高次脳機能障害になったある理学療法士の取説(職場復帰に際のお願い)

高次脳機能障害になったある理学療法士の取説(職場復帰に際のお願い)

〈スポンサーリンク〉



 

今回アップするものは、僕が復職に当たって、職場のスタッフに配慮していただきたい事項を書き記したものの原案です。在職中に障害を負って休職を余儀なくされた後、復職の際に職場に提出したものです。どこまで個人情報を載せたら良いか迷うところですが、同じ立場にいる方、同じような目標に向かって頑張っている方の参考になればと思って、公開することにしました。以前にも書きましたが、患者はそれぞれ障害、症状も異なるので、僕の提言が全ての人に当てはまるわけではありません。その点ご理解ください。

  職場復帰にあたって留意すべき事柄と配慮のお願い(案)

                                    2023年◯月◯日

 

・診断名:◯◯◯◯、◯◯◯◯‥

・身体症状:高次脳機能障害、◯◯◯◯、◯◯◯◯‥その他もろもろ

 

 以下に、復職にあたって困難と予想される症状とその対策について、簡単に記してみました。これらを全て考慮して欲しいということではありません。知っていただいた方がスムーズ事が運ぶと思うことを列挙してみました。これ以外にも、実際業務に携わってからいろいろな問題が出てくることが予想されます。その都度、相談させてください。

◾️高次脳機能障害に関すること

・脳が処理できる容量が小さいため、一度に多くの課題をこなせない

  容量が小さいため、その容量を超えると、処理することができなくなります。同時に複数のことに注意を払えなかったり、新しいことを覚えられなくなります。

 対策→適宜休憩を入れることが必要です。

 対策→実際仕事を行なってみなければわかりませんが、自分にどの程度の許容量があるか適宜評価していきます。

・二重課題が困難

  複数の事柄を同時にこなすことができません。一度に多くの課題に取り組むことが困難です。

  対策→1日に行う課題の数を制限する。

  対策→時間に余裕を持てるように配慮してほしい。

 

・突発的なことが起こった時の対応が困難

  一日の始まりに予定を立てて、ある程度計画的に取り組むことは可能だと思いますが、突発事項が起こった際の対応や調整が難しいことが予想されます。

  対策→大まかなスケジュールを立てて取りみます。その上でもう少し細かなスケジュールを立てて、適宜進み具合をチェックしながら行います。物事の優先順位づけはできますが、その際に一部抜けてしまうことがあるかもしれません。

  対策→最初はある程度業務を定型化すれば、行いやすいかもしれません。

 

・新しいことに取り組むことが難しい

  全般的に新しいことを覚えることが困難です。例えば、電子カルテが新しく導入されますが、その操作の習得に時間がかかります。

  対策→事前にマニュアル読み、少しでも準備をしたい。

 

・処理速度が遅い(カルテの入力速度が遅い)

  失語(錯語)の影響は書字、文字入力(タイピング)にも現れます。助詞が抜けることもあります。

  対策→最初は処理のために十分な時間をとって欲しい。

  対策→事前に入力用のフォーム(雛形)を作りたい。

 

・記憶力の低下があり、職場のルールなど新しく決まったことが定着しづらい。

  対策→職場のルールの明文化(できればマニュアルの作成をして欲しい。)

     もしなければ、自分で自分用のマニュアルを作成しながら仕事を進めていきたい。

  対策→部署内(院内)で決まったことは、文章にして残して欲しい。私が職場を離れていた期間に決まったこと、また変更になったことを事前に知っておきたい。

  対策→依頼事項があるときは、口頭での伝達だけでなく、付箋に書いて伝えていたただけると助かります。

  対策→同じことを何度も聞いてしまうかもしれません。理解していただきたい。

 

