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医療者は患者さんの予後を予測できる?
進行性の病気では、その種類によって違いはありますが、基本的には徐々に体の機能が低下していきます。
そのため、医療スタッフが患者さんを担当する際には、これからどのような経過をたどる可能性があるのかをあらかじめ予測し、対応を準備しておく必要があります。
これはリハビリを担当するスタッフにとっても同じです。
患者さんが今後直面するであろう困難や課題をある程度予測し、それに備えることが求められます。
例えばALSの場合
たとえば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を例に挙げてみましょう。
ALSには、大きく分けて次の3つのタイプがあります。(※難病情報センターの資料より)
- 上肢型(古典型):腕の筋力低下や筋萎縮が主な症状で、足はつっぱり(痙縮)が出るタイプ
- 球麻痺型(進行性球麻痺):話す、飲み込むといった機能に障害が出るタイプ
- 下肢型(偽多発神経炎型):足から始まり、早期に反射が低下・消失するタイプ
これらのタイプごとに、どの機能が最初に障害され、次に何が起きるかの流れは、ある程度予測ができます。
リハビリスタッフはその予測をもとに、どのような支援が必要になるかを考えて準備することができます。
たとえば、上肢型の患者さんでは、腕の動作が早期に難しくなるため、その代替手段を考えます。
一方で、足の機能はしばらく保たれるため、一定期間は歩行が可能です。
しかしやがて歩行も難しくなると、腕が使えないことから、杖や歩行器が使えないと予測されます。
そのため、早めに車椅子の準備が必要になります。
下肢型の場合は、早期から歩行が困難になるため、電動車椅子などの移動手段を早く確保する必要があります。
球麻痺型では、話すことや飲み込むことが難しくなるため、コミュニケーションの代替手段や、飲み込みやすい食事を工夫することが重要になります。
リハビリのゴールを決めるのは誰?
一般的に、患者さんが診断を受け、リハビリが始まると、リハビリスタッフは患者さんを評価し、ゴール(目標)を設定します。
その際、スタッフ側が「この患者さんのゴールはこの程度だろう」と、いわば“落とし所”を見つけようとすることがあります。
でも、私はこの「医療側が患者のゴールを勝手に決める」ことに違和感を覚えています。
たとえ限界があるとしても、患者としては「やってみないと納得できない」という思いがあるはずです。
医療者が「この人はここまで」と最初から決めつけてしまうのは、あまりに一方的で、時に残酷にさえ感じます。
「先回りした配慮」は、時として「余計なお世話」になってしまいます。
もちろん、医療現場には限られた時間や資源があるため、いつまでも患者の「気持ちの整理」を待つことが難しいのも理解できます。
「患者さんの受容を待てない」という現実もあるでしょう。
それでも、私は「目標(ゴール)を設定すること」と「その目標を患者に押しつけること」は、まったく別だと思います。
たとえ医療者がゴールを想定しても、それを患者に無理に当てはめるべきではありません。
ゴールに向かわせようと誘導することは、してはいけないと感じます。
あくまで主役は患者さんです。医療者はそのサポート役に徹するべきです。
患者さんから必要とされたときに、すぐに手を差し伸べられるよう、準備しておくことが私たちの役割だと思います。
信頼関係を築きながら、患者さんが困った時、迷った時に、うまく「助け舟」を出せるような存在でありたい。
それが、医療者であり、同時に患者でもある私が、最近強く感じていることです
ありがとうございました。
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