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何年か前に、ある医師から「すごい概念がある」といて勧められたのが、エマニチュードというケア技法でした。
介護の現場では『する側』と『される側』間に上下関係が生まれがちですが、それを是正して、尊厳と権利において平等であることを目指そうとするものです。
その時は、考案者が来日したり、テレビでも特集が組まれたりしていたので、僕もボ〜と眺めていたのを思い出します。
前回の入院中に図書室でその紹介本『エマ二チュード入院(イブ・ジネスト、ロゼット・マレスコ、本田美和子著)に触れる機会が持てたので、今回簡単にご紹介したいと思います。
簡単なメモ書き程度ですが。
とっかかりとして、もしこれを読んで少しでも興味が湧いたら、成書を手にしてくださいね。
エマニチュードとは
ケアを行うとき、目的レベルを設定することが重要と言っています。
目的レベルの設定が大切
①健康の回復を目指す(例えば肺炎を治す)
②現在ある機能を保つ(例えば脳梗塞後の麻痺が進行しないように)
③上記が叶わないのであれば、穏やかで幸福な最期を迎えられるように寄り添う(末期の緩和)
こう見ると、『な〜んだ、リハビリと同じ』と思われますよね。
必要なものを必要なひとに提供する。
当たり前で言えば当たり前。
でも実際の介護現場では難しい。
認知症がある利用者が動けるからと言ってどんどん歩行練習をすればよいというわけでないし。
もし転倒すれば、責任問題に問われる。
尻込みしてしまう気持ちも理解できます。
でも著者はやり方次第と言っています。寝かせっきりにしてしまうより、立位が保てるようになれば、結局清拭の時間を少なくなります。
お互いwin-winの関係が築けます。
尊厳を取り戻すための4つの技術:
①見る
水平に長く、見つめる。正面から近づき、視線をつかみに行く。(円背なら下からのぞく)
相手を見ないことは『あなたは存在しない』というメッセージ。
②話す
目があったら、2秒以内に話しかける。
いきなりケアの話をしない。ケアの内容より先に『お話に来ました。少しよろしいですか』
相手が応答しない場合。している行為を実況中継する(オート・フィードバック)『温かいタオルをお持ちしました。』『肌が綺麗ですね』
③触れる
広い面積で、ゆっくり、優しく、撫でるように、包み込むように、触れる。
いきなり掴まれると、『連行される』というメッセージを与える。
④立つ
立つことで空間認知が育まれ、内なる世界と外側の世界があることを知覚できる。
歩くことで、社会における自己を認識→尊厳
40秒立っていられたなら、立位でのケアができる。
僕も立つ、歩くことのメリットは理解しています。
でも先に述べたように、転倒のリスク問題も解決していません。
著者は、それに対して、力強くこう答えています。
『倒れることを恐れるあまり、一時的にでも抑制してしまうと、高齢者の健康はひどく損われてしまう。』
『ケアの専門家として、ケアを受ける人が得るものと失うものをきちんと天秤にかけて考えているでしょうか。』
『今私たちが抱えている問題をオープンにして、社会に訴える努力をしていくべきと思います。そうした試みを続くていくことによって、よりよい健康状態を保つためには、転倒もそのなかで起き起こることの一つであると社会的合意が得られる日が来ると、わたしは信じています。』
本当にそうなればいいですね。
僕は共感する部分が大きいですが、ちょっと難しさもかんじていますが。
でもやらねければ、始まりませんから。
最後に
僕が素晴らしいと感じたのは『ケアする人の適正や優しさの問題ではない。』と言って、誰でも取りやすい『技術』に落とし込んでいる点です。
上記4つの基本的技術を、矛盾しないよう包括的に行うことを頭に入れてやっていきたいと思います。
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