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ROMとは?関節可動域運動(ROMエクササイズ)の目的・種類・方法をイラストで解説
リハビリの現場では、
「ROMを確認します」
「ROMエクササイズをしましょう」
という言葉をよく使います。
医療関係者には当たり前の言葉ですが、患者さんやご家族にとっては、
「ROMって何?」
と思われるかもしれません。
ROMとは Range of Motion の略で、日本語では「関節可動域」といいます。
簡単にいえば、
「その関節を、どのくらい動かすことができるか」
ということです。
今回はROMとは何なのか、なぜ関節が動きにくくなるのか、そしてROMエクササイズにはどんな種類や方法があるのかを、イラストを交えながら紹介します。
ROMは「角度」だけの問題ではありません
ROMというと、
「肩が何度上がる」
「膝が何度曲がる」
といった角度を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、関節の動く範囲を角度で測定することは大切です。
でも、患者さんの生活を考えるときには、もう一歩先まで考える必要があります。
たとえば、スプーンを口へ運ぶためには、肩や肘がある程度動かなければなりません。
前腕を回して手のひらを口側へ向ける動きも必要です。
靴下を履くには、股関節や膝関節が十分に曲がる必要があります。
歩いたり、しゃがんだり、椅子から立ち上がったりするためには、足関節の動きも必要です。
つまりROMは、
「関節が何度動くか」だけではなく、「その可動域を使って何ができるか」
という生活動作にもつながっています。

なぜ関節は動きにくくなるの?
病気やけが、手術、長期間の安静などによって身体を動かす機会が減ると、関節の動く範囲が狭くなることがあります。
ただし、
「ROMが狭い=すべて拘縮」
ではありません。
関節可動域が制限される原因はいろいろあります。
たとえば、
- 筋肉や腱などの軟部組織が硬くなっている
- 関節包や靱帯などが硬くなっている
- 皮膚や瘢痕が伸びにくくなっている
- 痛みのために動かせない
- 腫れが強い
- 骨や関節そのものに問題がある
- 痙縮などによって筋緊張が高くなっている
などです。
昔からROM制限の原因を整理する分類としてHoffaの分類などが知られています。
ただ、実際の患者さんでは原因が一つだけとは限りません。
たとえば「筋肉が硬いから」と思っていても、痛みや関節包の硬さ、筋緊張などが同時に影響していることもあります。
だからこそ、
「硬いから、とにかく伸ばせばいい」
とはならないのです。

ROMエクササイズの目的は?
ROMエクササイズは、関節を適切に動かす運動です。
目的としては、
関節可動域を維持すること、軟部組織の柔軟性を保つこと、拘縮を予防すること、必要に応じて可動域の改善を図ること、そして生活動作に必要な動きを確保すること
などがあります。
ここで大切なのは、
「大きく動かせば動かすほど良いわけではない」
ということです。
何のためにROMエクササイズを行うのか。
どの組織が動きを制限しているのか。
どこまで動かしてよいのか。
これによって方法は変わります。
ROMエクササイズには3つの方法があります
ROMエクササイズは、大きく分けると次のような方法があります。
他動運動
本人の力ではなく、セラピストなど外からの力によって関節を動かします。
自分で十分に動かせない場合や、関節の動きを維持したい場合などに行われます。
自動介助運動
本人も動かしますが、足りない部分をセラピストや反対側の手、器具などで補助します。
「少しなら動かせる」という場合などに使われます。
自動運動
本人が自分の筋力で関節を動かします。
関節運動だけでなく、筋活動を伴うことが特徴です。
どれが一番良いということではありません。
患者さんの状態と目的に合わせて選ぶことが大切です。

ROMエクササイズを始める前に確認したいこと
ROMエクササイズでは、いきなり関節を大きく動かすのではなく、まず状態を確認します。
痛みはないか。
どこまで動くのか。
動かしたときに、どんな抵抗感があるのか。
腫れや熱感はないか。
術後などで動かしてはいけない方向はないか。
骨折などで安静や固定が必要ではないか。
こうした情報を確認したうえで行います。
特に術後では、手術方法や時期によって許可される運動範囲が異なることがあります。
「ROM運動だから安全」
とは限りません。
痛みが出たら、ただ我慢して伸ばさない
ROMエクササイズをしていると、
「少し痛いけれど、硬いからもっと伸ばした方がいいのかな?」
と思うことがあります。
しかし、痛みは身体からの重要な情報です。
大切なのは、
「痛いか、痛くないか」だけではなく、「なぜ痛いのか」を考えること。
筋肉が伸ばされたときの感覚なのか。
関節そのものの痛みなのか。
炎症による痛みなのか。
神経症状なのか。
急に現れた痛みなのか。
原因によって対応は違います。
患者さんの表情や訴えを確認しながら、ゆっくり行うことが基本です。

