呼吸

• 上肢の屈伸・外転運動(可能なら抗重力下で)

姿勢変換・座位保持

• 2〜3時間ごとの体位変換で褥瘡予防と換気改善

• 端座位保持で抗重力筋刺激・起立性低血圧予防

日常生活動作を利用

• 食事はできる限り端座位または椅子座位

• 排泄動作も可能ならポータブルトイレ使用

5. チームアプローチの重要性

廃用予防は理学療法士単独では達成できません。医師や看護師など他職種との協業が必要です.

医師:安静度や荷重制限の明確化

看護師:日常生活場面での活動促進・声かけ

家族:安全な範囲での活動継続サポート

情報共有のポイントは、「できることリスト」を全員で共有することです。

 

ある患者さんの例では、

「端座位10分OK」「車椅子移乗は介助1人で可」など、具体的に記録することで、看護師も日常場面で活動を促せるようになり、結果として入院期間が短縮しました。

逆に、動けるはずの患者が安静を長く続けたケースでは、退院時には歩行器が手放せなくなり、在宅復帰が難しくなったこともあります。

動かすかどうかの判断は、その後の生活の質を大きく左右します。

 

6. 早期介入がもたらす臨床的メリット

たくさんあります!

• 入院期間の短縮

• ADL維持・向上

• 退院後の在宅生活継続率の向上

• 医療・介護費用の削減

 

7. まとめ

廃用症候群は「防げる合併症」です。

重要なのは、発症・入院直後からの「攻めの活動促進」

1日でも早く、1歩でも多くを合言葉に、患者の回復曲線を可能な限り上向かせることが、私たち医療者の使命です。

 

 

 

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