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関節可動域訓練は「中枢」から始める? それとも「末梢」から?
関節可動域訓練(ROM訓練)を行う際に、「中枢から始めるべきか?それとも末梢からか?」という疑問を持ったことはありませんか?
新人療法士だけでなく、経験を積んだ方でも悩むことのあるテーマかもしれません。
例えば上肢の場合なら、肩関節から行うのか、手関節(手指)から行うのか。
僕が学生の頃は中枢つまり肩関節から行うのが一般的だと習った記憶があります。
しかし卒後に参加した講習会では抹消からやった方が良いと教わったこともありました。
一体どちらが正解なのでしょう。
本記事では、ROM訓練におけるアプローチの順序について、基本的な原則と例外的なケースを交えて解説します。
原則:関節可動域訓練は「中枢から」が基本
一般的には、ROM訓練は中枢から末梢へと進めることが推奨されています。その理由は以下の通りです。
1. 中枢は動作の土台になる
体幹や肩・股関節といった中枢部位は、運動の安定性や支持性に大きく関与します。
中枢が安定していなければ、末梢の動きも不安定になりやすく、効果的な訓練につながりません。
2. 運動連鎖の観点からも中枢が先
ヒトの運動は、一般的に中枢→末梢の順で連鎖して起こります。
そのため、運動の流れを自然に導くという意味でも、中枢から始めるのが理にかなっています。
3. 姿勢と重心のコントロール
中枢の可動性と安定性が確保されていることで、末梢の可動性も活かしやすくなります。
体幹がしっかりすることで、上肢や下肢の動作もスムーズに行えるようになります。
ただし例外もある:末梢から始めるべき場面
すべてのケースで中枢から始めるのが正しいわけではありません。
以下のような場合は、末梢からアプローチする方が適切なこともあります。
・末梢の拘縮や疼痛が強いとき
末梢に明らかな可動域制限や痛みがある場合は、そこに対処しないと日常生活動作にも支障が出ます。
中枢よりも、まず末梢に焦点を当てるべきです。
・中枢に問題がなく、末梢だけに課題があるとき
例えば、肩関節は正常だけれど肘や手関節に強い可動域制限があるというようなケースでは、末梢へのアプローチが優先されることもあります。
・神経疾患による筋緊張異常
脳卒中後などで遠位部に強い痙縮が見られるような場合、末梢の可動性を改善してから中枢に移行するという方法も有効です。
まとめ:原則は「中枢から」だが、個別性がカギ
関節可動域訓練は、基本的には中枢から末梢へという流れがセオリーです。
しかし、対象者の状態や症状、日常生活への影響を考慮したうえで、柔軟に対応することが大切です。
治療の原則は理解しつつ、「この人にとって最も効果的なアプローチは何か?」を常に意識して臨床に臨みたいですね。
ありがとうございました。
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