イラストで見るROMエクササイズ
ここからは、代表的なROMエクササイズを紹介します。
1. 股関節・膝関節の屈曲・伸展
仰向けになった状態で、股関節と膝関節を曲げていきます。
膝付近と踵付近を下から支え、下肢全体を安定させながら動かします。

そしてそのまま、膝を胸の方に近づけていきます。

ここで注意したいのは、
股関節と膝関節を同時に動かしている
ということです。
たとえば膝関節の可動域制限が強い場合、膝がそれ以上曲がらないからといって、無理に押し込むわけではありません。
どの関節で制限されているのかを確認しながら動かします。
2.膝を伸ばした状態での股関節屈曲
膝を伸ばしたまま、下肢を持ち上げます。
踵付近と膝付近を支え、膝が大きく曲がらないようにしながら股関節を屈曲します。

この動きでは、大腿後面のハムストリングスなどの伸張性が影響します。
膝を曲げて行う股関節屈曲とは、同じ股関節屈曲でも条件が違います。
SLRテストとは分けて考えましょう
この姿勢は、腰椎疾患などで行われるSLRテスト(Straight Leg Raising Test)と似ています。
しかし、
ROMエクササイズと神経症状を評価するSLRテストは目的が違います。
「脚を何度まで上げられたか」だけで、椎間板ヘルニアの有無を判断するものでもありません。
3.股関節外転
仰向けになり、脚を身体の外側へ開きます。
膝付近と踵付近を支え、下肢を安定させながら外側へ動かします。

このとき注意したいのが、股関節の回旋です。
脚を外へ開いていくと、つま先が外側を向いてしまうことがあります。
すると、純粋な股関節外転とは違う動きが混ざります。
「脚がどこまで動いたか」だけではなく、「どんな動き方をしているか」
を見ることが大切です。
4.股関節内転
仰向けになり、脚を身体の内側へ動かします。
そのまま内側に動かすと反側の脚と接触するので、少し持ち上げて(屈曲させて)動かします。

5.股関節の内旋・外旋
股関節と膝関節を曲げた状態から、股関節を内旋・外旋させます。

ここは少し分かりにくいところですが、
膝の位置をある程度保ちながら下腿を外側へ動かすと、股関節では内旋方向の動きになります。
反対に、下腿を内側へ動かすと、股関節では外旋方向の動きになります。
見えている下腿の動きと、股関節で起きている回旋方向が反対になるのです。

6. 股関節伸展(膝を伸ばした状態での股関節伸展)
側臥位(または腹臥位)になります。
膝を伸ばしたまま、股関節を後方に動かします(つまり伸展方向に動かします)
膝を伸ばしたまま股関節伸展では、大腿直筋は膝側では比較的ゆるんだ状態です。
そのため股関節を伸展していったとき、大腿直筋による制限を比較的受けにくく、
- 腸腰筋
- 関節包など股関節前面の組織
- その他の股関節屈筋群
などを含めた、股関節そのものの伸展可動性を見たり動かしたりしやすくなります。

7.股関節伸展(膝を曲げた状態での股関節伸展)
6と同様に、側臥位になって股関節を親展させますが、違うのは膝を曲げて行うということです。
膝を曲げると、膝をまたいでいる大腿直筋が膝側から引き伸ばされます。その状態でさらに股関節を伸展すると、股関節側からも引き伸ばされます。
つまり、
膝屈曲 + 股関節伸展
→ 大腿直筋を両端から伸ばす
ことになります。
そのため、大腿直筋が短縮している患者さんでは、膝を曲げた状態では股関節を十分に伸展できなかったり、骨盤が前傾して腰椎が反って代償したりします。