・連絡事項や会議内容の把握が困難

  会議やカンファレンスなど複数の参加者が発言する場合は、対応が困難になりやすいです。自分の特性として、聴覚理解より視覚的理解が良好です。

  対策→議事録の活用

  対策→ボイスレコーダーの活用(録音したものを確認する時間が必要になり、実際は頻繁には使用できないと思われます。)

 

・会議で質疑応答が困難(二重課題が困難)

  相手が話している間に、それを聞きながら自分が次に話す内容をまとめることを同時にできません。よって、相手の話した内容を深く咀嚼・吟味することができません。

  対策→対策を思いつきません。そもそもメモを取ることも難しいし、そのメモから内容を正確に起こすことも困難です。

 

◾️失語に関すること

・コミュニケーション(理解)が困難な場合がある。

  文字の理解は良好ですが、聞き取りが難しいことがあります。

  聴覚把持力の障害があります。長い文章の場合、最初に言った言葉がわからなくなってしますことがあります。

  対策→声のかけ方の工夫(ゆっくり、はっきりと、短文で。)

  対策→情報を伝えるときは、情報量を少なくして欲しい。

  対策→説明は極力シンプルに明確に、具体的にして欲しい。

  対策→話題が変わる時は、予めその旨を伝えて欲しい。

  対策→論理的に話して欲しい。まず結論を言って欲しい。その後でその理由を述べるようにして欲しい。

  対策→内容が複雑な場合、本人が内容を正確に理解しているかを確認させて欲しい。(本人が確認する時間をください。)

 

・コミュニケーション(発話)が困難な場合がある。

 音韻性錯語があります。音の抽出、配列を間違えやすいです。言葉の途中で音(文字)が抜けてしまうことがあります。

 喚語困難があり、言いたい言葉が咄嗟に出てこないことがあります。(特に低親密語、低頻度語)

  対策→言葉が出るまで、少し待っていただけると助かります。

  対策→なかなか言葉が出ない場合は、適切なヒントを出してくださると助かります。

 

◾️片耳難聴に関すること(※これは以前から変わってません)

・右耳全廃のため、右側から話かけれても聞き取れることができない

  対策→可能な範囲で、話しかける時は右側から話しかけてください。席順も聞こえない右耳を壁側にして配置していただけると助かります。(耳元で大声で話さなくても大丈夫です。)

 

・大人数で会話することが困難

  同時に2人以上に話しかれると、聞き取り困難になります。(片耳難聴のため、音の判別が困難。また誰が話しているかわかりません)

  対策→可能な範囲で、1対1で対応して欲しい。

 

◾️その他

・疲労しやすい(易疲労性)

  体力の低下もありますが、同時に「脳の疲労」もあります。急激な眠気に襲われ、思考が止まってしまうことがあります。情報を処理できる量が限られます。疲労するとパフォーマンスが低下し、錯語も多くみられるようになります。  

  対策→オーバーワークにならないように、勤務時間の調整をして欲しい。また、適宜休憩を入れさせて欲しい。実際の業務では杓子定規に休憩が取れないとしても、一応の目安を作っておいた方が良いかもしれません。

  対策→業務を短時間から始めさせて欲しい。

 

・めまいが出現することがある

  原因ははっきり分かっていませんが、頚部MRIでは椎骨動脈に狭窄が認められており、頚部を伸展するとめまいが出現します。(以前より軽減しています)

  対策→今のところ、めまいは軽減しています。また起こるときも、それが長時間持続することはありません。自分自身で気をつけるようにします。また起きた時には、速やかに休憩します。

 

 以上、職場復帰の際に問題となると想定されること、またそれに対して考慮していただきたいことを挙げてみました。可能な範囲で配慮をお願いしたします。

 

以上が全文です。ご参考に。

僕のような状態になることはできれば避けてほしいですが、病気は誰にでも起こり得るものです。

職場の理解や配慮が大切です。その時に少しでも役立てていたたら幸いです。

 

ありがとうございました。

 

ポチっとお願いします↓

オリジナルイラストランキング

〈スポンサーリンク〉