8.足関節背屈(膝を曲げた状態での足関節背屈)
足関節を、足の甲がすねに近づく方向へ動かします。
これが足関節背屈です。

踵を安定させながら、足関節をゆっくり背屈方向へ動かします。
ここでも、ただ足先を強く押せばよいわけではありません。
膝を伸ばしているか曲げているかによっても、腓腹筋の影響が変わります。(これは9で説明します)
また、足部の別の関節で動きを代償して、見かけ上「足首が曲がっている」ように見えることもあります。
どこが動いているのかを確認することが大切です。
9.足関節背屈(膝関節を伸ばした状態で足関節の背屈)
8と同様ですが、違うのは膝関節を伸ばして行っていることです。
膝を伸ばした状態では、関節を跨いでいる腓腹筋の影響を受けやすので、腓腹筋の柔軟性の評価や改善になります。(膝関節屈曲位での足関節背屈では、腓腹筋が緩んでいるため、ヒラメ筋や関節包の評価になります)
つまり両方やることが大切ですね。

⑩肩甲骨の運動
肩を動かすとき、上腕骨だけが動いているわけではありません。
肩甲骨も胸郭の上を動きます。
肩甲骨には、
挙上・下制、内転・外転、上方回旋・下方回旋、前傾・後傾など、
さまざまな動きがあります。

肩甲骨周囲を適切に支えながら、動きや抵抗感を確認します。
肩関節の運動を見るときには、
「腕が何度上がったか」だけではなく、肩甲骨がどのように動いているか
を見ることも大切です。
11. 肩関節屈曲
仰向け、または座位で肩関節を屈曲方向に動かします。

12.肘関節屈曲
仰向け、または座位で肘関節を屈曲方向に動かします。(曲げます)

13.手指の伸展
手の指を伸展方向に伸ばします。
そもそも、手の指の屈筋群と伸筋群では筋力に大きな差があります。
麻痺や固定で拮抗バランスが崩れると、強い屈筋群が勝り、指が曲がった状態で固定しやすくなります。
拘縮予防にもしっかり伸ばすことが大切です。

「何度動いたか」だけを見ない
ROMという言葉からは、どうしても「角度」に目が向きます。
もちろん角度は重要です。
でも臨床では、
「なぜ、そこで止まるのか?」
も重要です。
筋肉が伸びなくて止まる。
痛くて止まる。
関節そのものが硬くて止まる。
怖くて力が入ってしまう。
筋緊張が高くて動かしにくい。
原因が違えば、同じ「膝が90度しか曲がらない」という状態でも、対応は変わります。
ROMエクササイズは、
硬い関節を力で押して広げる作業ではありません。
評価しながら行う運動なのです。
ご家族がROMエクササイズを行う場合
患者さんのご家族にROMエクササイズをお願いすることもあります。
その場合は特に、
「この方向へ、このくらいまで」
「ここを支える」
「ここまで来たら止める」
「こんな痛みが出たら中止する」
といったことを、具体的に専門職から教えてもらうことをおすすめします。
動画やイラストを見て、自己流で強く関節を伸ばすことは避けた方がよいでしょう。
ROMエクササイズは一見簡単に見えますが、患者さんによって注意することが違います。
ROMを「生活」から考えてみる
最後に、私が一番大切だと思っていることを書きます。
ROMを測定すると、
「肩関節屈曲120度」
「膝関節屈曲100度」
といった数字が出てきます。
でも、その数字そのものが患者さんの目標ではありません。
たとえば、
肩がもう少し上がれば、自分で髪を整えられるかもしれない。
肘がもう少し曲がれば、自分で食事ができるかもしれない。
股関節や膝が曲がれば、靴下を履きやすくなるかもしれない。
足首が動けば、立ち上がりや歩行が楽になるかもしれない。
そう考えると、
ROMは単なる「関節の角度」ではなく、その人の生活につながるもの
だと分かります。
まとめ
ROMとは Range of Motion=関節可動域 のことです。
ROMエクササイズには、関節可動域の維持、拘縮の予防、軟部組織の柔軟性維持、必要に応じた可動域の改善など、さまざまな目的があります。
ただし、
硬いから伸ばす。
狭いからもっと動かす。
それだけではありません。
なぜ動かないのか。
何が制限しているのか。
どこまで動かしてよいのか。
そして、
その可動域が、その人のどんな生活につながるのか。
そこまで考えることが、ROMエクササイズでは大切なのだと思います。
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